第3回:コンプライアンスに対するリスクアセスメント (1/4)

リスクマネジメント
トピックと手法から学ぶリスクマネジメント

第3回:コンプライアンスに対するリスクアセスメント
著者:プライド   三澤 正司   2006/8/21
1   2  3  4  次のページ
はじめに

   前回は内部統制の概要や「財務報告の信頼性」に関するリスクの確認および「ブレーンストーミング法」をリスク洗い出しに適用したときの考慮点を整理した。

   今回は前回に引き続き、内部統制に着目して関連するリスクアセスメント手法を説明する。なお今回対象とするリスクは「事業活動に関わる法令などの遵守」に関するリスク、すなわち「コンプライアンス」に関するものである。

コンプライアンスとは

   コンプライアンスとは、「法律や規則などに従うこと」を意味する。「法は最小限度の道徳である(ドイツの国法学者イェリネック)」といわれるように、法律や規則を守るだけでは最小限度のことを守っていることに過ぎず、それに加えて「倫理ある行動をとること」も求められるケースが多い。

   よって狭義の意味でコンプライアンスは「法令遵守」となるが、広義では「企業倫理などの観点から定められた企業ルールや明文化されていないルールの遵守」も含まれる。

   法令が十分に遵守されるなどの「よい結果」は当然のことと考えられるために、コンプライアンスに関しては法令が遵守されないといった「悪い結果」のみがその適用の対象と考えられることも多い。事業活動の遂行に関するリスクのうち、コンプライアンスに関するリスクについては「事業目的などの達成を阻害する要因」と考えることも可能である。また日本経団連は「企業行動憲章 - 社会の信頼と共感を得るために -」を2004年に改訂した。

2004年の「企業行動憲章 - 社会の信頼と共感を得るために -」の改訂内容
「社会的責任を果たすにあたっては、その情報発信、コミュニケーション手法などを含め、企業の主体性が最大限に発揮される必要があり、自主的かつ多様な取り組みによって進められるべきである。その際、法令遵守が社会的責任の基本であることを再認識する必要がある。そこで、今般、日本経団連は、会員企業の自主的取り組みをさらに推進するため、企業行動憲章を改定した。」

   そして日本経団連の「企業行動憲章 - 社会の信頼と共感を得るために -」には、表1の10原則がある。

  1. 社会的に有用な製品・サービスを安全性や個人情報・顧客情報の保護に十分配慮して開発、提供し、消費者・顧客の満足と信頼を獲得する。
  2. 公正、透明、自由な競争ならびに適正な取引を行う。また、政治、行政との健全かつ正常な関係を保つ。
  3. 株主はもとより、広く社会とのコミュニケーションを行い、企業情報を積極的かつ公正に開示する。
  4. 従業員の多様性、人格、個性を尊重するとともに、安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現する。
  5. 環境問題への取り組みは人類共通の課題であり、企業の存在と活動に必須の要件であることを認識し、自主的、積極的に行動する。
  6. 「良き企業市民」として、積極的に社会貢献活動を行う。
  7. 市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力および団体とは断固として対決する。
  8. 国際的な事業活動においては、国際ルールや現地の法律の遵守はもとより、現地の文化や慣習を尊重し、その発展に貢献する経営を行う。
  9. 経営トップは、本憲章の精神の実現が自らの役割であることを認識し、率先垂範の上、社内に徹底するとともに、グループ企業や取引先に周知させる。また、社内外の声を常時把握し、実効ある社内体制の整備を行うとともに、企業倫理の徹底を図る。
  10. 本憲章に反するような事態が発生したときには、経営トップ自らが問題解決にあたる姿勢を内外に明らかにし、原因究明、再発防止に努める。また、社会への迅速かつ的確な情報の公開と説明責任を遂行し、権限と責任を明確にした上、自らを含めて厳正な処分を行う。

表1:「企業行動憲章 - 社会の信頼と共感を得るために -」の10原則
引用:「企業行動憲章 - 社会の信頼と共感を得るために -」

1   2  3  4  次のページ


株式会社システムインテグレータ 代表取締役  梅田 弘之
著者プロフィール
株式会社プライド  三澤 正司
ITコーディネータ
プラント会社勤務時に、情報システム分野およびシステム開発方法論に興味を持ち、株式会社プライドに入社。主としてプロジェクト支援、標準化支援、教育に従事するが、ここ数年は、情報セキュリティ、管理業務に関わる支援の比重が大きくなってきている。


INDEX
第3回:コンプライアンスに対するリスクアセスメント
はじめに
  不正はなぜ起こるのか
  リスクアセスメント手法の適用
  デルファイ法
トピックと手法から学ぶリスクマネジメント
第1回 リスクアセスメントの範囲の策定
第2回 内部統制に対応するリスクアセスメント
第3回 コンプライアンスに対するリスクアセスメント
第4回 個人情報保護法とISMSからみるリスクマネジメント
第5回 個人情報漏洩のリスク評価
第6回 プロジェクトマネジメントにおけるリスクアセスメント

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る