第4回:日本企業に必要な人材マネジメント (3/3)

IT戦略と人材マネジメント〜IT効果による人材革命
IT戦略と人材マネジメント〜IT効果による人材革命

第4回:日本企業に必要な人材マネジメント
著者:日本ピープルソフト  小河原 直樹   2005/10/21
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企業に求められるリーダーの育成〜コンピテンシー・マネジメント

   人材マネジメントの次は、人事部で策定した人材戦略を現場で「活きた」運用をすることが重要になる。今までの日本の人事制度は人事部のみの専用ツールであった。他部門は人事制度の中身についてはほとんど理解することなく、毎年1度の人事考課の提出一週間前に慌てて目を通し、何とか体裁をつけて提出するくらいだろう。

   人材マネジメントは企業文化や組織風土に大きな影響をあたえる。人事マネジメントは企業理念や企業戦略を浸透させるためのメッセージ機能も持っている。新しい人事制度を従業員に浸透させていくことは、企業文化を新しく創造していくことでもあるのだ。

   そのために、できるだけ人事制度を現場主導で運用していくことが必要となる。従業員の能力や意向を一番把握しているのは、現場のリーダーである。現場のリーダーが従業員の能力を正しく把握して、報酬制度や育成計画を立てられるように人事部主体で作成した人事政策を現場に委譲して、現場が正しく人材マネジメントを行なえるようにサポートしていかなければいけない。

   この際に重要なことは経営戦略を十分に理解し、人事政策を現場で運用できるリーダーの育成である。企業戦略にそった人材戦略が社内に浸透するかどうかは、現場のリーダーがそれを理解し、いかに部内で運用できるかによる。現場のリーダーは部門に与えられた目標を達成するために必要な人材を調達・育成していかなければならない。そして従業員の士気を高め、グループとしての生産性を高めていかなければならない。


リーダーに求められるもの

   リーダーに求められるものとは、企業理念を実現するための行動規範である。部内の従業員は直属の部門長を見ながら仕事をし、真似しながら仕事を覚えていく。上司が企業理念を正しく理解し、業務遂行のプロセスで実践していけば、企業理念は従業員に根づき、健全な企業文化が浸透していく。

   最近、人材マネジメントの一環としてコンピテンシー・マネジメントが脚光を浴びている。コンピテンシー・マネジメントとは、高い業績をあげている従業員の行動特性と業務に必要なスキルを獲得する過程を定義したものである。高い業績をあげるために、その人材がどのようなプロセスを経て成果にいたったかを、具体的な行動特性や必要な能力・思考を表したものである。

   優秀といわれている社員が高い業績をだしつづけられるのは、その行動の結果からである。ならば優秀な社員の行動特性やスキルを明確にし、一般社員の行動規範にすれば皆が優秀な社員になれるはずである。例えば、有能な営業マンは顧客訪問計画を綿密に立ててから顧客訪問を行ない、製品説明の前には十分な準備と競合他社との比較表や自社の優位性を説明できる資料を作成する。業績の悪い社員が、有能な営業マンの行動特性から自分に欠けていた所を学ぶことによって、高い業績をあげるためのプロセスを学ぶことができる。


コンピテンシー・マネジメント

   コンピテンシー・マネジメントという言葉自体は日本人には目新しいが、我々の身近な例に置き換えると、知らず知らずにコンピテンシー・マネジメントを行なっていることがわかる。新入社員が仕事を覚える際に、直属の先輩や上司あるいは仕事のできる他部門の社員の仕事のやり方を真似ようとする。私も入社した当時は先輩から「仕事は習うより盗め」とよくいわれたものだ。無意識にその人が仕事を進めるうえでのプロセスを真似しながら仕事のやり方を覚えて、効率的な業務のこなし方を学ぼうとする。

   日本企業の一般的な評価基準は、次の3つから成り立っている。業績考課・能力考課・情意考課である。業績考課は、一定期間中に達成すべきMBO(Management By Objective:目標管理制度)に置き換えることができる。能力考課は、従業員が保有している能力であり、職能資格制度の等級ごとに定義されている職務遂行能力項目にあたる。情意考課はその人のやる気や企業内での行動規範を定義している。

   コンピテンシー・マネジメントは、能力考課と情意考課を一本化したものと考えればわかりやすい。すなわち高い業績をあげるために必要な保有能力および行動規範を定義したものである。これからの人材マネジメントの評価の主軸は、MBO(目標管理制度)とコンピテンシー・マネジメントであり、人材開発としてコンピテンシー・マネジメントが活用されることになる(図3)。

成果主義とコンピテンシー・マネジメント
図3:成果主義とコンピテンシー・マネジメント
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   MBOは主として短期的な成果主義のツールとして、給与やボーナスに反映させる。一方コンピテンシーは長期的な能力開発のツールとして、従業員の教育制度や異動・配置に反映させる。また、職種やポジション別のコンピテンシーとは別に、企業理念を反映させたコンピテンシーを全社員に適用させることにより、企業理念を従業員に浸透させていくこともできる。(図4)。

日本型人事制度とコンピテンシー・マネジメントの共通点
図4:日本型人事制度とコンピテンシー・マネジメントの共通点

   結果重視でなく結果を引き出すプロセスに重点を置くコンピテンシーの考え方は、終身雇用をベースにした能力開発と同じ考え方であり、年功序列にかわる新しい人事政策として、日本企業に受け入れられるであろう。

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日本ピープルソフト社 小河原 直樹
著者プロフィール
日本ピープルソフト株式会社  小河原 直樹
米国Baylor大学大学院国際ジャーナリズム学科卒業後、SAPジャパン(株)にHRコンサルタントとして入社。その後、外資系金融企業で日本及びアジア地域の人事責任者として勤務。現在日本ピープルソフト(株)でHCM Global Product Strategy. Senior Managerとして日本の製品戦略の責任者。


INDEX
第4回:日本企業に必要な人材マネジメント
 これからの時代に求められる人事部の役割
 人材戦略と企業戦略
企業に求められるリーダーの育成〜コンピテンシー・マネジメント
 ネクストソサエティを越えて「サラリーマンという職業の自由化」

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