PR

「フリーランスを法律で保護?」―フリーランスが知っておきたい法律知識を徹底解説

2018年6月20日(水)
新美 友那(にいみ・ともな)

2018年5月22日(火)、東京・永田町のシェアビル「Nagatacho GRID」にて、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会主催のイベント「フリーランスを法律で保護って本当ですか?」が開催されました。

フリーランス人口が増え続けている昨今、政府でも「フリーランスを法律で保護しよう」という動きが出てきています。

しかし、その検討会報告書はかなり難解です。内容を大まかに分けると、

①独占禁止法
②労働法

の2つの法によるフリーランスの保護が進められているということですが、具体的にどういった保護がされるのでしょうか。フリーランスの方も、これからフリーランスになろうとしている方も、ぜひ知っておきたいですよね。

今回は、独占禁止法(以下、独禁法)と労働法における具体的なフリーランス保護の内容と、現役フリーランスによるパネルトーク「フリーランスに必要な保護ってどんな保護?」の内容について、元公務員ライターの新美友那(@inaka_free213)がレポートします!

独禁法によるフリーランス保護の動き

まず、フリーランスを保護する法律の一つ独禁法について、公正取引委員会 経済調査室長 の山本 大輔さんより「人材と競争政策に関する検討会 報告書」の解説がありました。

公正取引委員会 経済調査室長 山本 大輔さん

Q:独禁法が人材獲得競争に適用されるって、つまりどういうこと?

  • 山本:これまで独禁法と言えば「カルテル」や「談合」などを取り締まってきましたが、それだけでなく「公正かつ自由な競争」を促進するということです。企業が依頼先のフリーランスを探す際などに行われる人材の獲得競争を公正に行うよう取り締まるということです。

Q:そもそも、「獲得競争」とはどのようなこと?

  • 山本:獲得競争とは「選択ができる」ということです。例えば、フリーランスが取引先を探す際、いろんな条件を見ながら企業を選べるということです。公正でない例として、企業がフリーランスに「あなたの代わりはたくさんいるから」などと言って、フリーランスから「企業を選択する権利」を奪うことがあります。このように、フリーランスが一方的な条件を課されることがあるらしい、ということで今回、検討されました。

Q:「優越的地位の濫用」ってどういうこと?

  • 山本:まさに先ほどの企業のような態度です。優位的地位にあるかどうかはケースによって判断されますが、その判断基準は4つあります。

    個人(フリーランス)は……
  1. 情報収集力が弱く、選択肢が少ない
  2. 悪い評判が広まると仕事が頼まれにくくなる
    【例】契約書通りの支払要請をしただけで「きっちりした人」と皮肉な評判を流される
  3. 同時に取引できる企業の数が少なく、選択肢がない
  4. 契約更新時に契約を切られることがある
  • 山本:独禁法では、企業がこのような優越的地位を乱用した場合、フリーランスを保護します。例えば、極端に低い値段で契約書を結ばざるを得なかった場合でも、契約に違法性が認められればサイン済みでも独禁法違反とみなされます。不利な立場と知りながら契約した場合でも泣き寝入りせずに戦える場合があるのです。

Q:具体的にどんなことをされたら、独禁法違反と訴えて良いのか?

  • 山本:契約時に交わされる約束としては「競業避止義務」「秘密保持義務」「専属契約」「成果物の利用制限」等がありますが、どれも一律に違反というわけではなく、程度によります。例えば、「3年間専属で働いてもらう代わりに契約金を増やします」という場合であれば違反でないことが多いですが、「契約金は増やせませんが、3年間専属で働いてください」という場合は違反の可能性があります。目的に比べて課題が必要以上に重い時は、違反を疑うべきかもしれません。

Q:独禁法上、問題となると言えるケースはどのような場合?

  • 山本:色々ありますが、例を挙げます。
    • 支払遅延:報酬の支払いが予定より1か月遅れる
    • 支払減額:契約額は50万だったが、45万しか支払われない
    • 成果物の受領拒否:2人のフリーランスに同様の仕事を発注し、うち1人からしか受け取らず、支払わない
    • 著しく低い対価での取引:従来から受けていた仕事の対価を翌月から半額にされる

Q:発注や契約段階で問題になるケースは?

    山本:例えば、次のような状況が問題となります。
    • 取引条件を他言しない旨の要請:企業がフリーランスAとフリーランスBに異なる金額で発注し、双方に発注金額を他言しないよう要請すること(価格競争を妨げるため問題となる)
    • 取引条件の後出し:特に金額の後出しのこと。「オークション」「応相談」「経験に応じて」などの条件。どの企業もこのような条件を出すようになると契約条件によって企業を選ぶことができなくなり、競争が行われなくなる
  • 山本:こういった事態に巻き込まれないためには、先に契約条件を確認する・口頭ではなくメールや書面で契約するなどの対策が重要です。実際調査が難しい分野なので、いざという場合は民事裁判を起こす方法もあります。その場合は弁護士に任せきりにせず、「独禁法でいう『優越的地位の濫用』があり、それが不法行為に当たるのでは?」などと口頭でアピールしておくと良いでしょう。

―――独禁法の意味から裁判での対策まで、詳しいお話を聴くことができました。「このケースは独禁法違反だ」と知っていれば、泣き寝入りせず権利を守る行動が取れそうですね。

労働法によるフリーランス保護の動き

次に、フリーランスを保護するもう一つの法律、「労働法」について、厚生労働省 雇用環境・均等局 在宅労働課 永倉 真紀さんより「雇用類似の働き方に関する検討会」報告書の解説がありました。

厚生労働省 雇用環境・均等局 在宅労働課 永倉 真紀さん

Q:フリーランスの実態を調査して1番の発見は?

  • 永倉:すべてが新しいことでしたが、「実態はとにかく多様だ」と思いました。週5で働いている方もいれば週1~2日働いている方もいますし、キャリアもバラバラで、5年10年やってる方、本業でやっている方もいれば、副業でやっている方もいました。

Q:保護対象となる「雇用類似の者」ってどういう人のこと? なぜそれが今、問題に?

  • 永倉:定義は検討中ですが、現時点では「外見的に労働者に見える人」です。企業からの発注を受けて仕事をし、対価を得ている人などが当てはまります。その中でも、不本意な契約で働かざるを得ない方が特に「雇用類似の者」に当たるのでは。保護をすべきかの判断も難しい分野なので、その必要性も含め検討していくことになります。

Q:労働法で守られる「労働者性」は、どうやって判断するの?

  • 永倉:例えば、請負契約で契約しても「労働者」に該当していれば労働法で守られます。「使用従属性」があるか、業務遂行上の指揮監督があるか、賃金を受け取っているか、などの基準で個別具体的に判断します。

Q:雇用類似の者に対する今後の検討課題は? 検討会でどういう意見が出たの?

  • 永倉:様々な意見が出たので、順にお答えします。
    • 契約条件の明示:あるという回答が半分。職種・業種により差がある。IT系は多い
    • 契約内容の決定:変更・終了のルールの明確化…1/4が決定された
    • 報酬額の適正化:収入の不安定さ、低収入を問題として挙げる回答が多かった

Q:海外では、類似雇用の人を守る動きってあるんですか?

  • 永倉:海外でもクラウドソーシングやシェアリングエコノミーという働き方が生まれている中、検討する動きが出てきています。
    • ニューヨーク市:一定額以上の契約について、書面での取り交わしを義務付ける「フリーランサー賃金条例」
    • ニューヨーク州:家内労働者に残業手当などを義務付け
    • イギリス:労働者と自営業者の中間的な概念として「ワーカー」がある。ワーカーへの保護について検討中

―――これまではっきりと把握されていなかった「クラウドワーカー」などの働き方についても、把握・保護の動きが出てきているようです。海外の動きとも連動して、適切な保護がなされる社会が近づいているのかもしれません。

パネルトーク「フリーランスに必要な保護ってどんな保護?」

イベントの後半では、パネラーとして現役フリーランス4名が登壇し、「実際に必要な保護」についてパネルトークが行われました。モデレータを務めたビジネス・インサイダー・ジャパン 統括編集長 浜田さんを中心に、具体的な「生の声」を聴くことができました。

【モデレータ】
浜田 啓子(ビジネス・インサイダー・ジャパン統括編集長)

モデレータを務めたビジネス・インサイダー・ジャパン 統括編集長 浜田 啓子さん

【パネラー】
北 健一(ジャーナリスト・出版労連 書記次長)
城 みのり(リサーチクオリティコントローラー)
芳賀 彬(システムエンジニア)
平田 麻莉(PRプランナー)

左から司会を務めた平田さん、浜田さん、北さん、城さん、芳賀さん

浜田Q:フリーランスとして忙しくなってきたとき、どう調整していましたか?

  • :私は一緒に仕事をしているチーム内で調整してくれました。ただし、契約書を戻してこないなど、嫌な予感がするときは断ります。
  • 芳賀:僕も基本的に仕事は全部受けますが、悪い予感がしたら一歩引きます。
  • 平田:本当に好きでやっていることもあり、子育てもしているので、仕事とプライベートの時間がシームレスに重なっています。ストレスはありませんが、長時間労働と言われることは多いですね。
  • 芳賀:仕事をやりくりするコツとして、チームでやるのはおすすめです。営業や技術など、それぞれの得意分野が違うので、苦手なことを得意な人に任せられます。

浜田Q:そんな中、トラブルはありませんでしたか?

  • :1か月しても契約書が戻ってこないことがありました。結果、納品をしたら難癖をつけられてしまい、いくら修正してもキリがない…という事態になってしまいました。契約書には修正回数や項目が書いてあり、弁護士のチェックも通してあったのですが、返ってこなかったので…。そんな中仕事を始めてしまった私もいけなかったのですが、以後そういう方には関わらないようにして、顧問弁護士をつけています。
  • 平田:個人で顧問弁護士をつけるのは、かなりめずらしいですよね。
  • :アメリカで起業したとき、訴訟大国なので毎回すごく分厚い契約書を作るんです。「日本もそのうちそうなるのでは?」と考えて、リスクヘッジとして月3万円で依頼しています。

浜田Q:トラブル時など、弁護士に相談するのは有益なのでしょうか?

  • :契約の段階で「顧問弁護士に確認するのでしばらくお待ちください」と言うと、非常に効果的です。
  • 平田:フリーランス協会のベネフィットプランの中にも、そういうサービスがあります。また、Gmailで「秘書役」の別アカウントを作って1人2役をするという方もいました。

浜田Q:フリーランスに必要な保護項目(当日アンケート内)で、どれが一番重要だと思いますか?

  • :一番頻度が高いのは「契約の履行確保」だと思います。また、事故が起きたら切実なのは「労災保険」ですね。最近のケースでは、フリーのスタントマンの方がもらい事故で片目を失明したのですが、労災が認められませんでした。
  • :出産・育児・介護などのセーフティーネットは私たちではどうにでもならないので、早急に着手していただきたいですね。家で子どもを見られる程度はたかが知れていますし、2~3歳までは両立が厳しいと仕事をあきらめる人もいます。

浜田Q:フリーランスとして必要な覚悟と楽しさを一言ずつお願いします。

  • :法律以外の保護が大事であり、それがフリーランス協会だと思います。社員かフリーかではなく、「今よりもう少し楽しく暮らすにはどうすべきか?」を常に考えています。
  • :仲間がいれば仕事は止まりません。夏休みを10日ほどいただいていますが、PCを持っていくので、どこでも軽めの仕事ができます。同業者はライバルではなく、それこそセーフティーネットだと思います。
  • 芳賀:フリーランスになって「自分で考えて自分で作る」ことを実践できているのが良かったと思っています。
  • 平田:自分の力で結果を出していくのは楽しいです。自分の生業を作ることは大事です。みんながフリーランスになるべきというわけではなく、ライフイベントやキャリアに応じて働き方を選べると良いなと思います。

―――様々な働き方・考え方が飛び出したパネルトークに、参加者も熱心に聞き入っていました。まだまだ少数派のフリーランスですが、政府も徐々にその働き方を認め、保護しようと動き出しています。そして、その動きを加速させるのはフリーランスの活動ではないでしょうか。

現役フリーランスの方も、これからフリーランスになる方も、今後の法改正に期待しつつ活発に活動していきましょう!

著者
新美 友那(にいみ・ともな)
元公務員ライター・編集者
法政大学卒業後、5年間の都内市役所勤務を経てライターへ。 取材を中心に活動。 主な執筆分野は転職・アラサー女子・アニメ・料理。FMラジオ出演・ライティング講師の経験あり。イベント登壇やオンラインでの転職相談も行っている。ブログ:元公務員ライター 新美友那のブログ Twitter:@inaka_free213

連載バックナンバー

Think IT会員サービス無料登録受付中

Think ITでは、より付加価値の高いコンテンツを会員サービスとして提供しています。会員登録を済ませてThink ITのWebサイトにログインすることでさまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think IT会員サービスの概要とメリットをチェック

他にもこの記事が読まれています