第1回:パッケージアプリケーションの現状とトレンド (2/3)

インフラ構築
後悔しないためのインフラ構築の勘所
〜パッケージアプリケーション導入編〜

第1回:パッケージアプリケーションの現状とトレンド

著者:日本アイ・ビー・エム  後藤 秦剛   2007/2/19
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パッケージベンダーの動向

   最近、パッケージベンダーの買収や合併により、パッケージベンダーにおける競争が激化しており、パッケージの質も向上するなど、変化し続けている。競争力を増したパッケージを支えるインフラも、パッケージの変化に対応していく必要がある。

複数のソリューションへ

   パッケージベンダーは、顧客の様々な要望に応えパッケージの適用領域を変化させてきている。例えばERPのパッケージを提供していたパッケージベンダーが、ソリューション領域を広げ、CRM、B2B、SCMなどといった業務系のアプリケーションを提供し、顧客の必要なアプリケーションをカバーできるように範囲を広げている。

   今日では、各アプリケーションの連携をとるデータハブ機能やポータル機能をはじめとするミドルウェア機能を持つソフトウェアや、内部統制などの新しい要件に対応するパッケージなども提供されてきている(図2)。

パッケージの変遷(ERPパッケージからの例)
図2:パッケージの変遷(ERPパッケージからの例)
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   その結果として、各パッケージアプリケーションを稼動させるためのサーバ台数が増加していくことが予想される。例えば、アプリケーションごとに開発、検証、本番環境を用意し、本番環境はクラスタ製品によるスタンバイ環境も用意することを想定すると、各アプリケーションでおよそ4倍強のサーバ環境が必要となる。

   またベンダーにとって、新しいアプリケーションはその実装事例が少ないことから、机上でのキャパシティプランが困難であることも多い。多くの実装事例により様々な経験値が揃ってキャパシティプランの精度をあげることが可能となる。

   導入プロジェクト内で負荷テスト、統合テストを実施することにより、ユーザの本番環境における精度の高いキャパシティプランを提供することが必要となるが、プロジェクトの初期における時点でシステムの大きさをはかるには、やはり机上でのキャパシティプランを行うための手立てが必要となる。


パッケージ導入プロジェクトの短縮化

   パッケージアプリケーションも大企業に次々に導入され、数年前から中堅のユーザ企業への導入が進み、今では半数以上が導入済みだ。パッケージアプリケーションが日本で浸透してきたこともあり、パッケージアプリケーション導入をテンプレート化し導入効率化をはかるSIerが増加した。これによりユーザ企業への導入期間が大幅に短縮され、導入コスト削減へとつながっている。

   プロジェクト期間の短縮に伴い、インフラ環境構築・インフラ側の検証期間も短期間化が望まれる。ユーザのビジネス成功に向け、迅速にプロジェクトを立ち上げ、結果をだすことは重要である。それを支えるインフラ環境は、今後のビジネスの伸びや業務統合などの変化へ柔軟に対応できるよう十分な検討を重ねた上に構築される必要がある。


バージョンアップと機能追加

   パッケージアプリケーションはバージョンアップにより、様々な追加機能を提供する。バージョンアップのプロジェクトは作業的にもコスト的にも大変であるが、バージョンアップによりパッケージの追加機能を利用できることは、ユーザ企業にとって大きなメリットとなる。

   一般的にバージョンアップすると、ソフトウェアがシステムリソースを旧バージョンよりも多く必要とする場合が多い。バージョンアッププロジェクトでは、新バージョンの検証環境のほか、バージョンアップ後に増強された本番環境の用意が必要になる。

   その場合、まずアプリケーションとシステムの特性を十分理解し、現行使用状況を正しく把握する。その上でバージョンアップ後の必要能力を導きだし、システム増強または新システムを導入するというプロセスを踏むことになる。


Windowsプラットフォームの採用

   パッケージアプリケーションは、ダウンサイジング、クライアントサーバモデルが流行していた時期に登場しはじめ、当初はUNIXやオフコンで稼動サポートされていた製品が多い。

   最近では中小規模の導入が増えてきており、Windowsサーバが採用されるケースも多い。Windowsサーバはハイパフォーマンス、低コストが売りである。また最近では仮想化技術などが注目されており、ハードウェアベンダーだけではなくパッケージベンダーもインフラ環境を融合する仮想化ソリューションを提供しはじめている。

   上記で述べたパッケージベンダーの動向とインフラ環境への影響を整理すると、図3のようになる。

パッケージベンダーの動向とインフラ環境への影響
図3:パッケージベンダーの動向とインフラ環境への影響

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日本アイ・ビー・エム株式会社 後藤 秦剛
著者プロフィール
日本アイ・ビー・エム株式会社
後藤 秦剛

1990年、日本アイ・ビー・エムに入社。1998年よりISVパッケージのテクニカルサポートに従事。経営イノベーショングローバルISVソリューションズ所属。


INDEX
第1回:パッケージアプリケーションの現状とトレンド
  企業システムにおけるパッケージアプリケーション選択
パッケージベンダーの動向
  インフラ環境の変化
後悔しないためのインフラ構築の勘所〜パッケージアプリケーション導入編〜
第1回 パッケージアプリケーションの現状とトレンド
第2回 パッケージアプリケーションを支えるインフラの重要性
第3回 パッケージアプリケーションの将来性を見据えたインフラの選定ポイント

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