第2回:製品ライフサイクルの観点から見る製品情報の可視化 (3/3)

経営の可視化
企業活動と経営の可視化

第2回:製品ライフサイクルの観点から見る製品情報の可視化

話者:オープンストリーム  赤穂 満   2007/3/6
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変更管理の見える仕組み

   変更管理とは、製品の改良や原価の低減、品質の保証などによって部材や部品構成の変更情報を管理することである。設計時の変更情報には、BOMや図面、仕様書などの設計帳票、データの変更がある。

   そのような変更が発生する要因は表4のように分けられる。
  • 客先仕様による変更(客先都合)
  • 設計ミスによる変更(社内都合)

表4:変更要因

   またその変更内容には、表5に示すものが想定される。

変更項目 内容
品番・品名変更 図面番号、子図面番号の変更。カタログ、規格番号の変更
部品構成変更 部材の追加、削除。乗数の変更
形状変更 図面上の外形形状の変更
寸法変更 形状寸法の変更
材料変更 材質、材料の変更
加工変更 組立、溶接、表面処理など加工の変更
試験変更 試験内容、試験方法などの変更
誤記変更 図面、帳票内の記載ミスの修正など

表4:変更内容


変更処理の例

   それではBOMによる製品管理において変更が発生した場合について考える。例えば、製品C内の部材Aに対して変更が発生し、部材Aを部材Dに変更した場合、BOMの情報は図4のように付け替えられる。

変更処理の概要
図4:変更処理の概要

   変更については関連各部門の作業状況を確認した上で、変更の影響範囲と有効日を決定する必要がある。

   製品と工程進捗の関係を考えた場合、製品が出荷済みなのか、組立て品(出荷前)なのかなどによって、工程進捗に与える影響が変化するため留意する。特に、製造工程に入っている場合、生産ラインを止めるなどの処置が必要となるケースが多く、納期遅延や製造コストの増大につながる要因となりやすい。


システム化のための前提条件は品目コードの統一

   ここまでで製品ライフサイクル管理の仕組みについて解説してきた。ではこのシステム化にともない必要となる要素は何か。それが品目コードの統一である。

   製品の品目をあらわす単位である品目コードは、設計・製造・調達・販売で異なるケースが多い。従来のように、顧客や調達先の既存システムに依存するような場合、品目コードのコード体系のみならず桁数までもが異なっており、品目コードが管理ができていないケースが散見される。

   現状を考えれば、この品目コードを設計・製造・調達・販売で完全に統一するのは困難であろう。


「品目」はユニークなままで、「コード」を統一して管理する

   しかしこれまでのような「N:N」の関係になっている品目コードを「1:N(N:1)」の関係に整理し、変換テーブルをタイムリーにメンテナンスする体制とルールを整え、システム化を行うことで、データ精度が向上し、これまで手作業で行っていたデータ集計業務の負荷を軽減できる。

   つまりシステム化によって製品ライフサイクルを通した製品情報の一元的な管理を実現するためには、ライフサイクル内における「品目」はあくまでもユニークなままで、統一された「コード」で管理することが前提条件となる。


次回は

   今回は品目情報を基幹系システムから抽出することで、その外部で製品ライフサイクル管理を実現する仕組みについて解説した。

   次回はBOMにコスト情報を付加することにより、バリューチェーンの中で目標コストの変遷を可視化する仕組みについて解説し、原価企画の効率的な考え方について考察していく。

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株式会社オープンストリーム  赤穂 満
著者プロフィール
株式会社オープンストリーム  赤穂 満
サービス推進兼SAXICE推進担当 統括ディレクタ
活動状況:これまでに、製品ライフサイクル、製品構成情報管理やビジネスモデルなどに関する解説記事、論文多数。
所属学会:日本設計工学会、経営情報学会、ビジネスモデル学会、正会員。


INDEX
第2回:製品ライフサイクルの観点から見る製品情報の可視化
  製品ライフサイクル管理の意義
  BOMの概念
変更管理の見える仕組み
企業活動と経営の可視化
第1回 企業の生産活動をどのように可視化していくか
第2回 製品ライフサイクルの観点から見る製品情報の可視化
第3回 原価企画の観点から見るコスト情報の可視化
第4回 戦略的調達の視点から見る調達情報の可視化
第5回 経営の可視化の実現策

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