第3回:その必要と条件 (2/4)

ニーズとXMLDB
隠されたニーズを引き出すXMLデータベース

第3回:その必要と条件
著者:ピーデー  川俣 晶   2006/2/22
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XMLデータベースは唯一の選択肢なのか

   ここまでの話で、以下のような疑問を感じた読者も多いと思う。

   もしニーズこそが重要であり、XMLデータベースは単にニーズを満たすために選ばれたものに過ぎないとしたら、ニーズさえ満たせればXMLデータベース以外のデータベースを使ってもよいのではないだろうか。

   この疑問は正しい。

   実際問題として、ニーズさえ満たせればよいのであって、どうしてもXMLデータベースでなければならない必要性は存在しない。

   例えば、世の中には様々な種類のデータベースが存在する。RDBの他にオブジェクトデータベースなどの選択肢がある。それらと比較してXMLデータベースが採用される理由は、それがよりニーズに近いからに過ぎない。

   ならば、同じぐらいニーズに近いデータベースを創作することに成功したら、XMLデータベースの代わりにそれを使ってもよいのではないだろうか?

   その答えは「否」である。

   XMLデータベースに格納されるデータはXMLデータである。XMLデータを扱うためのツールや技術は豊富に存在する。つまりXMLデータを入力するためのフォーム作成を支援するツールや、XMLデータを綺麗に書式整形されたPDFファイルに変換するためのツールなどが揃っているからこそ、XMLデータベースは実用性が高いのである。

   同程度に周辺環境が整備された実績あるデータベースについて論じるならともかく、まったく新しい種類のデータベースを創作しても同じ水準の使い勝手は得られない。

   その点にこそ、XMLデータベースである必然性が存在するのである。


ニーズを満たすための条件

   さて、ここからが本題である。

   従来の技術では上手く適応できなかったニーズの多くは、事前に厳密な設計ができないデータを持つという共通の特徴がある。

   「事前に厳密な設計ができない」という状況は、さらに2つに分けて考えられる。

   1つは、設計が完了できないままシステムの開発を行わねばならない場合や、開発中に変更要求が入る場合である。このようなケースでは開発中に設計は変化を続け、システムが完成した時点で設計が固まることになる。

   もう1つは、システムの完成後にも変更に対する要求が随時発生する場合である。このようなケースでは、運用しながら新しい種類のデータを付け加えていくことになる。つまり運用中に設計が変わるということだ。

   さてソフトウェアのライフサイクルというものを考えると、長期にわたって運用が続けばシステムに対する変更要求は必ず発生する。このような要求を踏まえて考えるなら実は2つに分類することは意味がなく、すべてのシステムは「システムの完成後にも変更に対する要求が随時発生する」と見なすことができる。つまり、すべてのシステムは「事前に厳密な設計ができない」ということになる。

   もちろん、このような認識は実用的ではなく、変化に対する要求が小さなシステムでは「事前に厳密な設計ができる」と見なして問題ないケースも珍しくない。そして事前に厳密な設計ができれば、開発の効率はよいものになる。この条件に該当するシステムは、従来からの技術や開発方法論で問題なく扱えるので、この記事の対象外である。

   ここで、話を本題に戻そう。

   XMLデータベースにおいて、データベースの設計とはスキーマを記述することと見なすことができる。つまり「事前に厳密な設計ができない」とは、「事前にスキーマを記述することができない」ということを意味する。

   ここが今回の第1の山場である。

   すでに述べた通り、従来からの技術や開発方法論で取りこぼされてきたニーズの多くは「事前に厳密な設計ができない」という特徴を持つ。それは「事前にスキーマを記述することができない」ことを意味する。ということはデータベースを作成する際にスキーマを要求するXMLデータベースは、このようなニーズに対応するために不十分であることを意味するのである。

   必然的に本連載の「第2回:その要求と分類」で解説したXMLデータベースの中で、「スキーマは必須」という特徴を持つソフトは適応しないことになる。

   また「スキーマがあれば性能が向上する」というソフトは、スキーマ抜きでは性能が十分に発揮できない可能性がある。個々のニーズへの適応度は、性能の評価次第といえるだろう。

   よって最善の選択はスキーマ不要(スキーマレス)のXMLデータベースとなる。スキーマなしで最善の性能を発揮させるよう設計されたスキーマレスのXMLデータベースは、まさに「事前に厳密な設計ができない」データを扱うのに最適である。

第1のポイントはスキーマレス
図1:第1のポイントはスキーマレス

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株式会社ピーデー 川俣 晶
著者プロフィール
株式会社ピーデー  川俣 晶
株式会社ピーデー代表取締役、日本XMLユーザーグループ代表、Microsoft Most Valuable Professional(MVP)、Visual Developer - Visual Basic。マイクロソフト株式会社にてWindows 3.0の日本語化などの作業を行った後、技術解説家に。Java、Linuxなどにもいち早く着目して活用。現在はC#で開発を行い、現在の注目技術はAjaxとXMLデータベース。


INDEX
第3回:その必要と条件
  前回までのあらすじ
XMLデータベースは唯一の選択肢なのか
  もう1つの重要なポイント、それはサイズ
  サーバの台数を減らせ
隠されたニーズを引き出すXMLデータベース
第1回 その必然と当然
第2回 その要求と分類
第3回 その必要と条件
作って学ぶXMLデータベースNeoCore XMS実践
第1回 XMLデータベースを使ったシステムを企画する
第2回 半定型文書を扱うシステムを設計する
第3回 XMLデータベースを構築し、検索式を設計する
第4回 検索式を組み込んでシステムを完成させる(前編)
第5回 検索式を組み込んでシステムを完成させる(後編)
第6回 PICLS〜XMLデータベースを用いた販促ツール作成支援
XMLデータベースによる企業情報システム構築の最前線
第1回 NeoCore XMSで紐解くXMLデータベース適用の勘どころ
第2回 Webカタログ管理システムに見るNeoCore XMS採用のメリット

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