加速する中堅企業へのERP導入
はじめに
第3回の今回は、前回に引き続きアプリケーションの導入状況を見ていく。アプリケーションの中でもとりわけ今回は「ERP」に着目して解説する。
現在ERP市場で最も注目を集めている企業群が中堅・中小企業であることは衆目が認めるところだ。ソフト/ハードウェアベンダーはこぞって中堅・中小企業に本格的に注力している。その背景には大企業へのIT導入がある程度一巡したという事実がある。
そのためベンダーのフォーカスエリアが中堅・中小企業に向いたともいえるだろう。同時にユーザ側でもオフコンや2000年前後に導入した基幹系システムの見直しのタイミングが重なっていることもある。
まずは、調査結果を元にERP市場の現状を見てみよう。
調査プロフィール
本調査は、ノーク・リサーチ所有の企業データベースから抽出した全国の年商5億円以上500億円未満でIAサーバを導入した民間企業約4,000社 を対象に、2006年1月から3月までの期間で郵送アンケートおよびWebアンケートを実施し、その結果有効票931件を回収した。
2005年度の中堅・中小企業向けERPパッケージ市場は663億円
ノーク・リサーチでは2005年9月〜12月にかけてERPベンダーを対象としたERP出荷調査を行った。ERP全体市場のうち、中堅・中小企業向けのERPパッケージ市場規模に注目したい(図1)。
図1はERPパッケージのライセンス売上高市場規模を年推移で示したものだ。図1で明らかのように、ERPパッケージのライセンス売上高市場規模で 特に成長著しいのが中堅・中小企業向けERP市場であるのがわかる。2004年度は前年度比14.7%の伸びで591億円、2005年度は前年度対比 12.2%の伸びで663億円となっている。
中堅・中小企業向けERPパッケージが好調な要因には以下の3点が考えられる。
オフコンおよびY2Kシステムのリプレース市場
現在の基幹系システム市場はオフコン、PCサーバのリプレースが活発だ。特に西暦2000年問題対応でシステムを導入した中堅・中小企業ユーザのリプレース需要がここ2年間活発である。
情報システムの切り替えは5年周期と一般的にいわれており、2000年前後にシステムの入れ替えをしたユーザの転換期が2004年前後から訪れはじめ、今後もしばらくこのリプレースの動きが続くことは間違いない。
同時に「塩漬け」といわれているオフコンや初期のWindows NT Serverからのリプレースも2005年あたりから活発化している。
国内ERPベンダーの中堅・中小企業への注力
中堅・中小企業向けには国産ERPベンダーが中心であるが、SAPやオラクルなどの大手外資系ベンダーやインフォベックといった国産ERPベンダーが新規参入しており、2007年にはマイクロソフトの同市場への参入が発表されている。
こういった売り手の中堅・中小企業市場におけるプレイヤーの増加で、それ以前に比べて中堅・中小企業ユーザの商談の機会や提案を受ける頻度が高まっている現状がある。そのような背景にあわせてERP価格の低下傾向による買いやすさも伸びを助長している要因だ。
景気回復傾向
大企業に比べてITにかける予算の少ない中堅・中小企業では、景気に左右される面が大きい。しかし現在日本国内は景気回復基調にあり、中堅・中小企 業のIT投資を刺激していることは確かだ。2003年後半からは景気回復の兆しをみせており、2005年以降は景気の上向きのベクトルによってIT投資に 対する意欲は次第に高まってきている。
上記3点が要因となって中堅・中小企業のERP市場の拡大につながっているといえよう。それではこのような要因に対して、実際の中堅・中小企業の導入実態および意向はどのようになっているか見てみよう。