第3回:コンプライアンスに対するリスクアセスメント (2/4)

リスクマネジメント
トピックと手法から学ぶリスクマネジメント

第3回:コンプライアンスに対するリスクアセスメント
著者:プライド   三澤 正司   2006/8/21
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不正はなぜ起こるのか

   ここでコンプライアンスを脅かす不正について確認しておく。一般的に不正は「動機」「機会」「正当化」という要件が揃ったときに発生するといわれている。リスクの起こりうる要件を「不正リスク要因」または「不正のトライアングル」といい、横領を例にとると表2のように不正は起こることになる。
動機
他人に打ち明けられない経済的な問題を抱えている。
機会
信頼されている立場を利用して秘密裏に解決できる。
正当化
「自分が受けている信頼」を「自分が委ねられている資金もしくは資産を利用することができる」という考え方に転化する。

表2:横領の場合の不正の起こり方

   表2の「機会」は「内部統制の不備で不正をしても発見されない」といった実行チャンスを指す。そういった理由から、業務担当部門が内部統制不備の改善を行いって不正を行う「機会」を減少することが重要となる。


内部統制と不正の関係

   内部統制を構成する要素である「情報と伝達」と「モニタリング」に弱点を抱えている場合、重大な「悪い情報」がそのまま経営陣に伝達されなくなる可能性がある。また「情報と伝達」の悪い企業において、不祥事や不正事件が発生する確率が高いといわれているのである。

   またここ数年、内部告発による不祥事の表面化した事例が多くある。これは内部通報する前に外部に告発されてしまうことをあらわしており、インターネットの持つ匿名性などもそれを増長する働きをしている。このことによって後手にまわり問題が大きくならないように、通報者の匿名性や利益の保護などを考慮した内部通報窓口の設置の重要性も問われている。


事後対応の重要性

   事故や不正は起こらないに越したことはないが、事故や不正が発生した場合には企業倫理のあり方が問われる。その際には、まず「事故、不正が発生したときどう対応したか」が問われることが多い。

   それを適切に行わないと被害が拡大し、結果的に企業の信用やブランド価値を失うことになる。これをレピュテーションリスクの連鎖という。


レピュテーションリスク

   レピュテーションリスクとは、企業に関する否定的な評価・評判が世間に周知されることで企業の信用やブランド価値などが悪化し、結果的に企業が損失を被るリスクをいう。例えば事故発生リスクの影響度を評価する際には表3のように損害を想定する。

直接損害 物の損害や損害賠償金など直接的に受ける損害
間接損害 その後のレピュテーション(評判や特に外部から見た企業の評価)が傷つくことで生じる売上低下などの間接的な損害

表3:事故発生リスクの影響度の評価

   レピュテーションが傷つくことで生じる売上低下などの障害は特定が難しいが、昨今はコンプライアンス関連リスクなど、直接的な損害は大きくないがレピュテーションの低下による損害が大きいリスクが増えているため、レピュテーションの低下を評価対象とすることが重要となる。

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株式会社システムインテグレータ 代表取締役  梅田 弘之
著者プロフィール
株式会社プライド  三澤 正司
ITコーディネータ
プラント会社勤務時に、情報システム分野およびシステム開発方法論に興味を持ち、株式会社プライドに入社。主としてプロジェクト支援、標準化支援、教育に従事するが、ここ数年は、情報セキュリティ、管理業務に関わる支援の比重が大きくなってきている。


INDEX
第3回:コンプライアンスに対するリスクアセスメント
  はじめに
不正はなぜ起こるのか
  リスクアセスメント手法の適用
  デルファイ法
トピックと手法から学ぶリスクマネジメント
第1回 リスクアセスメントの範囲の策定
第2回 内部統制に対応するリスクアセスメント
第3回 コンプライアンスに対するリスクアセスメント
第4回 個人情報保護法とISMSからみるリスクマネジメント
第5回 個人情報漏洩のリスク評価
第6回 プロジェクトマネジメントにおけるリスクアセスメント

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