第3回:コンプライアンスに対するリスクアセスメント (4/4)

リスクマネジメント
トピックと手法から学ぶリスクマネジメント

第3回:コンプライアンスに対するリスクアセスメント
著者:プライド   三澤 正司   2006/8/21
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デルファイ法

   専門家によるリスク予測として、米国の研究機関ランドコーポレーションが開発した手法である「デルファイ法」がある。これは多くの専門家がそれぞれ独自に意見を出し合い、それを相互に参照し再び意見を出し合うという作業を繰り返し行うことで、意見を集束させて、未知の問題に対して確度の高い見通しを得るための方法である。

   この名称は古代ギリシャで神託地として栄えたデルファイにちなんでおり、以下のプロセスで実施される。

1. 専門家へのアンケート

   あるテーマについて複数の専門家へアンケート調査して回答してもらう。質問の主旨を正しく伝えるための質問をすることがポイントである。


2. 専門家へのフィードバック

   回答結果をフィードバックして再び回答してもらうという作業を繰り返す。そうすると他の専門家の意見に影響を受け、回答を修正していくことも起こりうる。


3. 回答結果整理

   回答結果を統計処理し、確率分布とともに回答結果を示す。

   デルファイ法は既述のようにフィードバックを繰り返し専門家間のコンセンサスへ近づけるようにしていく。将来予測のように答えが得られにくい問題を対象としているので、労力もかかる。


内部統制に対応するリスクアセスメントのまとめ

   内部統制に対応するリスクアセスメントを2回にわたって解説した。「内部統制の限界」「財務報告の信頼性に関するリスク」「事業活動に関わる法令等の遵守に関するリスク」「監査リスク」「リスクの認識・評価に関する問題」という項目についての確認および適用可能と思われる汎用手法の説明により整理した。

   内部統制については特定のリスクアセスメント手法があるわけではないので、適用可能と思われる汎用的な手法だけの説明であった。手法の評価については、洗練度という観点でランク付けするという考えもあり、大変興味深い。

   Deloach(EWRM:エンタープライズワイド・リスクマネジメントを提唱した学者)はリスク測定の手法を洗練度(手法としての客観性の程度)でランク付けしている。そのランク付けによれば、「統計分析手法」がもっとも洗練度が高く、次に洗練度として高いのが「シナリオ分析/シミュレーション法」であるという。そしてもっとも洗練度が低いのが「個人が行う定性的な自己評価手法」であり、次いで「グループミーティング方式で行われる定性的な優先順位付け手法」が低いという。

   このことから、リスクアセスメントについては客観性をどう確保するかがポイントではないだろうか。

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株式会社システムインテグレータ 代表取締役  梅田 弘之
著者プロフィール
株式会社プライド  三澤 正司
ITコーディネータ
プラント会社勤務時に、情報システム分野およびシステム開発方法論に興味を持ち、株式会社プライドに入社。主としてプロジェクト支援、標準化支援、教育に従事するが、ここ数年は、情報セキュリティ、管理業務に関わる支援の比重が大きくなってきている。


INDEX
第3回:コンプライアンスに対するリスクアセスメント
  はじめに
  不正はなぜ起こるのか
  リスクアセスメント手法の適用
デルファイ法
トピックと手法から学ぶリスクマネジメント
第1回 リスクアセスメントの範囲の策定
第2回 内部統制に対応するリスクアセスメント
第3回 コンプライアンスに対するリスクアセスメント
第4回 個人情報保護法とISMSからみるリスクマネジメント
第5回 個人情報漏洩のリスク評価
第6回 プロジェクトマネジメントにおけるリスクアセスメント

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