クライアント案件のゴールは「卒業すること」「伝承すること」Warisフリーランスサロン レポート

2019年6月28日(金)
望月 香里(もちづき・かおり)

女性フリーランスと、フリーランスへの転身希望者へスキルやモチベーションアップの場を提供する「Warisフリーランスサロン」。その第8回が5月28日、コワーキングスペース兼シェアオフィスの「大手町SPACES」で開催された。

Warisフリーランスサロンについてはコチラ

今回のテーマは「営業企画フリーランサーが伝える仕事獲得のための交渉術」。フリーランスが直面しがちな仕事獲得への第一ステージ、その交渉術を学んできた。

講師を務めたのは、営業企画フリーランサーの菅原櫻子さん。様々な職種経験を経て、現在はフリーランスになって丸2年。正解かどうかはわからないが、今は「なんとなく軌道に乗っている感覚」とのこと。40代に入って苦手なことを避けることも多くなった自分への刺激もあり、パーソナルトレーニングに通っているという一面も。「こんな働き方をしている人もいる」と思ってもらえたら嬉しいと笑顔で語った。

営業企画フリーランサーの菅原櫻子さん

理想の働き方を目指してフリーランスに

会社とは良くも悪くも経営者の方針で決まっていくもの。「私だったらこうやりたい」という思いが芽生え、「やってみたい」という気持ちが強くなってきたことや、前職は8年間保育関連の事業で働く女性を外からサポートする仕事をしていたが、「どれだけ保育園や制度を作っても、働く側にモチベーションや意思がなくては変わらない。そのことを女性自身がもっと考えた方が良いのでは。そのために自分自身が『稼ぐ』を体現できたら」と思ったのがフリーランスになるきっかけとのこと。

フリーランスになって、はじめは各種エージェントやマッチングサイト、求人サイトへ登録して情報収集やレジュメ作成など行い、半年間はさまざまなことにチャレンジ。そのうちにだんだんと自分のやり方が見えてきて、バランスをとれる働き方へとクライアントを絞っていった。

菅原さんがフリーランスとして軌道に乗るまでに行ったこと

大事だったのは、「私の理想の働き方ってなんだろう? わたしはどんなフリーランスになりたいのか」と自己分析をしたこと。そこで<世の中の役に立っていることをしたい・効率よく働きたい・やりたいことはどんどんチャレンジ・楽しく働きたい>という自分のビジョンが明確になった。

菅原さんの考える理想の働き方は、「必要に応じて出社して、その分自分の時間を確保すること」「ここまでという業務のゴールが明確なもの」「その会社のビジョンに賛同できるか」をポイントにしている。会社の看板がなくなった時、「わたし」という自分の市場価値がどれくらいなのかを知りたかったので、報酬は成果が対価(市場価値)として分かることがやりがいを感じるポイントだという。

菅原さんが理想とするフリーランスの働き方

自分の経験を活かせる営業企画系の仕事を探す際、最初はエージェントさんのお世話に。それが、今の仕事のやり方などのベースになっていると感じている。報酬は固定+成果の組み合わせが良いと思っているとのこと。

菅原さんの仕事の探し方と報酬の考え方

仕事へのチャレンジ方法と展開

Warisへ登録後、2件の仕事を受注。1つは飲食系フランチャイズ会社で、店舗の顧客確保後のフォロー営業や顧客増大への営業企画・店舗周辺へのアプローチなどを行った。もう1つはテレアポの代行会社。クライアントとコールセンター繋ぐ業務で、既存のお客様が満足しているかの調査やプロジェクト管理などを行なった。

営業の仕事は、ベンチャー・スタートアップ会社が多く、商材も色々。人材系から介護系など、単発で色々なことにチャレンジしていった。異業種に関しては正直に経験がないことを伝え、会社とやりとりしながら仕事をした。

さまざまな仕事にチャレンジして行く中で会社を絞り込む

大変だったのは、会社とのコミュニケーションだ。同時進行ではないが10社ほどとやりとりしている段階で、自分のパフォーマンスを上げるためにも半年ほどで数社に絞った。自分が心掛けていたことは、契約期間を3~6ヶ月にしたこと。理由は新しい仕事へ踏み出せる環境を保持しておきたいこと、条件交渉の機会を確保するため。お互い「ここまで」というゴールが明確だったので、トラブルもなかったという。

会社を絞る時の基準は「ビジョンが自分に合っているか」「自分の仕事のバランスや会社との相性」だ。相性が良い会社にいると、社内からどんどん仕事が来るようになった。微力ながらも経験があったことで、営業・新人研修などもお手伝いした。お互いのリズムが合って来ると、経験はなくても「これやってみませんか!?」と声がかかることも。新規開拓の営業や企画の提案など、新たな案件も経験できた。また、空いた時間で地域に貢献することなども行えたという。それもひとえに、これまでの関係構築が大事だったと振り返る。関係がうまくいっているのは、ある程度「お客様」として接しているからとのこと。

報酬の交渉も可能だが、特に営業関連は「結果・成果がすべて」。菅原さんの場合は相性の良い会社を選んだこともあり、成果によって単価や報酬もアップしていった。一方で、クライアントにとっては「抜けられたら困る」という視点もあるとも思っているという。最終的には「いかにマッチする仕事に出会えるか」が大事なのだ。

自分の基準で会社を絞るとさまざまなメリットが

「必要とされなくなること」がゴール

菅原さんは「自分が必要とされなくなるということは、成果が出たという証。自分のフリーランスとしてのゴールは『卒業』なのではないか」と語る。今のクライアントの仕事を継続して固定収入を確保するという想いは持たないようにしているという。その目標は「私がいなくてもクライアントが自走できる」ということ。立ち止まらずに次から次へと案件を取っていくことが大事なのだ。

今後の自分を見据えると、手を動かせる時間には限界があると感じたという菅原さん。今の課題は、誰かを育てたり、誰かに動いてもらったりというマネジメント部分。菅原さんの場合、市場価値は時給で見るしかないものと捉え、手を動かすだけでは限界があると思うようになってきたそうだ。

案件のゴールは「卒業すること」「伝承すること」

自分で自分をどれだけ理解できているか

菅原さんが起業する際につけた屋号は「Work &Rest」。働いて、休む。働くことの楽しさ・ワクワクなど、自分自身がワクワクしていればそれが伝わっていく、という思いを込めた。ママさんや介護をしている方など時間が限られている方とチームになり、チャレンジしていきたいと語る。相談できる仲間づくりはとっても大事。Warisを通じて出会った仲間との案件もあるという。

フリーランスを必要としている会社は手の足りてない所が多い中で、明確ではない契約書にすごく不安を感じたこともあったが、今はそれが良かったと振り返る菅原さん。仕事は「ここまで」とビシッと線引きできるものではなく、できる範囲でフレキシブルに対応してきたこと。それが菅原さんの今の自分や仕事へと繋がっているようだ。

グループワーク
「あなたが理想とする働き方・業務・報酬とは?」

初めのグループワークでは自分の棚卸しを行う

菅原さんの講演後、「自分の理想とする働き方・業務・報酬とは?」というテーマでグループワークを行なった。自分の理想を働き方・業務・報酬と分けて考え、その理由を書き出し、グループ内で自分の理想とする働き方をアウトプット、各グループの意見をまとめて、代表者が発表した。働き方では、「月の半分くらい働きたい」という方や「フルタイムで働きたい」など、今のライフステージによって個々の意見が出た。業務では、「本職のスキルを活用していきたい」という方が多かった。また、半分以上の方が「前職よりも多くの報酬を得たい」と考えているようだった。

理想の働き方を現実に近づけるために、何をすべきか?

続くテーマでは理想へどのように近づいていくのかを考える

次のグループワークは、「理想に近づくために、どの仕事獲得法/報酬型を選ぶか」というテーマ。大きく「仕事獲得法」と「報酬型」に分けて考えた。人脈では「相手が知り合いのケースが多く、自分を知っていてくれることからオーバースペックの仕事にならなくて良い」「これまでの職歴により同業種など偏りがちになる」という意見があった。エージェントやマッチングサイトは自分の知らない企業との出会いなど、販路拡大に活用するのはありとの意見も。また、「SNSから仕事につながったケースもあった」という話から、「Facebookなど最近ではSNSから仕事獲得に繋がるケースも少なくない。そのためにも、自分が何をやっているどんな人なのか、外から見てわかるようにしておくことは、今後より大切になって来るだろう」という意見が出た。プロジェクトからプロジェクトへと社内で繋がっていくなど、初めは人脈でない関係から人脈へと繋がったケースもあったという。

理想に近くづくためにどうするべきか。みな真剣そのものだ

報酬面では「精神的安定にもつながるので固定収入は欲しい。理想としては、固定+成果型が良い」という意見が多かった。やはりセーフティネットは大事だと再認識した。菅原さんにも意見を伺ったところ、「常に人脈や自分ができるもの・関心のあるものにアンテナを張っておくことを心がけてみては。思わぬところから仕事に繋がるケースもある」とアドバイスをいただいた。求人情報を見るのが好きだという菅原さん。求人媒体からその会社の方針が気に入って問い合わせてみるなど、自分で自分を売り込む仕事獲得法もあるという。

これらの意見から、菅原さんは「人脈を生かすも良し、自分の領域を広げるためにエージェントを活用するも良し。自分のバランスとの掛け合わせがポイントとなってくるだろう」とグループワークを締めくくった。

グループワークでは菅原さんもグループに加わって意見交換

「この2ヶ月でやること」をグループ内で宣言!

グループワークの最後に、理想の実現に向けて、まず2ヶ月でチャレンジすることを個々に書き出し、グループ内で宣言を共有した。「自分が何をやりたいのか、キャリアを含めた棚卸しをして案件を増やせるようにしたい」という意見や「現在取り組んでいることを継続して行きたい」など、参加者は自分の理想へのステップを明確にできたようで、来た時よりも晴れ晴れした表情が伺えた。

最後に―菅原さんからのメッセージ

今回のフリーランスサロンが「自分自身を振り返るきっかけになった」と語る菅原さん。「自分には無理かな」と思う案件でも、先方に「ここまでならできます」というアプローチをするのも、その後に繋がる仕事獲得術としては大事だという。技術職ではない菅原さんのような営業企画フリーランスはまだまだ珍しく、企業側も「どうすればフリーランスと出会えるのか」と悩む声もよく聞くとのこと。「フリーランス側も臆さず自分の実現したいことや自分のやっていることを発信・宣言することで仕事や人脈に繋がるケースもあるので、ぜひ積極的に発信してほしい」と呼びかけた。

参加者は菅原さんのお話に時に笑いながら、時に大きく頷きながら聞き入っていた

菅原さんへ突撃インタビュー!

セミナーの最後に、菅原さんへ突撃取材を敢行。自分は「好奇心旺盛で色々とやってみたい性分だ」と語る菅原さん。様々なクライアントと仕事をする中で気を付けていることはあるかを聞いてみた。フリーランスは相手に受け入れられなくてはならないので、どんな人とも0から1のチームメイク創りのできる「人間力」が大切とのこと。相手のことを考えられる心の余裕を持つように意識しているのだなと感じた。

また、女性の営業企画フリーランサーとして良かったと思う点があるかも聞いてみると、空気を読んだり空気を感じたりする「調和力」との答え。時と場合に合わせて自分のキャラクターの出し方を変えていて、「飲み会行くぞ!」というノリのクライアントにはその勢いに合わせることもあるのだとか。フリーランスになる前は「自分だったらこうする」という目線で上司に意見を言うタイプだったという菅原さん。「きっと扱いにくい部下だったのではないか。その頃からフリーランス気質があったのかな」と満面の笑みで答えてくださった。

* * *

菅原さんはサービス業の経験もあるためか笑顔がとても清々しく、「もっと話したい」という印象を受けた。特に感銘を受けたのは「クライアントに対するゴールは『卒業する』こと」。自分がいなくなってもクライアントの仕事が成り立つことは、その会社にとって良いことだという考え方に、クライアントと良い距離感で仕事をされているのだなと感じた。また、「今のクライアントの仕事を継続して固定収入を確保するという想いは持たない」ところは、ライフステージとともに柔軟に動いてきた彼女のしなやかさを感じずにはいられない。どこか現実を見据えた上で自分のキャリア形成について前向きに歩んでいる姿は、背中で語る職人のような熱い想いのある方だと感じた。

「Waris」の意味は砂漠に咲く花。今回のWarisフリーランスサロンから、より色とりどりの女性という花が咲き乱れる未来が楽しみである。わたしもその一(いち)メンバとして日々を彩って行きたいと、再度自分の未来にタネを蒔いたような気分になった。

著者
望月 香里(もちづき・かおり)
元保育士。現ベビーシッターとライターのフリーランス。ものごとの始まり・きっかけを聞くのが好き。今は、当たり前のようで当たり前でない日常、暮らしに興味がある。
ブログ:https://note.com/zucchini_232

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