The Social Side of Services/サービスの社会的な側面

2006年6月22日(木)
Steve Vinoski江川 潔(訳)

実現に向けて取り組むために

   かつて、ITプロジェクトは、ビジネスの目的に沿う必要もなく、必ずしも有効な成果を果たす必要もありませんでした。しかし現在、企業は製造部門や マーケティング部門、営業部門などと同様に、ITが収益に貢献することを期待しています。このため、企業はコスト削減と付加価値を生むために、サービス指 向アプローチを業務に適用するように意識するでしょう。

   しかし、単なる期待だけではSOAについての人間的な側面を確立するには具体性に欠けます。それらは概要として評価されているにすぎず、企業の関係者全員が当事者意識を持って評価できているものではありません。

   サービス指向アプローチの適用とSOAネットワークの構築を立ち上げることは、社内のどの組織に、それらが一番適合できるかということに依存してお り、そのためには様々な努力が必要となります。私の個人の経験からも、SOAに対する様々な障害が異なるレベルで社内に実在していました。

   もし、この後の記述がネガティブに思えるとしたら、それは皆さんが実際に進むと思われる現実の世界にもっぱら焦点をあてているからです。

開発者のレベルの障害

   通常、開発者は提案の内容の技術的なメリットのみに焦点をあててしまいがちです。もし現在のアプローチやプロセスがまったく機能していない場合以外 は、ほとんどの開発者は変化に対して抵抗する傾向にあります。そのため、目新しいSOAの提案でも、その欠点や計画がうまくいかない可能性を証明しようと します。

   もちろん、この話はすべての開発者にあてはまるわけではありません。おそらく自らの苦労もかえりみないでSOAを推進している開発者の方が多いはず です。そのような方々は、ぜひすべてのSOAの適用事例が初期段階での適用であるという一律的な考えに陥らないようにしていただきたい。

   多くの開発者は実際には新しい技術に対して保守的な考えを持ちがちであり、新しいテクノロジーや方法を絶対に使わざるをえない状態まで適用しようと しません。もしそうでないとすると、たとえば、「出る釘は打たれる」症候群にかかっていて、新しいテクノロジーであるSOAの適用が自らのスキルの領域で はないと避けて考えるでしょう。

   また、いまだに彼らはテクノロジーの急速な進歩に追いつくことを苦労の末にやり遂げたと感じており、彼らの見方では新しいテクノロジーを採用する提案は既存の生産性を下げるものの1つということになります。

中間管理職レベルの障害

   中間管理職や技術リーダーたちは、明確に分かれた2つの項目うち、どうも片方に強く傾く傾向があります。すでに社内的には「開発スケジュールも守っ て予算の超過もない」というよい評価を受けているとしたら、新しいSOAの適用は多くのリスクがあると見てしまうことでしょう。

   そのため、SOAの適用は彼らが実践してきた方法に対抗するものであり、既存の権限を侵食していくものではないかと密かに見られる場合もあります。

   一方、もし彼らが名をあげようとしているならば、SOAをサポートすることによって費用を節約し、かつ生産性を向上させることを証明しようとやっきになるかもしれません。

IONA Technologies,Plc.

IONA Technologiesの主管エンジニア。
17年以上にわたりミドルウェアの仕事に従事し、Object Management Group(OMG)やWorld Wide Web Consortium(W3C)においてミドルウェアの標準化に貢献している。IEEE Internet Computing Magazine の"Toward Integration"コラムを執筆しているほか、IEEE Internet Computing MagazineとInternational Journal of Web Service Researchの編集委員を勤めている。

日本アイオナテクノロジーズ株式会社 テクニカルセールスマネージャ

株式会社富士通SSLでNTT仕様のオペレーティング・システムの開発に従事したのち、日本ディジタルイク イップメント株式会社でNTT向けシステムの開発、その後、ソフトウェアとハードウェアのプリセールス活動を展開した。DECの合併を経て、現職のミドル ウェア製品のマーケティング、アライアンス、プリセールスなどに従事。

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