第6回:怒鳴りこみ・すれ違いと真実 (2/3)

踊るエンジニア 〜システム開発現場の風景
踊るエンジニア 〜システム開発現場の風景

第6回:怒鳴りこみ・すれ違いと真実

著者:ビーブレイクシステムズ  鹿取 裕樹   2005/7/22
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プロジェクト体制

   プロジェクト体制を大きく分けると、ERP導入/フロントシステム開発/外部システム連携開発の3つのチームに分かれています。基幹システムの導入ということで、それなりに大きな規模のプロジェクトとなりました。

   筆者は主にERP導入を担当し、フロントシステム開発についてもサポートしました。
プロジェクト体制
図3:プロジェクト体制


初対面

   5月末、2日前に自分の結婚式を終えたばかりの筆者は、上海に向かうために1人で成田空港にいました。この日の2週間前に急遽上海行きを命じられたのですが、私事ながら出張の日程がちょうど結婚式に重なったため、筆者1人は出発をずらしてもらいました。そのため他のメンバーから遅れて行くことになりました。

   このミーティングの目的は日本で行った要件定義の結果の説明と、会計制度など中国固有の要件の確認です。

   結婚式の余韻もさめやらぬ中、筆者は上海の浦東空港に降り立ちました。初めての中国、しかも1人という状況、旅に慣れていない筆者は戸惑っていました。頼りになるのはユーザのオフィスの地図とガイドブックだけです。

   空港内で軍服のような服を着た審査官による入国審査を受け、SARS対策のための体温測定のゲートを越えて、ようやく入国手続が終わりました。オフィスまではタクシーで行くため、タクシー乗り場を探します。

   きょろきょろしていると何人もの人に声をかけられました。いわゆる白タクです。事前にガイドブックで勉強していたので、彼らの言葉には耳を貸さず正式なタクシー乗り場を探しました。といってももともと理解できませんでしたが。

   分かりやすい看板があったため、タクシー乗り場はすぐに見つかりました。タクシーに乗って運転手にオフィスの地図をみせて、指で場所を示して、何とか行き先を伝えることができました。

   そうして、ようやくオフィスの入っているビルに着いた筆者はエレベータに乗り、オフィスに向かいました。


不機嫌なユーザ

   オフィスに着き、会議室に入るとすでにミーティングがはじまっていました。キーユーザである日本人管理職の方に名刺を渡して挨拶しましたが、そのキーユーザはずいぶん不機嫌な様子です。

   このミーティングでは、今後の進め方やあらかじめ準備していた質問事項について確認しました。

   この時は「恐いユーザさんだな」と思うだけで、不機嫌な態度の理由や今後どう対応していけばよいかといったことを考えていませんでした。そしてユーザがプロジェクトやシステムについてどのような理解をしているかを深く考えず、全体の中の一部だけを断片的に説明し、ミーティングを終えました。

   これは自分が途中からプロジェクトに参加しており、それまでの経緯を知らなかったということもありましたが、配慮が足りなかったといえます。

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ビーブレイクシステムズ
著者プロフィール
株式会社ビーブレイクシステムズ  鹿取 裕樹
オープン系ITコンサルタント。SAPジャパン社にて、ERP導入コンサルティングを行い、そのユーザ企業の現場でJava及びオープンソースの躍動を感じ、それらに興味を持つ。その後、会社を設立。オープンソース及びJavaを用いたシステム提案活動を行い現在に至る。専門分野はSAP R/3と連携するWEBシステムのコンサルティング。


INDEX
第6回:怒鳴りこみ・すれ違いと真実
  はじめに
プロジェクト体制
  中国からの電話
踊るエンジニア 〜システム開発現場の風景
第1回 初心者SEと最初のプロジェクト
第2回 徹夜と謝罪の下流工程
第3回 消された案件とチームの事件
第4回 新人とエンジニアのプライド
第5回 彼女の悲鳴は聞こえない
第6回 怒鳴りこみ・すれ違いと真実
第7回 タイムリミットは10日間
第8回 さらば愛しきプロジェクトマネージャー
第9回 標準化に消えたプロジェクトマネージャーの信念
第10回 エンジニアよ、永遠になれ

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