第1回:パッケージアプリケーションの現状とトレンド (3/3)

インフラ構築
後悔しないためのインフラ構築の勘所
〜パッケージアプリケーション導入編〜

第1回:パッケージアプリケーションの現状とトレンド

著者:日本アイ・ビー・エム  後藤 秦剛   2007/2/19
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インフラ環境の変化

   ITの技術革新のスピードは著しく、インフラ環境は高機能化と低コスト化が同時に実現されている。今ではUNIX、Windowsのサーバ群は、信頼性、パフォーマンス、柔軟性、拡張性などといった観点でもメインフレームを追いあげている。

   しかし低価格化により、アプリケーション単位のサーバ構築や二重化構成などがしやすくなり、サーバの乱立を招くことになった。また管理サーバOSやソフトウェアの多種多様化などの要因で、サーバ自体のコストは下がっているものの、運用コストも含めたIT全体のコストは上昇の傾向にある。

   そこで解決策として登場したのが、インフラにおける仮想化技術である。仮想化技術の必要性と機能を4つのポイントから簡単に説明する。


急激なビジネス変化への対応

   時間、季節、突発的なシステム負荷の増大に対して、オンデマンドにシステム資源を必要な時に必要なだけアサインすることが可能になっている。さらに、新規環境を構築する場合には、これまではサーバ機器の選定から発注、設置、セットアップ、導入と何日もリードタイムがかかっていたことが、仮想化資源を活用することにより、現行資源でスムーズに新規環境を構築することが可能となっている。


システムリソース使用率の向上

   今までは、ERP、SCM、CRMなどアプリケーションごとにサーバが割り当てられており、仮想化に対応していないインフラ環境では、それぞれの固定のサーバのリソースしか利用できなかった。

   また、アプリケーションの利用ピーク時である一番高い負荷を基準にサーバ群の大きさを決定していたため、ピーク時以外は稼動するシステムリソースがごく限られ、全体的にみるとシステムリソースの使用率が低くなる傾向があった。

   仮想化技術では、サーバリソースを仮想的に統合することで、必要なアプリケーションに余っているリソースを動的に配備することが可能になった。またサーバ群の大きさも、仮想化技術を実装することにより、リソースを有効に活用することができるようになった。


ITコスト削減の要求

   アプリケーションやサーバ台数の増加にともない、そのメンテナンスコストやソフトウェアライセンス料金、運用コストなどのインフラにかかるコストは増えていく傾向にある。

   仮想化技術を利用することにより、論理区画のクローニング、リサイズ、移行などの作業を同一基盤上で容易に行え、本番、検証、開発環境を必要に応じて展開できる。よって資源の重複や無駄をなくし効率的に運用することが可能となる。


管理の複雑さへの対応

   仮想化技術により、ポリシーベースでインフラ環境を集中管理でき、複雑な運用を簡素化することができる。仮想化技術は難しいものと誤解されやすいが、仮想化技術の目的として管理の簡素化を目指しているものであり、その実装や使用方法はいたってシンプルなものとなっている。

   パッケージアプリケーションのインフラ環境においても、仮想化技術の実装がポイントになっている。現在実装可能な仮想化技術は、ベンダーやプラットフォームにより様々あるが、今後はハードウェア、ソフトウェア、パッケージアプリケーションの3つの協調性が高まり、仮想化ソリューションとして展開されていくことになると思われる。


まとめ

   パッケージベンダーの動向やインフラ環境の変化の情報は、これから導入するインフラ環境の方向性を間違わないようにするためには非常に重要な情報である。また、パッケージにかかわる立場により見解も異なるため、パッケージベンダー、ハードウェアベンダー、SIerなどの様々な方向からの情報が必要である。情報の内容も、機能やスペックだけでなく、ベンチマーク、実績、将来性など幅広く捉える必要がある。

   次回は、ハードウェアベンダーの観点から、仮想化のテクノロジーとその実装を中心に、インフラ構築の勘所を説明していく。

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日本アイ・ビー・エム株式会社 後藤 秦剛
著者プロフィール
日本アイ・ビー・エム株式会社
後藤 秦剛

1990年、日本アイ・ビー・エムに入社。1998年よりISVパッケージのテクニカルサポートに従事。経営イノベーショングローバルISVソリューションズ所属。


INDEX
第1回:パッケージアプリケーションの現状とトレンド
  企業システムにおけるパッケージアプリケーション選択
  パッケージベンダーの動向
インフラ環境の変化
後悔しないためのインフラ構築の勘所〜パッケージアプリケーション導入編〜
第1回 パッケージアプリケーションの現状とトレンド
第2回 パッケージアプリケーションを支えるインフラの重要性
第3回 パッケージアプリケーションの将来性を見据えたインフラの選定ポイント

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