カンファレンスの前にGitHubのオフィスを探訪
ソースコードリポジトリーサービスを提供するGitHubが、サンフランシスコで年次のカンファレンスを開催し、約1700人の参加者に向けて、新しいサービス、人工知能の応用などについて発表を行った。
「GitHub Universe 2017」と題されたカンファレンスは、今年で3回目となる。カンファレンスに先立ってサンフランシスコ市内にあるGitHubの本社にて、インターナショナルプレス向けのブリーフィングが行われた。
このブリーフィングでは、日本で筆者が今年6月にインタビューを行ったJulio Avalos(フリオ・アバロス)氏がプレゼンテーションと質疑応答を行った。
まずAvalos氏はGitHubが創立以来10年めを迎えた今年から過去を振り返り、この10年の歴史を解説した。Avalos氏によれば、入社したのは5年前で、その当時、エンジニアではない社員の第一号だったという。当時の社員数は140名程度、またほとんどの社員がエンジニアで、GitHubを使ってGitHub自身を開発するという状況だったという。当時からGitHubを使ったコミュニケーションやコラボレーションを通じて、ソフトウェアだけではない共同作業が行われており、それがGitHubのユニークな発想を生み出していると言う。特に「GitHubの社員は、まずGitHubのユーザーであることが最初にあって、それがたまたまプログラマーや弁護士などの職種を持っている」べきだと説明した。ここは、前回のインタビューでも強調された内容だ。
参考:Julio Avalos氏のインタビュー記事 GitHubのチーフビジネスオフィサーがGitHub自身の変革について語る
大企業がデジタルトランスフォーメーションを成し遂げるためにはカルチャーの変革が必要であり、そのためにはGitHubは良い例になるだろうと語った。またこれまでのモノリシックなアプリケーション対マイクロサービス、オンプレミス対クラウド、エンタープライズ対ベンチャーのような対立関係は意味がなくなり、そのかわりにハイブリッドな環境を実現できるプラットフォームやツールセットを使いこなす必要があると説明した。
続いて、GitHubの本社を紹介するオフィスツアーが実施された。最近になって拡張された新しいオフィススペースの紹介も含めて、まだGitHub本社の概要を知らないメディア関係者に知ってもらうための機会ということだ。
最初は、エントランスから紹介が始まった。2年前に訪れた時はホワイトハウスのオーバルオフィスを真似た受付があったが、それはなくなっており、ランチやミートアップなどに使える巨大な多目的スペースになっていた。しかし壁際にあるバーカウンターは健在で、オフを重要視するGitHubの姿勢が表れている。
「GitHubといえばOctocat」と言われるように、日本でもファンの多いキャラクターだ(Octocatは種族名で、マスコットの名前は「モナリザ」)。GitHubの本社にはショップがあり、訪れる人はここでTシャツやマグなどを買うことができる。壁にはこれまでに作られたTシャツのコレクションが飾られている。
GitHubは組織拡大に伴って、隣のビルにもオフィスを拡張した。これも既存の建物と同様の古いレンガ作りのビルで、隣に接する壁をぶち抜いて既存のオフィスと連結したという。そのスペースの一部は、図書館を模したデザインとなっている。
他に、一人用のリラックスできそうなスペースも用意されている。いかにも集中できそうなインテリアだ。
ほのかに暗い照明と静かな室内は、まさに図書館。新しくできたこのスペースが好きな社員は多いそうだ。
書籍も多く用意されており、動物の表紙で有名なO'Reillyの本もコレクションに入っていたし、変わったところでは村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」も置かれていた。
いかにもダイバーシティを重んじるGitHubらしいと思ったのは、最近、日本でも公開されたNASAのマーキュリー計画で働いた黒人女性エンジニアを描いた映画、「ドリーム」(本題:Hidden Figures)でも描かれていたIBMのメインフレームを無断で使いこなした管理職であったDorothy Vaughan(ドロシー・ヴォーン)の胸像が置かれていたことだろう。他にもCOBOLを作ったGrace Hopperや、Ada言語の名前にも使われたAda Lovelaceなどの胸像が飾られていた。
個別のミーティングスペースも、雰囲気に合わせてデザインされている。
サンフランシスコ市内はオフィスやアパートの家賃が高騰して、東京を超えるレベルのコストになっている。シリコンバレーのIT企業も慢性の渋滞とコスト高騰で、シリコンバレーにオフィスを置くと社員が集められないという話はすでにご存知だろう。
そこでコストは高くても通勤の楽さを取って、サンフランシスコ市内にオフィスを構えるケースが増えている。GitHubにも自転車で通勤する社員が多くおり、また幼児を遊ばせるスペースを設けたり、犬をオフィスに連れていけたりするなど、サンフランシスコのワークスタイルを体現したようなオフィス環境を用意している。実際にはこの本社に出社する社員以外にも、リモートで働く社員が多く存在するという。社員同士のコミュニケーションとコラボレーションをGitHubで行うスタイル、マイクロソフト的に言えば「ドッグフードを自分で食べるDogfooding」を行っている企業として、最も成功しているのではないだろうか。常に働きやすさの追求を止めない新しいオフィススペースのインテリアを見て、そんな感想を抱いた。
この後は、GitHub Universe 2017のセッション、インタビューなどを連載の形でお届けしたいと思う。
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