2006年企業アプリケーション導入実態調査
日本版SOX法対応では、約26%のユーザがERPをベースと回答
今回の調査では、米国で2002年に制定されたSOX法(企業改革法)の日本版ともいえる「日本版SOX法」への取り組みについて尋ねた。同法の適 用は当面(2008年にも施行される見通し)上場企業に限定される可能性が強く、本調査でも上場か未上場かによって、企業の取り組み状況に大きな差が生じ た。
上場企業の場合は「連結子会社も含めて本格的に対応」の34.1%と「重点部門からスタートし段階的に対応」の56.6%を合計すると90.7%であり、9割が日本版SOX法に対して何らかの対策を講じている。
未上場で今後も上場計画がない企業で日本版SOX法対策を終えたのは1割に満たないという結果が得られた。しかし未上場企業でも、将来に備えて情報収集を行うとした企業は多く、日本版SOX法への関心が高いといえる。
また図3に示すように日本版SOX法対策としてERPの活用を考えている企業は、「ERPの内部統制モジュールを基盤として活用」の10.6%と「内部統制以外のERPモジュールとERPのアドインを組合せ」の16.3%を合計した26.9%だった。
ERPを活用する企業の総比率では上場と未上場の差はそれほど大きくないが、今後上場計画のある企業では、ERPの内部統制モジュールの活用を考えている企業が目立った。
今後の重点投資先、セキュリティがやや鈍化、ERPが再浮上
本調査では、例年IT投資分野別の注力度についても調べている。調査の方法は2006年度の注力するIT投資分野と2年後の2008年のIT投資分野の予測をしてもらい、その傾向を分析したものである。
IT分野における注力度の回答に重み付け(「拡大」3ポイント、「現状維持」1ポイント、「縮小」マイナス3ポイント)した合計値を有効回答数(無 回答を除外)で割った値を注力度指数としてプロットし、その動向を見ていこう。図4は2006年度から2008年度にかけての注力度の動向である。
図4は右上にある点ほど注力度の高いことを示している。45度の線が「現状維持」に相当し、斜線より上に位置するものは将来の注力度が高いことを示 している。図4を見ると「セキュリティ」が2006年度、2008年度のいずれの注力度とも他のIT分野を大きく上回っていることがわかる。
ただし、セキュリティへの注力度は2006年度の2.2から2008年度に同1.9への低下する見込みであり、企業のセキュリティ投資の増加が今後 鈍化する可能性がでてきたことを示している。昨年調査に比べて今後の注力度が高くなるIT投資分野としては、「連結経営管理システム」「ERP」「SCM 関連」などがあり、いずれも注力度がアップしている。特に「ERP」は、昨年から今年で斜線の下から上の領域に躍進しており、将来の注力度が高まってい る。
総括
2006年度の調査の結果わかったことの主要な点をまとめていこう。
ERPの導入は大企業ばかりでなく、中堅企業でも約50%近くの導入率となり、企業規模によらず着実に導入が進んでいることがわかった。これはERPの市場が大企業から中堅企業に拡大しているといえよう。
また日本版SOX法対応としては、ERPをベースに考えている企業が26%を超えた。2006年度は、ERPの内部統制に関する仕組みづくりが大き な焦点になることが予想され、ERPの価値を再定義できるよい機会ではないだろうか。つまり2006年度はERPを中心とした内部統制の意識の向上と仕組 み作りや、ERPを活用したITの経営への貢献が問われているといえる。
最後に本連載がERP導入の指針として役立てば幸いである。