事例から見るvSAN採用の決め手
vSAN採用の決め手はなんだったのか
前回は「vSAN最新情報」と題し、進化を続けるvSANの最新情報を紹介しました。今回は、実際にvSANの採用を決めた3社のお客様の声をご紹介します。
A社「ストレージ管理の外注費用がゼロになりました」
お客様情報
- 業種:不動産業
- 用途:業務系仮想基盤
- 既存環境:iSCSI
- 他に検討していたストレージ:FC-SAN
お客様が抱えていた課題
これまで仮想基盤の管理は、自社の情報システム部が担当していましたが、ストレージの設定変更や構成変更については、専門スキルが求められるため、構築ベンダへの外注となっていました。本基盤は利用部門からの変更要望が頻繁にあるため、外注費用もさることながら、変更要望があるたびに見積りを取り、稟議、決裁、発注という社内フローを回すだけでも一苦労でした。
vSANを採用することでどう解決したか
vSANを導入することで、日々の仮想マシン管理で慣れ親しんだvSphere Web Clientからストレージの管理が行えるようになりました。vSANの操作は簡単で、領域を拡張するために必要な手順が数クリックで完了するなど、ストレージの管理が仮想マシン管理と同等レベルの作業となったことで、これまで外注していた作業を情報システム部にて実施できるようになりました。このことにより、ストレージ管理に関する外注費用がゼロになりましたし、増え続ける利用部門からの変更要望に対して、いち早く対応することが可能となりました。
また、vSAN導入と合わせてvROps(vRealize Operations)の導入を行いました。vROpsによりハイパーバイザー、ゲストマシン、ネットワーク、ストレージなど仮想基盤のあらゆるコンポーネントを監視し、グラフィカルなUIで管理することが可能となりました。
vROpsを活用することで、リソースが枯渇するタイミングを把握し、またリソース追加の影響を事前にシミュレーションできますので、当社のような頻繁に追加が発生する基盤では、vSANとvROpsを組み合わせて利用することは基盤全体のリソース不足の発生リスクを軽減するために非常に有効だと感じています。
B社「適正な投資コストでスモールスタートできました」
お客様情報
- 業種:金融業
- 用途:VDI
- 既存環境:通常のデスクトップ
- 他に検討していたストレージ:FC-SAN、iSCSI
お客様が抱えていた課題
ワークスタイルの一環として、VDI(Virtual Desktop Infrastructure、仮想デスクトップ基盤)を検討していましたが、以下に示す2つの課題から導入に踏み切れていませんでした。
1つ目の課題は、イニシャルコストです。当社ではVDIの展開について、まず試験的な利用を行った後に全社展開するという計画であったため、スモールスタートをしたいと考えていました。しかし、初期導入のハードウェアを全社展開時に利用することを前提とすると、ディスク拡張領域が大きく、高い信頼性とI/O性能を有するエンタープライズの筐体を調達する必要があり、イニシャルコストが高くなってしまうという課題がありました。
2つ目の課題は、ディスク追加時のコストです。ストレージの拡張を繰り返すと、どこかのタイミングでエンクロージャーの追加や、コントローラーの交換などで過大なコストが掛かってしまうということも大きな課題でした。
vSANを採用することでどう解決したか
vSANはホスト追加をするだけでCPU、メモリなどのコンピュータリソースだけでなく、共有ストレージの容量、I/O性能を拡張することが可能です。そのため、導入のフェーズごとに必要なハードウェアリソースと性能を有する構成を組むことが可能となり、イニシャルコストを抑えられました。
また拡張が必要になった場合も一般的なx86サーバ用のディスクなので、ストレージ専用のディスクと比較して安価であるため、投資コストを適正にコントロールできたことが採用の決め手となりました。
またvSANでは、ディスク追加時のオペレーションが非常に簡単であったこともポイントとなりました。
vSAN 6.5まではストレージへのディスク追加オプションに自動もしくは手動というパラメータがあり、自動としていた場合は、ディスクを追加すると自動でディスクグループに組み込まれてデータストアが拡張されました。
vSAN 6.6からはこのパラメータは手動のみとなりましたが、オペレーションは非常に簡単で、ディスクグループごとにどのディスクをキャッシュ、キャパシティに割り当てるのかを指定するだけで拡張することが可能です。
C社「エンタープライズストレージと変わりない機能」
お客様情報
- 業種:製造業
- 用途:情報系仮想基盤
- 既存環境:物理サーバ
- 他に検討していたストレージ:iSCSI
お客様の抱えていた課題
既存の情報系サーバ群は、物理サーバで構築されていました。ハードウェアの保守切れに伴い、サーバ仮想化を導入するということは早くに決まっていました。同時に昨今のトレンドであるHCI(Hyper-Converged Infrastructure)の採用を検討していたのですが、新しい技術であるSDS(Software-Defined Storage)の将来性に不安を感じていました。
vSANを採用することでどう解決したか
vSANは現在においても、半年に1回程度のペースで追加機能がリリースされています。導入を決めたタイミングでは、オールフラッシュ構成での重複排除、圧縮などエンタープライズストレージと比較しても遜色ない機能が搭載されました。このような機能追加の頻度や内容を知ることで、次世代のストレージにSDSが挙げられることを、より現実的に感じることができました。このことで、漠然と抱いていたSDSの将来性への不安が解消され、導入に踏み切りました。
また、vSANはアップデートが容易であることも採用へのポイントとなりました。vSphere、vSANを同時にアップデートできますので、仮想基盤、ストレージ間のコンパチビリティを確認、検証するなどの工数を大幅に削減することができました。
まとめ
今回、実際にvSANを採用されたお客様の声を3パターン紹介させていただきました。やはりvSANの大きな特徴である、管理性の向上、高い拡張性に加え、今なお進化が続く将来性がポイントとなったようです。
2014年3月のvSANの出荷開始から約3年、グローバルでは10,000社を超える企業で採用され、日本においても、金融機関や官公庁などの様々な業種で採用が加速しています。この背景には、今回ご紹介したような採用のポイントがあったものと考えます。
ただし、SDSによりストレージがサーバ化されていくとしても、お客様が「信頼できるストレージ」の条件である「可用性」、「性能」、「拡張性」、「運用性」を満たしているという前提があることを忘れてはいけません。
VMware社の発表によると、60%以上のお客様がビジネスクリティカルなアプリケーションの実行環境としてvSANを選択しているとのことです。これは、vSANが「信頼できるストレージ」であることの証明であり、今後もさらに多くのお客様がvSANを選定していただけるものと予測しています。
連載バックナンバー
Think ITメルマガ会員登録受付中
全文検索エンジンによるおすすめ記事
- vSANのアーキテクチャーと機能概要
- VMwareのSDSであるVMware vSANの概要
- vSAN最新情報
- VMware vSphere 6の新機能と用途
- EMCがハイパーコンバージドで先行するNutanixを追撃する切り札「VxRail」を発表
- vForum2016レポート:vSphere、NSXにVSAN、コアな製品を揃えてSDDCを訴求
- VMware Virtual SAN 6.0の新機能
- vForum 2016レポート:オンプレミスとパブリッククラウドの連携に賭けるヴイエムウェアのクロスクラウド戦略とは
- 仮想化の流れで勢いを見せるティントリの仮想化ストレージ
- VMwareとAWS が打ち出したクラウドサービス「VMware Cloud on AWS」