事例から見るvSAN採用の決め手

2017年11月14日(火)
小林 栄治
VMware社のSDSであるvSANが採用されるポイントを、実際の事例から紹介する。

vSAN採用の決め手はなんだったのか

前回は「vSAN最新情報」と題し、進化を続けるvSANの最新情報を紹介しました。今回は、実際にvSANの採用を決めた3社のお客様の声をご紹介します。

A社「ストレージ管理の外注費用がゼロになりました」

お客様情報

  • 業種:不動産業
  • 用途:業務系仮想基盤
  • 既存環境:iSCSI
  • 他に検討していたストレージ:FC-SAN

お客様が抱えていた課題

これまで仮想基盤の管理は、自社の情報システム部が担当していましたが、ストレージの設定変更や構成変更については、専門スキルが求められるため、構築ベンダへの外注となっていました。本基盤は利用部門からの変更要望が頻繁にあるため、外注費用もさることながら、変更要望があるたびに見積りを取り、稟議、決裁、発注という社内フローを回すだけでも一苦労でした。

vSANを採用することでどう解決したか

vSANを導入することで、日々の仮想マシン管理で慣れ親しんだvSphere Web Clientからストレージの管理が行えるようになりました。vSANの操作は簡単で、領域を拡張するために必要な手順が数クリックで完了するなど、ストレージの管理が仮想マシン管理と同等レベルの作業となったことで、これまで外注していた作業を情報システム部にて実施できるようになりました。このことにより、ストレージ管理に関する外注費用がゼロになりましたし、増え続ける利用部門からの変更要望に対して、いち早く対応することが可能となりました。

vSphere Web ClientよりvSANを管理

vSphere Web ClientよりvSANを管理

また、vSAN導入と合わせてvROps(vRealize Operations)の導入を行いました。vROpsによりハイパーバイザー、ゲストマシン、ネットワーク、ストレージなど仮想基盤のあらゆるコンポーネントを監視し、グラフィカルなUIで管理することが可能となりました。

vROpsを活用することで、リソースが枯渇するタイミングを把握し、またリソース追加の影響を事前にシミュレーションできますので、当社のような頻繁に追加が発生する基盤では、vSANとvROpsを組み合わせて利用することは基盤全体のリソース不足の発生リスクを軽減するために非常に有効だと感じています。

vROpsでリソース利用状況を元にリソース枯渇タイミングを把握できる

vROpsでリソース利用状況を元にリソース枯渇タイミングを把握できる

リソース追加のシミュレーションイメージ

リソース追加のシミュレーションイメージ

B社「適正な投資コストでスモールスタートできました」

お客様情報

  • 業種:金融業
  • 用途:VDI
  • 既存環境:通常のデスクトップ
  • 他に検討していたストレージ:FC-SAN、iSCSI

お客様が抱えていた課題

ワークスタイルの一環として、VDI(Virtual Desktop Infrastructure、仮想デスクトップ基盤)を検討していましたが、以下に示す2つの課題から導入に踏み切れていませんでした。

1つ目の課題は、イニシャルコストです。当社ではVDIの展開について、まず試験的な利用を行った後に全社展開するという計画であったため、スモールスタートをしたいと考えていました。しかし、初期導入のハードウェアを全社展開時に利用することを前提とすると、ディスク拡張領域が大きく、高い信頼性とI/O性能を有するエンタープライズの筐体を調達する必要があり、イニシャルコストが高くなってしまうという課題がありました。

2つ目の課題は、ディスク追加時のコストです。ストレージの拡張を繰り返すと、どこかのタイミングでエンクロージャーの追加や、コントローラーの交換などで過大なコストが掛かってしまうということも大きな課題でした。

vSANを採用することでどう解決したか

vSANはホスト追加をするだけでCPU、メモリなどのコンピュータリソースだけでなく、共有ストレージの容量、I/O性能を拡張することが可能です。そのため、導入のフェーズごとに必要なハードウェアリソースと性能を有する構成を組むことが可能となり、イニシャルコストを抑えられました。

また拡張が必要になった場合も一般的なx86サーバ用のディスクなので、ストレージ専用のディスクと比較して安価であるため、投資コストを適正にコントロールできたことが採用の決め手となりました。

vSANスケールアップ、スケールアウトイメージ

vSANスケールアップ、スケールアウトイメージ

参考:第2回:vSANのアーキテクチャーと機能概要

またvSANでは、ディスク追加時のオペレーションが非常に簡単であったこともポイントとなりました。

ディスク追加によるデータストア拡張

ディスク追加によるデータストア拡張

vSAN 6.5まではストレージへのディスク追加オプションに自動もしくは手動というパラメータがあり、自動としていた場合は、ディスクを追加すると自動でディスクグループに組み込まれてデータストアが拡張されました。

vSAN 6.6からはこのパラメータは手動のみとなりましたが、オペレーションは非常に簡単で、ディスクグループごとにどのディスクをキャッシュ、キャパシティに割り当てるのかを指定するだけで拡張することが可能です。

C社「エンタープライズストレージと変わりない機能」

お客様情報

  • 業種:製造業
  • 用途:情報系仮想基盤
  • 既存環境:物理サーバ
  • 他に検討していたストレージ:iSCSI

お客様の抱えていた課題

既存の情報系サーバ群は、物理サーバで構築されていました。ハードウェアの保守切れに伴い、サーバ仮想化を導入するということは早くに決まっていました。同時に昨今のトレンドであるHCI(Hyper-Converged Infrastructure)の採用を検討していたのですが、新しい技術であるSDS(Software-Defined Storage)の将来性に不安を感じていました。

vSANを採用することでどう解決したか

vSANは現在においても、半年に1回程度のペースで追加機能がリリースされています。導入を決めたタイミングでは、オールフラッシュ構成での重複排除、圧縮などエンタープライズストレージと比較しても遜色ない機能が搭載されました。このような機能追加の頻度や内容を知ることで、次世代のストレージにSDSが挙げられることを、より現実的に感じることができました。このことで、漠然と抱いていたSDSの将来性への不安が解消され、導入に踏み切りました。

また、vSANはアップデートが容易であることも採用へのポイントとなりました。vSphere、vSANを同時にアップデートできますので、仮想基盤、ストレージ間のコンパチビリティを確認、検証するなどの工数を大幅に削減することができました。

vSANの各バージョンで追加された機能

vSANの各バージョンで追加された機能

vSANのアップデートの流れ

vSANのアップデートの流れ

まとめ

今回、実際にvSANを採用されたお客様の声を3パターン紹介させていただきました。やはりvSANの大きな特徴である、管理性の向上、高い拡張性に加え、今なお進化が続く将来性がポイントとなったようです。

2014年3月のvSANの出荷開始から約3年、グローバルでは10,000社を超える企業で採用され、日本においても、金融機関や官公庁などの様々な業種で採用が加速しています。この背景には、今回ご紹介したような採用のポイントがあったものと考えます。

ただし、SDSによりストレージがサーバ化されていくとしても、お客様が「信頼できるストレージ」の条件である「可用性」、「性能」、「拡張性」、「運用性」を満たしているという前提があることを忘れてはいけません。

VMware社の発表によると、60%以上のお客様がビジネスクリティカルなアプリケーションの実行環境としてvSANを選択しているとのことです。これは、vSANが「信頼できるストレージ」であることの証明であり、今後もさらに多くのお客様がvSANを選定していただけるものと予測しています。

富士ソフト株式会社

富士ソフト株式会社でVMwareソリューションに関する提案から設計・導入まで幅広く従事している。 主にSDDC(Software-Defined Data Center)製品を担当しており、vSphere、NSX、vSANに注力している。 製品検証はもちろんのこと、セミナー登壇や記事寄稿なども行っている。

連載バックナンバー

ストレージ技術解説
第4回

事例から見るvSAN採用の決め手

2017/11/14
VMware社のSDSであるvSANが採用されるポイントを、実際の事例から紹介する。
ストレージ技術解説
第3回

vSAN最新情報

2017/6/23
連載3回目となる今回は、進化を続けるvSANの最新情報をご紹介する。
ストレージ技術解説
第2回

vSANのアーキテクチャーと機能概要

2017/5/31
VMware社のSDSであるvSANのアーキテクチャーと機能の概要を紹介する。

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