2006年に発表された次世代Webアプリケーション開発環境である「Adobe Flex 2」とはどのようなものなのか。そしてクリエイター向け製品を展開するAdobeがなぜエンジニア向けの開発環境を提供しているのか、エンタープライズ&デベロッパービジネスユニット担当であるJeff Whatcott氏に、Adobeのエンタープライズ市場に向けた戦略を伺った。
— Adobe Flex 2とはどのような製品なのでしょうか
Whatcott氏:FlexはWebから企業システムに至るリッチインターネットアプリケーションを構築することが可能な強力な開発環境です。Flexを利用すればクロスプラットフォームの幅広い環境に対応することができ、しかもFlashの特性を活かしたリッチなアプリケーションを開発することができます。またFlexはEclipseベースの開発環境ですので、使い慣れているJavaのデベロッパの方にも使いやすい開発環境だと思います。
そもそもFlexは、エンタープライズ分野で業務システムを構築しているデベロッパーをターゲットにして開発したものです。これまでのエンタープライズにおける業務システムは、エンドユーザが要求する機能をアプリケーションからWeb上に展開することが難しかったと思います。
— なぜ業務システムはWebアプリケーションに展開することが難しいのですか
Whatcott氏:なぜならば既存のクライアント/サーバ型のアプリケーションを発展させたいと思った時には、Webサーバやアプリケーションサーバには機能的な制限や表現力の問題があって実現できないことが多数あるからです。例えばネットワークのオフライン時にデータアクセスできない問題などがあげられますが、こういった問題をFlexを使うことによって解決することができるのです。
もしAjaxをビジネスに応用するには機能/性能/開発効率の点で限界を感じるはずです。しかしFlexを使うことによって、様々なグラフ表示やデータベースのローカルキャッシュをすることはもちろん、プッシュ型のアプリケーションやベクター形式の画像描画など、Ajaxをはるかに上回る表現力と操作性を実現できるのです。
— Flex 2のSDKが無償版が提供されましたが、その意図は何でしょうか
Whatcott氏:多くの人にFlexを使ってそのよさを体験していただきたいという考えから、開発者はFlash Player、Flex SDK、Flex Data Services 2 Expressをすべて無償で入手することができます。そのことによって、実用的なRIA(注1)の開発が可能になると思います。
※注1:
ユーザインターフェースにFlash/Javaアプレット/Ajaxなどを用いて、単純なHTMLで記述されたページよりも操作性や表現力に優れたWebアプリケーション
— アドビシステムズというとクリエータ向けの製品をリリースしているソフトウェアベンダーという印象があるのですが、なぜこれまでとは異なるエンタープライズ向けのソリューションを展開しているのでしょうか。
Whatcott氏:簡単にいえば、「エンタープライズにおいて、エンドユーザが要求する機能をアプリケーションからWeb上に展開すること」は当社しかできないと思っているからです。FlashやPDFは様々なプラットフォーム上で利用されており、世界中に多くのユーザがいます。またもちろん、エンタープライズに欠かせないセキュリティの高いソリューションの提供など、品質の部分においても実績があります。このようにリリースしている製品が多く環境のユーザに支持され、幅広く普及しているのはAdobeだけでしょう。
これと同様に、Flash Playerをデスクトップアプリケーションの稼動プラットフォームとして提供した場合、Flashやコンテンツを見るためだけではなく、エンタープライズとしての利用価値があると考えるようになったのです。
このように多くの人々に利用される環境を基にして、今後エンタープライズアプリケーション開発者が開発を進める上で、「どのようなプラットフォームが求められているのか」「アドビシステムズとして蓄積されてきた財産を元に開発者に提供できるものは何か」という考えからFlexが生まれたのです。
|