新卒フリーランスのリアル― 生活から金銭面まで、平成7年生まれの2人に聞いた
2019年6月7日(金)、イベント「新卒フリーランスって、ぶっちゃけどうなの!? 個人での働き方と生活のリアル」が東京・浅草橋のゲストハウス/バーLittle Japanにて開催されました。
本イベントのテーマは、大学を卒業してすぐにフリーランスとして独立した、いわゆる「新卒フリーランス」が語る「個人での働き方と生活のリアル」。Little Japanのおいしい食べものとワンドリンク(アルコールもあり)を楽しみながら、参加者も一緒に語り合えたのが特徴的なイベントでした。その様子を、元公務員ライターの新美友那(@inaka_free213)がレポートします!
<ゲスト>
Robbieさん(YouTuber)
1995年、静岡県生まれ。青山学院大学中退後、東京外国語大学アフリカ地域専攻に3年次編入。休学中に東南アジア・アフリカ合計14カ国を旅し、帰国後は田舎フリーランス養成講座にいすみ2期生として参加。現在は、YouTubeチャンネル「Robbie Lounge」を運営。Little Japanでスタッフとして暮らしながら、動画の撮影・編集などを中心に活動。Robbie Loungeではホステルやゲストハウスの宿泊レビュー動画を公開している。
<ファシリテーター>
大塚誠也さん(デザイナー)
1995年、神奈川県生まれ。今年3月に駒澤大学を卒業。「人類起源の旅」としてアフリカの人類発祥の地を訪れたのち、「冒険と創造のきっかけ作りの場」としてハード(建物)を持たないソフト部分だけのゲストハウス「Soft. Guest House」を運営。ゲストハウスのコンテンツや拡張機能を作っている。シェアハウスに暮らしながら、グラフィックデザインやイベントの企画・運営・集客などを行う。SNSは(@seiyaaa_8)
トークライブ~新卒フリーランスのリアル~
はじめのトークライブでは、Robbieさん・大塚さんのお2人が、普段の活動内容や金銭面についてかなり赤裸々に語りました。
働き方・スケジュールについて
- Robbie:宿泊レビュー動画を撮っているので人より撮影時間が長く、基本的には毎日働いています。YouTubeのために週5日外泊したり、デイユースなどを利用して1日に2泊したりすることもあります。あとは、ここ(Litlle Japan)に住み込みで働いています。労働時間は週15時間以上で、住む場所も食事もあるので、生活費はほぼかかっていないですね。
- 大塚:僕は「100BANCH」という施設の業務委託で働いています。その他、デザインやツアーガイド、記事の校閲など不定期にいただく仕事をこなしています。イベントの企画・打ち合わせ・プロジェクトの考案なども毎週行っていて、つながりを作るためにも週に2~3回は人と会うようにしています。毎日8時間程度仕事をするようにしていますが、週1日の休みには多摩川などできるだけ自然のあるところに行っています。/i>
- Robbie:僕は生活全部が仕事になるので、ホテル暮らしを始めようと思っています。遊びもVRなので、VRチャンネルに動画をあげていますし。ランニングユーチューバーがいないので、今後はランニング動画も始めようかなと。生活が全部コンテンツ化できる状態です。
- 大塚:YouTuberは自分を発信していけばコンテンツになるところが強みですよね。
仕事の受け方について
- 大塚:僕は知り合いから仕事を受けることが多いです。とにかく色々な人に会って「自分は何ができるのか」を伝えたり、Web上で発信したり。テレビ番組(日本テレビのZip)に取材してもらった時も、Instagramのタグから僕のページを見つけて声をかけてくれたんです。
クラウドソーシングは、デザインだと作品を提出してもクライアントに選ばれないと、(コンペ形式なので)報酬がもらえないんです。ポートフォリオに載せられることもあるけど単価も安いし、あまり使っていないですね。
たくさんの人に会って「自分は何ができるのか」を伝えていると、今度は相手から「こういうのはできる?」と聞かれるようになります。そういう時は、自分にできることはもちろん、これからやりたいことも答えています。 - Robbie:僕は今、実は新規のお仕事を断っています。僕のYouTubeを知っている方から動画編集のお声がけをいただくこともあるんですが、今はYouTubeに全部のリソースを割きたいので。仕事を受けるとお金は入るかもしれないですが、今後もYouTubeは伸びていくと思うので、その波に乗りたいです。
お金について
- 大塚:大学を卒業して4月・5月の合計で約24万円の収入がありました。内訳はデザイン・ツアーガイド・イベント運営・100BANCHの業務委託です。大卒初任給くらいの収入はありましたが、業務委託の仕事の金額が大きいので、まだ良いとは言えないかもしれません。
あとは、お金にならない「対価」も大事にしています。例えば、実績にするために無料でロゴを作成したり、有益な情報を無料で読むために記事の校閲の仕事をしたり。大企業や自治体が運営するイベントに出て、人との繋がりづくりもしました。実はテレビの取材は報酬なしでしたが、放送のおかげで自分1人では届けられない広い範囲の人たちに僕の活動を届けることができました。 - Robbie:「対価」で言えば、今YouTubeのチャンネル登録者数は1,500人くらいですが、良いことがたくさんあったんです。先日、1年前から僕の動画を見てくれているアメリカの視聴者の方が連絡をくれて、日本で食事と良いホテルを1泊おごってくれたんです。1月にインフルエンザにかかって1週間ほど動画を休んでしまったときも、視聴者の方がここ(Little Japan)までゼリー飲料や風邪薬を持ってきてくれました。こういう形で対価をもらえるのはとても嬉しいですね。それがモチベーションになっています。
あと、お金については「生活にかかるお金」と「事業にかかるお金」の2種類に分けて管理したほうが良いと思います。僕はさらにそこから支出と収入も分けています。貯金はあったのですが、4月と5月は生活にかかる出費を0円にしました。電車にも乗らない、お菓子も買わない、友達とも遊ばない…と徹底して、0円で生きています(笑)。
事業にかかるお金は、貯金から30万円を出してスタートしました。「ゲストハウスYouTuberとしてたくさんレビュー動画をアップすれば知名度も上がるのでは」と思い、まず100ヶ所ということで、1泊3000円×100ヶ所で30万円です。50泊ほどしましたが、まだモバイルWi-Fi等の料金を入れても全部で19万円しか使っていません。
支払いはクレジットカードで、分割払いかリボ払いを利用しています。リボ払いは利息が高いので敬遠されがちですが、意外とメリットがあるんです。新卒フリーランスにはまだ信用がないので、お金を借りられません。でも、学生時代に持っていたカードを使えば支払い期間を延ばせます。将来にわたって払わないといけなくなりますが、アルバイトになっても生活をしていけそうですし、今この期間に稼げるようになれればと思って、こういうキャッシュフローにしています。 - 大塚::すごい! やっぱり、新卒フリーランスには飛び抜けた考えを持っている人が多いですよね(笑)。
- Robbie:固定費も削減しようと思って今ほぼ0円ですが、その前も6畳1間で23,000円のところに住んでいました。家賃さえもなくすには…と考えて、ここに住み込みで働くことにしました。近々Wi-Fiも解約しようと思っているので、そうするとほぼ完全に0円になります。
- 大塚:固定費で言えば、僕も携帯電話は1,000円しかかかっていないです。デザインツールもIllustratorだけなので、月1000円。「固定費をどこまで下げられるか」というバトルのようなところがあります。
- Robbie:でも、固定費はゼロとはいえ税金はかかるので、先々まで生活に困らないような状況を作りました。税金は、国民年金・国民健康保険・奨学金返済(1,000万円!)・その他(所得税・住民税・消費税・個人事業税)です。「税金を抑えるにはどうしよう」と考えた結果、今年は収益を立てないと決めました。そうすれば年金は免除申請できるし、国保も年収約100万円以下なら親の扶養に入れて、奨学金も返済猶予の手続きができます。
家について
- 大塚:シェアハウスやゲストハウスが増えてきて、家にいる時間にも人とのつながりが生まれているなと思います。新しい人がどんどん来るので、いつでも人との接点づくりができる。個人で仕事をするなら、そういう機会を得られるかは大事ですね。
- Robbie:最近、特にLittle Japanは人の入れ替わりが激しいので、正直疲れてきました(笑)。ここに住むようになってもう半年経ちますが、自分は人と距離を取って付き合う方だからこそ続いている気がします。最初にすごく気合いを入れたり、「人と話すのが好きで~」という積極的な感じの人が来たりすると疲れるかも。
フリーになってからの気付き
- Robbie:「もっと早くフリーランスになれば良かった」と思いました。理由は、奨学金の返済などのお金のことが気になってしまうからです。フリーになるにはちゃんとお金について勉強しておいて、冷静に現状を把握できるようになってからをおすすめします。
- 大塚:大事だなと思うのは、固定費を抑えること・極端に行動すること・誰かの下で働くこと。特にフリーになると全部が独学になってしまうので、成長のきっかけが少ないんです。能力がある人の下でアドバイスを受けられるような環境づくりができると良いと思います。
オリジナルインタビュー
~新卒フリーランスを目指す方へ~
- Robbie:フリーランスには向き不向きがあるので、まずはお金の勉強をしておくと良いと思います。僕は漫画の「インベスターZ」を読んで、資本主義ってめちゃくちゃ面白いなと思いました。「金持ち父さん貧乏父さん」もおすすめです。
僕は些細なきっかけからYouTubeを始めましたが、プログラミングや起業もしました。その中でも続けていたのがYouTubeで、好きだからこそ3年続いています。結果的にそれがフリーランスという形になりました。 - 大塚:新卒に限らず、「本当に自分の好きなことが何か」を考え続けた方が良いと思います。以前は「好きだと思うことをやり続けていれば、最後に本当に好きなことがわかってくる」と思っていましたが、逆にわからなくなっていくこともあるので。「見失わないために、好きなことをやる」。
本当の「好き」って、視界の中にあるとは限らないと思うんです。昔はすごく視野が狭くて、でもその視野の中でも気になった人にまず会いに行きました。そうすると、つながりが広がったり話が聴けたりして、その過程で「好き」を突き詰めることができる。
突き詰めてもその「好き」が残るのだったら、フリーランスになれば良いと思います。まずは趣味でも良いのでやってみて、「仕事にできるし、したい!」と思ったら、仕事にすれば良い。「フリーランスになった後に何をしたいか」まで掘り下げることが大事です。
学生のうちに色々と試してみるのはすごく良いと思います。仕事にする前にちゃんと突き詰めておかないと、「好き」がわからなくなった時に帰り道がわからなくて、生きるのが辛くなってしまうかも。「フリーランス」「自由」という言葉だけでいきなりやってみるのではなく、リスクヘッジしながら進んだ方が良いですね。
独立前は、「就活かフリーかしか道がなくて、どちらかを選んだらもう戻れない」と思っていました。でも、実際はもっとたくさんの道がある。「大丈夫だよ」と、過去の僕にも、新卒フリーランスを目指す方にも伝えたいです。
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