Windowsユーザーのための WSL2で始める Linux環境構築術 29

WSLでUbuntuの最新LTSリリース「Ubuntu 26.04 LTS」を動かしてみよう

第29回の今回は、2026年4月23日にリリースされた最新の「Ubuntu 26.04 LTS」をWSLで実際に動作確認をしてみます。

水野 源

6:30

はじめに

Ubuntuの最新LTSリリースである「26.04 LTS(コードネーム"Resolute Raccoon")」が2026年4月23日にリリースされました。今回は、WSLでさっそく最新のUbuntuを動かしてみましょう。

Ubuntu 26.04 LTSとは

Ubuntuは半年ごと、4月と10月に新しいバージョンがリリースされます。Ubuntuでは「タイムベースリリース」を採用しているため、よほどのことがない限り、このスケジュールが変更されることはありません(ちなみに今から20年前に、1回だけリリースが遅れたことがあります)。そしてリリースされた西暦の下2桁と月2桁をドットで区切ったものがバージョン番号になります。つまりUbuntu 26.04とは、2026年4月にリリースされたバージョンということです。

通常のUbuntuのサポート期間はリリースから9ヶ月ですが、偶数年の4月にリリースされるバージョンは「LTS(Long Term Support)」と呼ばれる特別なバージョンで、標準で5年のサポートが提供されます。またLTSは第24回で紹介したUbuntu Proを導入することで、最長で15年利用することも可能です。

OSを半年ごとにバージョンアップするというのは、ホビー用途のPCでも大変です。業務利用のサーバーにおいては論外と言ってよいでしょう。そのため通常はLTS版のみを使って2年ごとにバージョンアップし、非LTS版は新機能の検証といった用途に限定して使うというのが、現在のUbuntuの一般的な運用スタイルとなっています。

現在、Ubuntuは本連載で取り上げているWSLはもちろん、開発用のコンテナ、CI/CDのランナー、クラウドのサーバーなど、様々な場所で活用されています。そのため新しいLTSが登場すると、こうしたシステムが新バージョンへの対応を行います。話題性も大きいため各種メディアが新リリースの特集を組むことも多く、ちょっとしたお祭りになるのがUbuntu界隈における2年に1度の恒例行事となっています。

Ubuntu 26.04 LTSのインストール

それでは、さっそくWSLに26.04をインストールしてみましょう。既存の環境をアップグレードすることも可能ですが*1、アップグレードは面倒ですし、100%意図通りに成功する保証もありません。何よりWSLは複数のディストリビューションを並列して動作させられるのがメリットです。そのため既存の環境には手をつけず、26.04環境を新規にインストールすることをお勧めします。

*1: ただし、LTSからLTSへのアップグレードは最初のポイントリリース(おおむね8月〜9月頃にリリースされます)がリリースされるまではブロックされます。

ストアからインストールする

LTS版のUbuntuは、Microsoft Storeを経由してインストールできます。以下のコマンドを実行してください。

$ wsl --install -d Ubuntu-26.04

wslファイルから直接インストールする

第11回では独自のディストリビューションをビルドし、拡張子「.wsl」のファイルとしてアーカイブしました。この記事でも説明した通り、WSLのバージョン2.4.4以降では、こうしたアーカイブからもディストリビューションをインストールできます。

Ubuntuでは、公式にWSL向けのリリースを公開しています。ダウンロードページから「Intel or AMD 64-bit architecture」のWSLファイル(ubuntu-26.04-wsl-amd64.wsl)をダウンロードしてください。このファイルをエクスプローラ上でダブルクリックするか、以下のようにwslコマンドの引数に指定してインストールしてください。

WSL用Ubuntuのダウンロードページ

$ wsl --install --from-file (wslファイルのパス)

ダウンロードしたwslファイルをダブルクリックしてもインストールできる

Ubuntu Insights

WSLで26.04を初めて起動すると、ユーザーアカウントの作成の後に以下のメッセージが表示されます。

Help improve Ubuntu!

Help us improve Ubuntu features and compatibility by sharing system reports with Canonical.
Reports are sent anonymously and do not contain any personal data.
For legal details, please visit: https://ubuntu.com/legal/systems-information-notice

We will save your answer to Windows and will only ask you once.

Would you like to opt-in to platform metrics collection (Y/n)? To see an example of the data collected, enter 'e'.
[Y/n/e]: y

これは「Ubuntu Insights」と呼ばれるもので、ハードウェア情報やその他の収集されたメトリクスをレポートするためのツールです。初回起動時にシステムメトリクス収集へのオプトインを求められるので、許可する場合は「y」を、拒否する場合は「n」を入力して[Enter]キーを押してください。

オプトイン方式のため、ここで明示的に許可しない限り情報の送信は行いませんが、レポートの送信はUbuntuの改善に役立つため、可能であれば利用を検討してみてください。なお個人を特定するような情報は送信されないので安心してください。

現在Ubuntu InsightsはWSL上のUbuntuと統合されており、この選択はWindows側に保持されます。そのため以降は26.04を別名でセットアップしたとしても、繰り返し確認する必要はありません。

24.04からの変更点

Ubuntu 26.04 LTSにおける詳しい変更点はリリースノートを参照してください。ここではWSLユーザーに影響しそうな変更点のいくつかを紹介します。

Chrony

コンピューターの内部には時計があり、時刻の記録はこの時計をもとに行われています。この時計がズレているとファイルの作成日時やログが記録された時刻が信用できなくなってしまうため、時計の正確性はとても重要です。サーバーとクライアントで時刻がずれていると、システムが正しく動作しなくなることも珍しくありません。

ネットワークを経由して自動的に時刻を同期するプロトコルが「NTP」です。従来UbuntuではNTPデーモンとしてsystemd-timesyncdが使われていましたが、26.04ではこれに代わって「Chrony」が使用されるようになりました。

24.04では「timedatectl timesync-status」で時刻の同期状況を確認していました。

$ timedatectl timesync-status
       Server: 185.125.190.56 (ntp.ubuntu.com)
Poll interval: 32s (min: 32s; max 34min 8s)
         Leap: normal
      Version: 4
      Stratum: 2
    Reference: 928379F6
    Precision: 1us (-25)
Root distance: 3.180ms (max: 5s)
       Offset: +730.269ms
        Delay: 222.534ms
       Jitter: 676.748ms
 Packet count: 4
    Frequency: +2.251ppm

26.04では、以下のように「chronyc tarcking」や「chronyc sources」コマンドを使います。

$ chronyc tracking 
Reference ID    : B97DBE7A (ntp-nts-2.ps5.canonical.com)
Stratum         : 3
Ref time (UTC)  : Wed Apr 22 06:42:53 2026
System time     : 0.003135183 seconds fast of NTP time
Last offset     : -0.000009408 seconds
RMS offset      : 0.000788921 seconds
Frequency       : 13.893 ppm slow
Residual freq   : -0.004 ppm
Skew            : 0.117 ppm
Root delay      : 0.234787434 seconds
Root dispersion : 0.001554277 seconds
Update interval : 1026.2 seconds
Leap status     : Normal

$ chronyc sources
MS Name/IP address         Stratum Poll Reach LastRx Last sample               
===============================================================================
^* ntp-nts-2.ps5.canonical.>     2  10   377   786    +18ms[  +18ms] +/-  118ms
^+ ntp-nts-3.ps5.canonical.>     2  10   377   885    +17ms[  +17ms] +/-  117ms
^+ ntp-nts-2.ps6.canonical.>     2  10   377   908    -25ms[  -25ms] +/-  183ms
^+ ntp-nts-3.ps6.canonical.>     2  10   377   894    -34ms[  -34ms] +/-  174ms
^- ntp-nts-1.ps5.canonical.>     2  10   377   107    +23ms[  +23ms] +/-  122ms

ChronyはデフォルトでUbuntuのNTPサーバーと時刻を同期します。LAN内のNTPサーバーなど、別の時刻ソースを追加したい場合は以下のコマンドを実行してください。

$ echo 'server サーバーのアドレス iburst' | sudo tee /etc/chrony/sources.d/local-ntp-server.sources
$ sudo  chronyc reload sources

Coreutilsの変更

第6回で解説したように、一般的にLinuxディストリビューションには基礎コマンド群として「GNU Coreutils」が含まれていますが、近年は「これらのコマンドを現代的に作り直そう」という機運が高まってきました。Coreutilsに含まれるコマンドは歴史が長く成熟しているものの、C言語ベースのためメモリ安全性の問題があります。その歴史的な背景からコードも巨大で複雑化しており、Windowsをはじめとするクロスプラットフォーム対応も弱いなど「今どきのツールとしてはちょっと…」という部分が否めないためです。

そこで「より現代的なCoreutilsを作る」という思想のもと、Rust言語で再実装を行っているプロジェクトがuutils coreutilsです。そして、Ubuntu 26.04ではデフォルトで使用されるCoreutilsがuutils版に変更されました*2

例えば、「/usr/bin/cat」コマンドは「/usr/lib/cargo/bin/coreutils/cat」へのシンボリックリンクとなっています。同様に「ls」や「install」といったコマンドも/usr/lib/cargo/bin/coreutils以下の同名のコマンドへのリンクとなっています。これらの実体はrust-coreutilsパッケージにより提供されています。

$ ls -l /usr/bin/cat
lrwxrwxrwx 1 root root 30 Mar 30 16:50 /usr/bin/cat -> ../lib/cargo/bin/coreutils/cat

uutils coreutilsはGNU coreutilsとの完全互換を目標にしています。同じ名前のコマンドが同じオプションを持っており、出力までも完全に一致する前提です。もし異なる挙動があれば、それはuutilsのバグとして扱われます。そのため実装が切り替わっていることを意識する必要はないのですが、現時点ではまだ100%の互換性があるとは言い切れません。そこでGNU版のCoreutilsも引き続きインストールされており、切り替えて使用できます。また何らかの理由でCoreutilsをGNU版に戻したい場合は、以下のコマンドを実行してください。

$ sudo apt install -y coreutils-from-gnu coreutils-from-uutils- --allow-remove-essential

GNU版のバイナリはgnu-coreutilsパッケージで提供されており、/usr/bin以下に「gnu〜」というprefixつきでインストールされています。coreutils-from-uutilsパッケージをcoreutils-from-gnuと入れ替えることで、以下のようにシンボリックリンクの貼り替えが行われます。

$ ls -l /usr/bin/cat
lrwxrwxrwx 1 root root 6 Mar 30 16:50 /usr/bin/cat -> gnucat

*2: ただしrmやcpなど、いくつかのコマンドはGNU版を使うようになっています。

sudoの変更

主にrootに昇格するためのツールであるsudoも、Rust実装であるsudo-rsに変更されました。これに伴い、従来のsudoは「sudo.ws」に名称が変更されています。従来のsudoと基本的な使い方は同一です。ただし、sudo-rsはデフォルトで実行時にパスワードのエコーバック(入力したパスワードが*のようにマスクして表示されること)を行うようになりました。

sudoを実行した例。26.04では入力したパスワードがエコーバックされる

エコーバックを行うと画面を覗き込んだ人に入力したパスワードの文字数がバレてしまうという問題があるため、従来ではセキュリティに配慮しパスワードのエコーバックは行われていませんでした。しかし、それにより初心者が「sudoのパスワード入力欄にパスワードを入力できない」と慌ててしまうケースも非常に多く、この風景はLinux初心者あるあるとなっています。

なぜ初心者がそのように感じるかと言えば、世の中に存在するほとんどのパスワード入力欄はエコーバックを行うためです。そこでsudoではセキュリティとユーザーエクスペリエンスを天秤にかけた結果、他のパスワード入力欄にならってエコーバックを行う方向に舵を切ったというわけです。

なお、エコーバックをさせたくない場合は、以下のコマンドを実行してください。

$ echo 'Defaults !pwfeedback' | sudo tee /etc/sudoers.d/pwfeedback

従来のsudoも引き続きインストールされており、Coreutils同様に切り替えて使用できます。sudo-rsではなく、従来のsudoに戻したい場合は以下のコマンドを実行してください。

$ sudo update-alternatives --set sudo /usr/bin/sudo.ws

strace

straceとは、Linuxにおいてプログラムがどのようなシステムコールを呼び出しているかを追跡するためのデバッグツールです。例えば、プログラムに設定が正しく反映されていないような時に、そのプロセスが設定ファイルを正しく読み込んでいるか(そのファイルをopen/readしているか)を調べるといった具合です。

26.04ではstraceコマンドの出力がカラー表示に対応しました。地味な変更ではありますが、よく利用する開発者にとっては嬉しい点ではないでしょうか。

24.04のstrace

カラー表示に対応した26.04のstrace

おわりに

2年ぶりのLTSリリースに伴い、これから各所で新バージョンへの更新が行われるでしょう。既存の環境はそのままに、新しい環境を気軽に立ち上げられるのがWSLのメリットの1つです。ぜひ、お手元の環境でも試してみてください。

29回にわたってWindowsユーザー向けにLinuxの活用方法を解説してきた本連載ですが、今回をもって一旦終了となります。WSL固有の事情も含めて、初学者に伝えたいことは一通り伝えられたかなと感じています。とは言え、こうした知識は日常的に使い続けないとすぐに忘れてしまうものです。これからもWSLを上手く活用して、ぜひ日常的にLinuxの利用を継続してください。

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