レタッチャーってどんな仕事?
レタッチャーのワークフロー
デジタルカメラが劇的に普及し、写真が身近で手軽になったおかげか「フォトレタッチ」という言葉を知っている人もだいぶ増えたのではないでしょうか。写真をデータとして保存し、誰もが自宅で簡単にプリントまで楽しめるようになると、次は自分で写真を補正や修整したいと思う人も少なくないと思います。
そんなデジタルフォトレタッチ職人(通称:レタッチャー)の仕事に就いて8年目になりますが、今回は、そんなレタッチャーのメインアプリケーションであるAdobe Photoshopを中心に、全5回にわたり紹介します。
筆者が主にレタッチしている媒体は、広告、ファッション誌やカタログ、CDジャケットなどになります。「レタッチ」と聞くと「修整」というイメージを持つ方も少なくないと思いますが、筆者を含めレタッチャーと呼ばれるみなさんは、修整にとどまらずデジタルならではのレタッチで写真にプラスαを加えビジュアルとしてのクオリティーを上げる事を目指しています。
オファーは、カメラマンやAD、制作会社、編集やライターからいただく事が多いです。すべてではありませんが、合成などがある程度レタッチで作り込んでいくビジュアルや、アーティスティックな絵を作る時は打ち合わせから参加し、レタッチャーの立場から提案もします。
被写体の影の方向や角度、また合成するもの同士のピントの位置などで仕上がりのクオリティーは変わるので、事前の打ち合わせは重要です。もちろん可能であれば、撮影当日に現場に行って雰囲気をつかんだりイメージを共有したり、実際にテスト合成やトーン調整などもしながらおおよそのイメージを詰めていく事もあります。撮り終えた写真データを預かり、セレクト決定後にレタッチに入ります。
レタッチチェックは立ち会いも可能ですので、納品前に確認していただきながら最終の詰めのレタッチを行います。段階を踏んでチェックが必要な場合は、サーバを介してデータの確認をお願いする事も多くなりました。メール添付でも不可能ではないのですが、できるかぎり実データに近いサイズ、状態でチェックをお願いしたいためです。こうしてOKをいただいたら納品です。納品はTIFFまたはPSD形式のRGBデータで保存し、データと共に色見本としてインクジェットプリントを同封します。
ここまでがおおよそのワークフローになります。
レタッチの心構え
レタッチャーとして、筆者が特に大事にしている事は3つあります。
1つ目は、オリジナルの写真をよく観察する事です。Photoshopでいろんな事ができてしまうからこそ、オリジナルが持っている色や階調、また質感などの情報を無駄にしない事を心がけています。
2つ目は、違和感を残さない事です。違和感にはいろいろありますが、例えばトーンに違和感を感じる時は必ずどこかに無駄な色を発生させていたり、または無理な調整をしている事が多いです。
3つ目は、レタッチャーはその仕事にかかわるカメラマン、アートディレクター、プロデューサー、ライターなどの間に立ち仕事を進める事になりますので、レタッチ自体は1人こもって行いますが、コミュニケーション力はとても重要です。
次のページでは、レタッチに必要な機材を紹介します。