第3回:原価企画の観点から見るコスト情報の可視化 (1/3)

経営の可視化
企業活動と経営の可視化

第3回:原価企画の観点から見るコスト情報の可視化

著者:オープンストリーム  赤穂 満   2007/3/20
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求められる一段階上の企業体制作り

   多くの企業では環境問題への対応や安全性の向上、利便性の追及など、先端分野での開発競争でしのぎを削り、各業界内におけるコスト競争は熾烈を極めている。また製品ライフサイクルの短期化に加え、販売価格の継続的下落や海外企業の台頭などの背景から、利益確保が難しくなっているのが現状である。

   そのような中、積み上げたコストを後から改善していくという従来型の原価低減策では、もはや生き残りは絶望的であるといえる。そのため従来の原価企画活動を底上げし、「先を見据えた製品企画」や「戦略的な調達」などとともに、一段階上の体制作りが急務となっている。

   今回は一段階上の体制作りとして、原価企画をベースに企業内でのコストシェアリングを行う仕組みについて解説していく。

原価企画の考え方

   原価企画の定義は「製品の企画・設計段階を中心にして、コストの最小化を目標に、技術/生産/販売/購買/経理などの企業内における関係部署の総意を結集し、総合的な原価低減と利益管理に取り組むこと」である。

   これは、製品原価について製品企画段階でその目標コストを設定しておき、各関係部署でその達成に向けた活動を行っていこうとするものである。製品ライフサイクルコストの80%は、製品企画・開発段階で確定するといわれており、この時点での取り組みによって、原価低減を効率的に達成することが可能となる。

コストの確定と発生状況について
図1:コストの確定と発生状況について

   原価企画の考え方では、顧客ニーズと市場価格を出発点として定めた目標売上高から目標利益を達成するための計画が設定される。その際に、製品別に設定した目標コストを「機能別」「部品別」「担当者別」「原価費目別」に分解して、それぞれの見積り原価が目標コストに到達するまで原価低減活動を行い、目標コストを作り込んでいくことになる。これは関係部署の協力がないと達成困難な活動である。

   それでは、製品開発の例を元に、原価企画の考え方をどのように適用していくかについて解説する。


原価企画とコストマネジメント

   製品開発のバリューチェーンにそった原価企画の考え方を適用したものを図2に示す。

コストマネジメント
図2:コストマネジメント
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   ここでは製品企画の段階で開発コストを設定し、「開発 → 設計 → 生産 → 販売」という流れの中で各部門に対して、それぞれコスト配分を行っている。これは製品について各部門が管理する目標コストといわれるものである。

   設計や生産部門は、この目標コストに応じた原価低減活動を展開しながら生産活動を実施していくことで、当初の想定した目標コストを維持していくことが可能となる。さらに、これら一連の結果を次の新製品開発時に活かすことによって、企業としての見積り精度の向上をはかることが可能となる。

   また、コストマネジメントを行う際の前提条件として、先ほど述べた製品別に設定した目標コストを4つに分解して作り込んでいく必要がある。

   ここまでで、従来の原価企画を底上げした生産体制について解説した。ではその適用範囲はどのような分野があるだろうか。次に適用事例を紹介する。

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株式会社オープンストリーム  赤穂 満
著者プロフィール
株式会社オープンストリーム  赤穂 満
サービス推進兼SAXICE推進担当 統括ディレクタ
活動状況:これまでに、製品ライフサイクル、製品構成情報管理やビジネスモデルなどに関する解説記事、論文多数。
所属学会:日本設計工学会、経営情報学会、ビジネスモデル学会、正会員。


INDEX
第3回:原価企画の観点から見るコスト情報の可視化
求められる一段階上の企業体制作り
  原価企画の適用事例
  原価企画の将来
企業活動と経営の可視化
第1回 企業の生産活動をどのように可視化していくか
第2回 製品ライフサイクルの観点から見る製品情報の可視化
第3回 原価企画の観点から見るコスト情報の可視化
第4回 戦略的調達の視点から見る調達情報の可視化
第5回 経営の可視化の実現策

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