普及と利活用が進んだ2017年のVRを振り返る
新年あけましておめでとうございます。本年も週刊VRウォッチをよろしくお願いします。2018年最初の週刊VRウォッチは、昨年2017年のVR/AR/MRに関連するトピックを振り返っていきたいと思います。
価格改定により、VRヘッドセットがより身近に
2016年にOculus Rift、HTC Vive、PlayStation VRといったハイエンドVRヘッドセットが登場し、「VR元年」と呼ばれる年となりました。その後、2017年末時点ではOculus RiftとHTC Viveは各々100万台近くが出荷されたと推定され、PlayStation VRも2017年12月に全世界で200万台が出荷されたと発表されています。
2017年中に各ヘッドセットの値下げやセールが何度も実施されたことが、この伸びを後押ししたと言えるでしょう。現在では、Oculus Riftが5万円、HTC Viveは8万4,110円、PlayStation VRは4万4,980円(PlayStation Camera同梱版)と、以前より購入しやすくなりました(価格はいずれも税込み)。
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新たに登場したVRヘッドセットたち
2017年には新しいVRヘッドセットが登場しました。Microsoftが展開するWindows Mixed Reality対応のPC向けヘッドセットです。2016年ごろから開発中であることが発表されていましたが、製品版は2017年秋から年末にかけて発売となりました。センサーなどの外部装置なしでポジショントラッキング等を実現しており、セットアップの容易さや比較的低スペックなPCでも対応できることから、VR普及の一助となることが期待されています。
そのほか、2017年中に出荷とはいきませんでしたが、中国メーカーPimaxによる、8K/広視野角のハイエンド向けVRヘッドセット「Pimax 8K」も記憶に新しいのではないでしょうか。「Pimax 8K」は2017年9月~11月に行われたクラウドファンディングにて、4,236,618ドル(約4.8億円)を調達しています。これにより、「Pimax 8K」の調達額はOculus Riftが2012年に集めた240万ドル(約2億7,000万円)を超え、クラウドファンディングで最も資金を調達したVRヘッドセットとなりました。
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進化する360度カメラ
ハードウェアの面では、VRと関わりの深い360度カメラも取り上げるべきでしょう。中国のInsta360は、8K解像度で3D撮影が可能なプロ用の「Insta360 Pro」や、360度動画から通常の動画を作る機能などを搭載した「Insta360 ONE」を発売するなど、プロ向け・コンシューマ向けともに360度カメラの技術進歩が大きく進みました。
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ARKit、ARCore……モバイルARの台頭
AR分野でも大きな話題がありました。通常のスマートフォンのカメラを使って、簡易的にARを現実に馴染ませるプラットフォームの登場です。
アップルはiOS 11に「ARKit」と呼ばれる機能を、グーグルはAndroid向けに「AR Core」を展開しました。これにより、2018年はより簡易的なARを用いた分野の発展が予想されます。
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1億円売り上げたVRソフト、人気IPを駆使したVRソフトなど、ソフトウェアも話題に
2017年、VRはソフトウェアの方面でも大きな話題を集めました。「Job Simulator」や「Raw Data」といったタイトルは1億円以上の売り上げを達成しているほか、「Fallout 4 VR」など、世界的に有名なゲームに関連したVRゲームも登場しました。また国内でも「Fate/Grand Order VR feat.マシュ・キリエライト」や「傷物語VR」など、人気のIPを用いたVRデモが配信され、ソフトウェアの充実を感じさせるような年となりました。
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ロケーションベースVR分野の盛り上がり
ここまで紹介した内容は、主にハードウェアやVR向けソフトウェアなど、「VRを楽しめるハードウェアを持っている人」を対象とした内容でした。しかし、そのようなハードウェアを持っていない人でもVRを楽しむことができるコンテンツも、大きな盛り上がりを見せました。それがロケーションベースVRです。
ロケーションベースVRとは、施設で体験するタイプのVRコンテンツのことを指します。バンダイナムコエンターテインメント、アドアーズ、セガ、タイトー、カプコンなどのアーケードゲーム事業者が、相次いで運営店舗でのVR体験の導入を進めました。
また、ハウステンボスやユニバーサル・スタジオ・ジャパン、としまえんなどのテーマパークも、アトラクションとしてVRを活用。より身近なものとしては、ネットカフェでのVR体験サービスも普及が進みました。
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業務分野での導入も活発に
2017年は、VRやAR、MRの業務への導入事例が増えた年となりました。KDDIがJR西日本にサービス提供を行った紀勢本線用の南海トラフ地震対処シミュレーションなどの防災用途、不動産の物件をVRで内見することができるナーブの「VR内見」といった不動産用途など、その活用範囲は多岐にわたります。
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コンテンツや活用の充実が見られた2017年
冒頭にも記した通り、2016年はOculus Rift、HTC Vive、PlayStation VRなど、多数のVRヘッドセットが大々的に登場し話題を集めました。一方で2017年はVRヘッドセットに関しての大きな話題はやや少なめで、全体的に「あまりパッとしない年だった」という印象があるかもしれません。
しかし、2017年はVRヘッドセットの普及、人気IPを用いたVRコンテンツの登場、気軽に遊べるロケーションベースVRの広まりなど「よりVRを体験しやすくなった年」となったように思われます。また業務における利用事例なども複数登場し、様々な場所でVRを体験できる、あるいは活用する場面が増えてきた年だったと言えるでしょう。これらを踏まえた2018年がどのような年になるのか、週刊VRウォッチで引き続きチェックしていきたいと思います。
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