思考を変える“会議での雑談”

2017年6月6日(火)
大倉 利晴(おおくら・としはる)三好 康之(みよし・やすゆき)

はじめに

今回のタイトルを見て、もしかしたら「会議や打ち合わせで雑談なんて、とてもできない!」と思った方も大勢いらっしゃるでしょう。それはそうですね。雑談というと「無駄話」や「関係ない話」と思われがちですからね。

でも、ザッツ談なら会議とか打ち合わせのインターバルやちょうど良い息抜きになって、その後の会議が捗ることだってあるんですよ。ただし、まったくとっぴな話を始めてはいけません。「お前何言っているんだよ」となりかねませんからね。でも、その場の空気を察し、さりげなく会議内容と関係あるクエスチョンであれば、相手も考えやすく話を返しやすい良い形の雑談になって言葉のキャッチボールが始まることもあります。

バラエティ番組の企画構成会議での出来事

私の経験談をお話ししましょう。その日、“世界の面白ゴルフ場”という番組の立ち上げに集まったのはプロデューサー・ディレクター・アシスタントディレクター、そして放送作家の私でした。

ロケ地の1つに上がったのは“国境のあるゴルフ場”。みなさん、ちょっとどんなゴルフ場か想像できますか?

それは、北欧のフィンランドにありました。お隣の国はスウェーデン。フィンランドとスウェーデンの2か国に跨るゴルフ場は世界でも多分「ここにしかない!」ということで、ロケ地に決定しました。

会議では出演者決めはもちろん、番組構成案を出し合いましたが、2時間が過ぎたころに煮詰まりかけました。煮詰まるには「十分に考え意見が交わされて結論が出る状態」という本来の意味と、「良い考えが出なくなり、時間だけが経過して行き詰まり、『さてどうしようか』『何かない?』」という、まったく相反する意味があります。芸能界では、後者の意味で使っていました。その時私は、会議内容と繋がりのあるクエスチョンが浮かんだので、「何かない?」と聞かれる前に話し始めました。

:「ロケに行くフィンランドって北極圏の白夜の国ですよね」
ディレクター:「初夏で夜遅くなっても明るいはずだから、たっぷりロケができるよ」

実に良い言葉のキャッチボールが始まりました。フィンランドには誰も行ったことがなかったので、私が思いついた疑問をみんなに返しました。

:「白夜って太陽はどう動いているんですかね?」
ディレクター:「太陽は高いところでじっとしているんじゃない?」
プロデューサー:「沈みかけて、瞬きした瞬間にぱっと東に戻るってどう?」

と、さらに話が広がりました。結果的に、この仕事に関係する雑談は良い息抜きになりました。

シャレっぽい答えや大喜利のようなやり取りの後、結論は「調べるのはやめよう」「フィンランドに行って確かめよう」という事になりました。ロケの楽しみが増えました。そして、それからの打ち合わせは良い意味の(本来の意味とされる)煮詰まるになったのです。

【解説】ビジネススキルとしての“雑談力”(三好)

今回は“会議での雑談”ですね。

形骸化した会議がいかに多いか

私がITコンサルタントとしてユーザ企業のプロジェクトに入っている時、システム開発を依頼しているITベンダから提出される見積りやプロジェクト計画書の妥当性確認をするケースが多いのですが、その時に必ず説明を求めているのが「会議」の意図と内容です。「どういう人を集めて」「何人で」「開催の意図は何か」「その会議の成果物は何か」をじっくりヒアリングします。というのも、システム開発プロジェクトの会議は形骸化して、ただの報告会や情報共有の場にしかなっていないことが多いからです。信じられないでしょうが、「いつもこうしているので」と答えるPMなんかもいて、その開催意義が全く理解できていないんですよね。

少し勉強すれば分かると思いますが、ただの報告、連絡、情報共有なら会議体にする必要はありません。プロジェクトマネジメントの管理ツールでできます。履歴も残るし、議事録もとらなくても良いので大幅にコストを削減できます。

要するに、顧客が出す“その会議にかかるコスト”の価値を説明できない会議は形骸化しているということです。問題意識もなくそんな会議を開催しているPMは生産性に関する意識が低いわけですから、そんな人には任せたくないですよね。調達先の選定(コンペ)をしている時なら、まず落としています。「一事が万事」とはこういうところに出てきますから。

今求められる会議開催の狙い

問題意識もなく形骸化した会議を開催している主催者(PM等)に限って、こんなことを言います。

「ほら、しょーもない無駄話ばかりしていないで、さっさと始めよう!」

笑えますよね。無駄なことをしていると自覚しているから、さっさと終わらせたい。だから本論だけで淡々と進めていこうと。報告会なのに(笑)。人の時間を奪うのなら、もっと勉強してほしいですよね。

今は、時間や場所の制約を受けない非同期のコミュニケーションツールがいくらでもあります。音声入力も十分実用化できるレベルですし、音声や動画で残せば感情も伝えられます。したがって、次のような理由がない限り、皆が同じ時間、同じ場所に集う必要はないのです。

  • リアルタイムに双方向の会話が必要な時(チャットよりも効率が良い場合に限定)
  • 対面して会話が必要な時
  • 会って士気やモチベーションを高める時

今の時代、基本的に人が時間と場所を共有する必要(会議に限らず)があるのは、電話やメール、LINEよりも会った方が効果的な場合に限られるんです。少なくともビジネスの世界では。

システム開発の現場でも同じです。お金を出す顧客の立場からすると、そこで相手のPMの誠意が分かります。いくら顧客の前で低姿勢に笑顔で取り繕っていようと、「どうせ客のだから良いよな。使っちゃえ!」というスタンスが見え隠れしますからね。仮にそう思っていなくても、無神経だというのは間違いありません。たかが“会議”のことですが、そんなPMは信用できません。

“雑談”は生産性低下ではない

逆に、会議が必要なのは次のような理由があるときです。

  • 非同期では生産性が悪くなる(時間的猶予がない)問題解決の場、意思決定の場
  • 感情に訴えかける時(士気を高める、モチベーションアップ)

相手が怒り狂っている時なんかも同じです。「怖いから」と言って避けているから火に油。逆に相手との距離を詰める。相手の目の前で謝罪するのが一番ですよね。電話やメールでは過激に振舞えても目の前でも同じようにできる人は案外少ないので、怒りのトーンも収まってくることが多いわけです。

そう考えると、真の会議における“雑談”のテクニックの重要性が分かりますよね。決して、雑談=無駄話=生産性低下ではありませんから。

感情に訴えかける時は、緩急を使い分けなければなりません。本題や真面目な話だけでは緊張感が増すだけなので、そこで雑談を挟む。

問題解決の場では、大倉さんの話にあるように煮詰まる可能性があります。いわゆる「堂々巡り」です。そこで雑談が活きてくる。新しい視点を提供できたりもします。意思決定の場でも同じです。雑談がフェイントにもなるし、感情変化を促すこともできる。

僕自身もベンダ側の開催する会議を傍観させてもらうことがありますが、その時に雑談を上手く挟んでくれていると(つまり緩急を付けたり、視野を広げたり)、安心するんですね。それが必要な会議であることが大前提ですが、それさえ担保できていれば、別の話(雑談)で盛り上がっていても「無駄口を叩くな!」とは絶対に言いません。研修のグループディスカッションもブレストの意見出しも同じです。雑談が良い潤滑油になるんです。

そういう意味で、改めて「会議での雑談」を考えてみてください。“そこで士気を高めたい”という明確な目的があるのなら、表向きは報告会でも構いません。ただし、「程度が大事」なのは言うまでもありませんからね。

著者
大倉 利晴(おおくら・としはる)
フリーの放送作家。過去に萩本欽一氏に師事していた経歴を持つ大御所。テレビ・ラジオの企画構成をはじめ、ラジオのパーソナリティ、テレビ出演、講演、作詞などを行っている。主な構成番組は「欽ちゃんのどこまでやるの」「オレたちひょうきん族」「笑っていいとも」「クイズ100人に聞きました」他多数。他に「M-1グランプリ」の予備審査員なども務める。
著者
三好 康之(みよし・やすゆき)
株式会社エムズネット代表

IT 関連企業又は、企業の情報処理部門専門コンサルタント。加えて、大手SE 向けの資格取得講座や階層教育を担当。高度情報処理技術者試験対策講座では驚異の合格率を誇る。情報処理全区分制覇他資格多数。『情報処理教科書プロジェクトマネージャ』(翔泳社)など著書も多数。全国の優秀なITエンジニアを参画するプロフェッショナル集団、ITのプロ46代表も務める。
e-mail:miyoshi@msnet.jp
URL:www.msnet.jp

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