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| ネクストソサエティを越えて「サラリーマンという職業の自由化」 | ||||||||||||
企業の源泉は「ヒト・モノ・カネ」である。日本企業は、モノとカネは、企業戦略にそったマネジメントをしているが、「ヒト」のマネジメントは、企業戦略ではなく「従業員の雇用本位」のマネジメントをしてきた。それ自体は誤りではないが、その前提条件が特別な経済状況の下に成立していたことを認識しなければいけない。 日本企業は長期雇用と能力平等主義を前提に、年功序列を軸とした人事制度の下で長期間にわたる従業員同士の競争を施してきた。一括採用の後、5年から10年の間は昇格・昇進に大きな差をつけず、職務能力の向上のための機会も平等に与えてきた。 部門内の仕事上でも、自分の役割を持ちながらアメリカほどの明確な職務区分を持たずに、他のメンバーと協力して助け合いながらグループとして成果をあげていく仕事の進め方は、集団の利益を個人のそれよりも優先させる日本人の考え方にもよく合っていた。 それを助長するように、日本企業の人事考課は業績考課の他に能力考課や情意考課などの潜在能力や意欲や職場の仲間と協力しながらチームとして働ける協調性など、客観的な「成果」以外の部分も高く評価してきた。 しかし右肩あがりの経済成長を望めない状況下で、日本企業企業は長引く不況とグローバリゼーション・IT化や金融の自由化などのため、固定費としての人件費に耐えられなくなった。その結果として、全従業員を対象とした長期雇用を前提とした人事政策を採ることができなくなった。 | ||||||||||||
| 日本の雇用システム | ||||||||||||
では、現行の経済状況下で日本企業がとるべき雇用システムはどうなっていくのだろうか。日本もアメリカと同じように職務を中心とした雇用形態になり、更なる人材の流動化が進んでいくのだろうか。 経済大国の中で製造業労働者の割合が最低なのはアメリカであり、日本は製造業の占める割合はまだまだ多い。日本企業での雇用の流動化は職種や業界で差がでてくるであろう。 例えば、その会社でしか使えない特別の技能で、それを習得するのに長期間の人材育成が必要な場合、その業界で最も優れた人事制度は終身雇用制度となる。以前、鉄道業の方から、鉄道の運転方法は会社によって異なるために転用できる技能ではないという話をに聞いたことがある。そのような特殊な職務および業界では外部労働市場も形成しにくいし、生涯就社という考えが会社にも従業員にも当たり前のように浸透するであろう。 逆に、IT技術者や金融のアナリスト・ファンドマネジャーなど、多くの外資系企業が日本に進出して、国際化の波にさらされ、外部労働市場が形成されている業界や職種では、人材の流動化は進んでいくだろう。 人材マネジメントを考える際には、企業ごとに「オーダーメード」の人事政策を考えていかなければならなくなる。終身雇用や年功序列が悪い、成果主義がいいということでなく、自社の企業戦略を遂行するうえで、人材マネジメントとして何が必要なのか、企業ごとに考えていかなければいけない。これからの雇用形態は企業ごとの「人材マネジメント」によって決まってくる。 では、今後の日本の人事で主流となっていく企業と従業員の雇用形態はどのようなものになるのだろうか。 これからは、企業が従業員の生活をすべて保障する終身雇用の形態ではなく、企業側も従業員側もそれぞれが選択できる雇用システムに変わっていくのではないだろうか。 終身雇用を必要とされる従業員は、企業内に依然存在する。ただ、すべての社員が終身雇用として雇用されるのではなく、企業にとって「コア=リーダー」となる人材だけが対象になるだろう。企業が早い段階で「コア=リーダー」となる従業員を選抜し、逆に従業員の側にも自分のキャリアを選択し、設計するキャリアパスを作っていくことになる。 企業側が従業員に対して自己選択可能な仕組みを提供することで、社員の自立の機会を与えていく。例えば、個人選択型人事制度の例として、自己申告制度・社内公募制度・社内FA制度・社内ベンチャー制度などがある。これらは、従業員が自分の能力を把握し、自分にふさわしい仕事を社内で探して「手に入れる」制度である。今までのように会社が仕事やポストを与えてくれるのを持つだけではなく、自分のキャリアを自分で形成していける制度である。 他の採用形態として一括採用以外にも職種別採用や契約社員制度、限定勤務地制度などがある。選択型キャリア開発としては、選択型研修制度やポイント制教育制度、社内ビジネススクール、福利厚生としてはカフェテリアプランなどがある。退職制度として、早期退職優遇制度、選択定年制・独立支援制度・再雇用制度などを提供する。 企業側は、経営資源の最も大切な「人材」の採用および「人材」の定着のために、企業独自の人事制度をPRしていく。ある企業は終身雇用を売りにし、ある企業は完全能力主義やストックオプションなどの制度で従業員を引きとめようとする。ある企業は多種多様なキャリアプランを提示し、別の企業では正社員が全体の10%で残りの90%を非正社員でまかなう人事施策を行なう。 それらの人事施策は企業理念や経営戦略と結びついた制度であり、企業独自のカラーである。会社にとって必要な従業員は企業理念に共感し、企業戦略を実行できる人材である。企業独自のマニフェストに基づいた人事政策を明確にし、共感できる人材を「コア・リーダー」として長期雇用していくだろう。 また勤める側としては、1つの会社で定年まで勤めることを望む人もいれば、成果主義的な要素の強い会社で自己の可能性を試してみたい人もいるだろう。今までの日本企業は、一旦入社したならば、他の選択の余地は極めて狭かった。ライフプランも転勤命令などの会社の都合で決められてしまっていた。 色々な可能性や自己の置かれた状況に合わせて、選択の幅を広められる各社独自の人事政策は、日本企業の閉塞感のあるサラリーマン社会に、自己選択と自立可能な「新しいライフスタイル」を提供できるきっかけになるのではないか。 最後にピータードラッガーのネクストソサエティの中で、知識労働者にとって大切なことは、第1に組織戦略を明確に理解し、第2に継続教育の機会を持ち、第三に組織の中で自己実現をはかり、組織内で敬意を払われることだと述べている。 まさに、日本企業の人材マネジメントについて、これからの課題をいい当てている気がする。 プロフェッショナルな従業員は会社と同等の関係であり、会社を通じて自身の目標の実現をはかっていく。働くことにより自己実現をはかっていくための企業文化の担い手は、人材マネジメントを作成する企業いかんにかかっている。 最後に、人事部に求められる役割は、企業戦略にそった人事政策の策定、人事政策を現場に委譲するためのサポート、そして現場の運用状況のモニタリングの3点であると冒頭で解説した。では最後の現場の運用制度のモニタリング機能を人事部はどのように果たしていけばいいのか。 現場での人材マネジメントの進捗状況を管理するために、戦略的な人材情報システムが必要になる。次回は人材マネジメントと人材情報のIT運用について論じていきたい。 | ||||||||||||
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