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スパムフィルタ
今時のスパムフィルタの選定基準

第1回:スパムフィルタに必要なのは多言語対応/低負担/高検出率

著者:センドメール  小島 國照   2006/11/16
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電子メールの普及と浮上する課題

   ネットワークを通じて電子メールを自在かつ確実に送信する機能としてsendmail MTA(Mail Transfer Agent)が開発されてから、今年で25年が経ちます。当初、研究者や開発者の間のメッセージ交換の手法として利用されていた電子メールですが、今日では日常の最も重要な通信手段の1つとして老若男女を問わず活用されるようになりました。もはや電子メールなしでは、ビジネスができないといっても過言ではないでしょう。

   電子メールは、一部の小さいグループ内の通信手段から、全人類が利用する通信手段へと変わってきましたが、電子メールの基本となるプロトコルなどのインフラは開発当初から大きく変わっていません。

   しかし、圧倒的な低コストと即時性という電子メールが持つ特徴は、利用者のすそ野を広げると同時に、一部の心ない利用者や犯罪者を増幅させることになっています。スパムやフィッシング詐欺は社会問題としてしばしば取り上げられており、読者の皆さんも一度ならず遭遇したことがあると思います。

スパムへの対抗策

   これらの危機的状況に対して、ISPやメールソフトのベンダーなどは手をこまねいているわけではありません。業界を横断した大きな流れとして、電子メールのインフラの高信頼性を実現する「送信ドメイン認証」の技術が標準化され、一刻もはやい普及が望まれています。残念ながら、その完全な普及までの道のりは遠く、仮に完全な普及が実現しても現在のすべてのスパムがなくなることはないといわれています。

   このような状況でスパムに対抗するには、適正なスパムフィルタを利用することが現時点での最も現実的で確実な対抗策だといえます。スパムフィルタの導入によって、メールシステムの管理者は膨大なメールの処理を自動化することになり、ユーザはメールボックスを開ける時の不快感が減り、ビジネスの生産性の低下を最低限に抑えることができます。


スパムフィルタはアンチウイルスフィルタとは違う

   そもそもスパムフィルタとはどのような技術・製品なのでしょうか。アンチウイルスフィルタと比較して考えてみましょう。

   アンチウイルスフィルタの技術については、具体的なイメージがあると思います。それは、「ウイルスを定義したパターンファイルがあり、新しいウイルスが発見されるとベンダーがパターンファイルを更新し、ユーザがそれを適用することでウイルスを検知する」というような検知方法のイメージです。

   よって、よいベンダーとはよりはやく新種のウイルスを発見し、よりはやくパターンファイルの更新をするものと考え、製品選択の際にベンダーを基準にして選択する方も多いでしょう。あるいは、パターンファイルが適切に更新されていれば問題ないと考え、価格で製品を選択している方もいるでしょう。

   では、スパムフィルタについてはどうでしょうか。スパムフィルタはアンチウイルスフィルタの延長上にはありません。実際に、多くの大手アンチウイルスフィルタのベンダーがスパムに増加に呼応して、安直にスパムフィルタを開発しました。しかし、これらの試みはすべて失敗に終わりました。アンチウイルスフィルタでの成功はスパムフィルタの成功にはつながらなかったのです。

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センドメール株式会社  小島 國照
著者プロフィール
センドメール株式会社  小島 國照
センドメール株式会社社長
日本タンデムコンピューターズ(現:日本HP)、ストラタスコンピュータ(現:日本ストラタステクノロジー)においてマーケティングおよび技術部門の責任者を勤めた後、サイベース、シャイアンソフトウェア、オブジェクト・デザイン・ジャパンなど、ソフトウェア業界において、マーケティング、製品開発、経営などに携わる。2003年より現職。Sendmail,Inc.入社以前は、ターボリナックスジャパン社長として、日本のビジネス市場における本格的なLinux導入に尽力した。


INDEX
第1回:スパムフィルタに必要なのは多言語対応/低負担/高検出率
電子メールの普及と浮上する課題
  スパムフィルタの評価の難しさ
  急増が予想されるスパム