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コストで見るオープンソースERP
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おそらく多くの方が興味を抱くのはコスト削減効果でしょう。オープンソースソフトウェアは、先日公開されたばかりの欧州委員会の報告書(※注1)にある通り、長期的なコスト削減に優れています。それはなぜでしょうか。
※注1:
Study on the Economic impact of open source software on innovation and the competitiveness of the Information and Communication Technologies (ICT) sector in the EU
理由の1つはライセンス費用が消失するからです。プロプライエタリなERPソフトウェアではアップグレードのたびにライセンス料の支払いが発生します。ユーザ数によって、1回当たり数百万から数千万円におよぶのが普通です。しかし、オープンソースではライセンスは無料です。ユーザ側からサポートを要求しない限り、一切支払いを行う必要はありません。
それ以上に効果があるのがソースコードの共有です。オープンソースではコミュニティ全体でソフトウェアを開発/管理することによって、一社当たりの負担が激減します。すでに開発されている機能を利用するために追加の費用を支払う必要はありません。また、自社向けに開発したソースコードを社内だけで管理すると、すべての費用を一社で賄う必要がありますが、社外に公開することによって管理コストを分散させられます。
これを読んで、自社向けのソースコードを公開する必要があるのかと不安になる方もいらっしゃるかもしれません。しかしオープンソースであっても必ず公開しなければならないという訳ではありません。実際のオープンソースERPはほとんどがGPLライセンスに基づいており、GPLライセンスでは頒布が行われなければ公開義務は一切ないからです。コストと引き換えに社外秘扱いにすればよいのです。
現実のプロジェクトでは、どこまで公開し、どこから企業秘密とするかを天秤にかけます。コスト面では公開部分が大きいほど優れていますが、企業秘密をさらすべきではありません。しかし、ほとんどのERPシステムでは一企業に特有な部分は全体のうちわずかなので、隠蔽箇所を極力を減らしましょう。
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オープンソースERPの利点のまとめ |
表2にオープンソースERPの利点をまとめました。
- 機能上の利点
- システムの均一性が高いことが多い。拡張性に富む。
- サポート上の利点
- 社内を含めて、第三者が改善できる。ベンダーへの依存性が低い。
- コスト上の利点
- ライセンス費用が無料である。ソースコードの共有によってコストを分散できる。社内で解決できる問題のために支払いを行う必要がない。
表2:オープンソースERPの利点
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オープンソースERPの比較 |
さて、オープンソースERPにおける、これらの大きな利点のため、次々と新しいERPソフトウェアがオープンソースとして生まれました。それらの中から何を選ぶべきでしょうか。参考までに、表3に有名なオープンソースERPの比較を示しました。
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ERP5 |
Compiere |
TinyERP |
100%オープンソースによるシステム構築 |
○ |
× |
○ |
ウェブ対応 |
○ |
△ |
× |
迅速なオンライン開発 |
○ |
× |
× |
ビジネスモデルの統一 |
○ |
△ |
○ |
テンプレートによるシステム設定 |
○ |
× |
○ |
ユーザ数やデータ規模に対するスケーラビリティ |
○ |
△ |
× |
日本語対応 |
△(※注2) |
○ |
× |
表3:代表的なオープンソースERPの比較
※注2:
日本語版の開発を進めており現在試験段階にある。
Compiereはプロジェクトの開始時期が早かったため、実績数でリードしているものの、ERP5は機能的に圧倒しています。TinyERPはERP5より後に生まれたため、CompiereやERP5の長所を採り入れていったものの、まだ技術的に十分追い付いていないのが現状です。
また、CompiereはいまだOracleデータベースへの依存性を排除できていないため、オープンソースのみでシステム構築を行うことはできず、ライセンス料の支払いが発生します。ERP5やTinyERPでは、MySQLやPostgreSQLを利用できるため、オープンソースだけでシステム全体を設計することが可能です。
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次回について |
次回は、先進的なオープンソースERP「ERP5」について、詳細な検討を行います。
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著者プロフィール
Nexedi 最高技術責任者 奥地 秀則
オープンソースERP「ERP5」の設計・開発に初期段階から関与し、現在ERP5の技術責任者を務める。服飾業、金融業、鉄鋼業、自動車産業、航空宇宙産業におけるERPプロジェクトを経験してきた他、社内外のエンジニアやコンサルタントのトレーニングを指揮している。
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