仮想化に特化したストレージのTintri、破産後にDDNの元での再出発をアピール
仮想化環境に特化したストレージアレイのベンダーとして独自のポジショニングを確保していたTintriが経営難から破産したのは2018年7月のことだ。その後、身売り先を探していたが、最終的にData Direct Networksに買収されたことで、Tintriのユーザーは一安心というとこだろう。そのTintriの日本国内での代理店であるノックス株式会社と、買収したパートナーであるDDNの日本法人である株式会社データダイレクト・ネットワークス・ジャパンが共催したイベントで、「Tintri by DDN」として日本のユーザーにアピールを行った。
2018年11月28日に都内で開催されたイベントはノックス株式会社が開催したもので、Tintriのユーザー事例や製品計画などを既存ユーザーやノックスの顧客にお披露目するのが目的だったようだ。
今回は、イベントに合わせて来日したTintri by DDNのSr. Director of Product Managementであるトマー・ハガイ(Tomer Hagay)氏にインタビューを行った。セミナーで開示されたロードマップや、クラウドネイティブなワークロードに対する計画などについて紹介したい。
Hagayさんの経歴などについて教えてください。
以前はSeagateでマーケティングとして働いていました。Tintriに参画した後はテクニカルマーケティングの仕事をしていました。Seagateの前は、シスコで10年ほど働いていました。今回のDDNによる買収に関しては、交渉の段階から関わっていました。幸いなことにDDNとの交渉は最初の段階からとても良い感触を持っていました。DDNはストレージに関する深い知識と経験があり、Tintriのことを理解してくれていると感じています。
今回は買収以降、初めて日本の顧客の前に出てきたことになりますが、顧客からの反応はどうですか?
とても良いですね。Tintriの製品は多くの日本のお客様に使っていただいているわけですが、私の個人的な経験から感じているのは、Tintriほど顧客に愛されている製品を持っている会社は、IT業界では珍しいのではないかということです。私はシリコンバレーで長いこと仕事をしていますが、シスコをはじめてとしてどんな製品でも顧客からは多少の欠点を指摘されることは当たり前なのです。製品に機能を追加しても、顧客から良い評価をしてもらえるとは限りません。しかしTintriの製品は、常に顧客のビジネスに役に立っているということを実感しています。
今回のセミナーでも、三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社の事例紹介は事例というよりもTintriへの応援のようなプレゼンテーションでした。
とてもありがたいことですね(笑)
では製品のロードマップについて教えてください。今回は5つの大きな柱について説明していましたが。
そうです。1つ目は「Analytics」、これはストレージを使っている仮想マシンがどのようなデータの使い方をしているのかを分析し、そこからインサイトを導き出すというものです。2つ目は「Data Aware」、これはストレージ上のデータの特性について理解し、最適化するというもの。3つ目は「Planning」、これはストレージの使い方について計画的にプランを立てることを可能にします。4つ目は「Security」です。そして最後の5つ目は「UI」、これは主にTintri Global Centerのユーザーインターフェースをさらに使いやすくするという強化ポイントになります。
このロードマップは長い目で見た将来の計画について説明していますが、直近で来年早々にGAになる予定の機能についても説明させてください。これは「Storage vMotion Offload」という機能です。仮想マシンを現在のサーバーから別のサーバーに移動するvMotionというVMwareの機能がありますが、それをストレージに適応するのがStorage vMotionです。しかしこれはVMwareのESXiのホストを経由して別のストレージアレイにコピーを行うことになりますので、システム管理者にとっては仮想マシンそのものの移動よりも慎重にならざるを得ないタスクでした。「移行先のストレージに与える影響はどうなのか?」「移行に必要な時間はどれくらいかかるのか?」など、仮想マシンのvMotionよりもストレージの移行はインパクトが大きいものなのです。
つまりVMwareのサーバーを介して他のストレージにコピーを行い、成功したら元のデータを消すというやり方になるということですね。
そうです。そのためデータの重複排除や圧縮も、もう一度新しいストレージ上で実行する必要があります。また通常のサーバーとストレージアレイ間のネットワークインターフェースを使いますから、他のトラフィックにも影響を与えてしまいます。それをTintriのストレージアレイ間であればもっと効率的に行えるようにしたのが、Storage vMotion Offloadです。
Storage vMotion Offloadは、Tintriのストレージアレイ間を繋ぐ専用のネットワークインターフェースを使って実行しますので高速に実行できますし、重複排除や圧縮もそのまま適用されます。これによって、移行時間は10倍以上高速化されます。
これはTintriのストレージアレイ間のディザスタリカバリ機能をVAAI※1に対応させて、データの移動を高速化したというものですね。仮想マシンの移動だけではなくデータの移動をストレージアレイ側にオフロードするという機能だと思いますが、いつ頃実装される予定ですか?
※1 VAAI:vStorage APIs Array Integration
VMwareのESXiとMicrosoftのHyper-Vについて予定していますが、あと数ヶ月以内と言ったところでしょうか。
ロードマップの中の2つ目のData Awareのところで「DB Aware」と「Container Aware」という項目がありました。それについてもう少し詳しく教えてください。
DB Awareはストレージの中で実行されているデータベースについて、ストレージ側がそのデータの読み書きを理解して最適な使い方に設定するというものです。最初のターゲットはSQL Server、その次はMySQLを予定しています。
Container Awareは、Dockerコンテナが利用するPersistentVolumeをNFSにマップするという機能からスタートすることになりますが、その他の使い方、例えばKubernetesにおけるストレージへの対応については、まだリサーチを行っている段階と言えます。
ストレージはKubernetesにとって難しい問題ですが、仮想マシンに特化したストレージであるTintriにとっても課題として挙げられているということですか?
そうですね。仮想マシンの上にコンテナが稼働しているというのは、すでに想定可能ですが、実際に顧客が求めているであろうベアメタルサーバーの上でDockerコンテナやPodが稼働するという場合に、ストレージはどうあればいいのか? Tintriはそのことを真剣に考えています。
ただTintriの顧客と話をした限りでは、コンテナの利用はまだこれからという段階ではないでしょうか。先ほどお話ししたDB Awareの場合であれば、仮想マシンのハイパーバイザーと同じように考えることで、うまく実装が可能なのです。つまりハイパーバイザーの上で仮想マシンが実行され、様々なデータがストレージを行き来します。そのハイパーバイザーをデータベース管理システムに置き換えれば、データベース管理システムの上で様々なデータベースがデータをストレージに書いたり読んだりするわけです。なので、それぞれのデータベースの使い方を理解して設定を行うということは理論的に可能になります。ただしコンテナに関しては、本当にどのようなトラフィックが発生するのか? これについてもう少し深く理解する必要があると思っています。
Tintriのスケールアウト型ストレージは仮想化に特化し、LUNによる管理からストレージ管理者を解放したと言える製品だ。Tintriの経営難から多くの社員が退職してしまったが、DDNの買収により、元社員が戻り始めているという。Hagay氏によれば、DDN以外にも多くのベンダーから買収話があったそうだが、最終的にDDNに決まったことを喜んでいるとコメントした。Hagay氏は、これほど良い製品が消えてしまうのは惜しいという思いで、「Tintri by DDN」としてもう一度Tintriの製品に関わるようになったと言う。実際にイベントで聞いたユーザーの声は、そのまま継続して製品開発とサポートをして欲しいというものが圧倒的だった。再出発を果たしたTintriの今後に注目したい。
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