複雑化する要素技術

2010年1月20日(水)
長岡 諒

Webサイト構築で考えなければいけないこと

Webサイト構築は、業務システム構築と同様に、多岐にわたる技術が必要になります。これはWebサイト構築と業務システム構築の共通点です。一方、Webサイト構築と業務システム構築とでは、大きく異なる点もあります。それは、Webサイト構築の多くは、短期間で見栄えの良いものを開発しないといけない、ということです。

業務システム構築の場合、アジャイル開発こそあれ、ある程度要件が決まった状態での開発となります。一方、Webサイト構築の多くは、顧客がシステム開発について知らないことも多いため、実際にある程度まで製作した後に、細かい修正が頻ぱんに発生することも事実です。これは、作ったWebサイトが顧客のイメージに合わなかったり、意思の疎通ができていなかったりすることによります。

Webサイト構築ならではの大変さもあります。米国の調査会社であるAberdeen Groupが出したレポートによると、Webサイトの表示速度が「1秒遅く」なるとページ・ビューは「11%減少」し、コンバージョン(商品購入などの取引に結び付いた訪問者の割合)は「7%減少」し、顧客満足度は「16%低下」するといったことが報告されています。さまざまな要素を考慮してWebサイトを構築しなければならないというわけです。

今回は、業務システムを手掛けるエンジニアが仕事でWebサイト構築に関わることになったときにぶつかりやすい壁/課題のいくつかを、事例をもとに紹介し、どのようにしてこれらの壁/課題を乗り越えてWebサイトを構築していったのかを解説します。なお、本記事で取り上げる事例は、筆者が経験した事例を基に再構成したものであり、現実の会社/プロジェクトとは直接関係ないことをあらかじめお断りしておきます。

初めてのWebサイト構築の現場で

今回取り上げるのは、あるITベンチャーが受注した、カタログ・サイト構築のプロジェクトです。このITベンチャーでは主に中規模業務システムを手掛けていたのですが、昨今の不況の影響で業務システムの受注が減ってしまい、単価を下げてでも案件を受注することが急務でした。

今回のカタログ・サイトの構築もしかりで、このITベンチャーの単価としてはかなり低い部類だったのですが、人材を余らせておくよりは、安くてもいいから受注して人材を稼働させた方がいいという経営的な判断から、受注することにしました。

リリースまでの期間は3カ月と短期です。プロジェクト・リーダーには、学生時代にアルバイトでWebサイト構築に携わり、Web関連の言語には一通り触ったことがある人材が就任しました。Webサイトのデザインは、社内にデザイナーがいないため外注に。ほかにプログラマーとして、社会人2年目の新人エンジニアがプロジェクト・メンバーに選ばれました。

プログラマーを担当する新人エンジニアは、社会人になってからJava言語を学びました。今回のプロジェクトは、開発案件を1つ経験した後の、2件目のプロジェクトになります。当然、Webサイトなどは作ったこともありませんでしたが、Webサイト開発を経験したほうがよいというOJT(On-the-Job Training)の意味もあり、メンバーに選ばれました。

早速、プロジェクト・リーダーと新人プログラマーの2人は、発注元にヒアリングをしに行きました。発注元は中堅化粧品メーカーで、もともとは訪問販売をメインにしていたのですが、最近になってオンライン・ショッピング・モールで販売をしてみたところ売り上げが上がったため、カタログ・サイトを作って相乗効果を高めたいという狙いがありました。

商品数は多くなく、ショッピング・カート機能はサイトの外部に出しているため、サイトのボリュームとしてはそれほど大きくはありません。カタログ・サイトの大まかなイメージをヒアリングし、「トップ・ページには“おしゃれ”な商品検索/比較機能が欲しい」といった要望を聞いて、(キック・オフ・ミーティングは時間も限られていたため)社内に持ち帰って検討してみることになりました。

次ページからは、同プロジェクトが開発フェーズに至るまでの過程を解説します。最近のWebサイト開発では、豊富なオープンソースによって開発が容易となっていますが、一方で、それらを慎重に選定する必要があります。

ウルシステムズ株式会社
ウルシステムズ株式会社 コンサルタント。2009年より現職。昨年はフレームワークのテストチームで自動化業務に携わり、今年はそのフレームワークの開発側となる。昨年は毛嫌いしていたJavaを習得してしまったので、今年は関数型言語に手を出そうかと考え中。
http://www.ulsystems.co.jp/

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