Red Hat Summit 2024から、ルーターやスイッチのコンソールからの操作を集約してAnsibleから自動化するソリューションを紹介
Red Hat Summit 2024のExpo展示から、セイコーソリューションズ株式会社が開発販売するSmartCSシリーズの紹介と、現地のブースで説明を担当していた同社タイミングソリューション事業部の営業責任者である鈴木康平氏のインタビューをお届けする。
SmartCSはセイコーソリューションズが開発するコンソールサーバーと呼ばれる種類の製品だ。別の呼び方としてはターミナルサーバーとも呼ばれる製品カテゴリだという。筆者はかつてDigital Equipment Corporationの日本法人である日本DECに勤務していたが、その際に使っていた端末のVT200シリーズをオフィス内で接続するデバイスがターミナルサーバーと呼ばれるシリアル接続とDECnetの仲介を行うハードウェアだったことを思い出した。
鈴木氏によれば、ネットワーク接続されるさまざまなデバイスの初期設定などはコンソールからのコマンド操作が必要だが、それを集約してGUIでの操作を可能にする製品であるという。
セイコーソリューションズのブースは最小サイズのブースではありながらも、Ciscoの小型スイッチを持ち込んでデモを行っており、Ansibleを使っているエンジニアからも注目されていたようだ。
インタビュー
セイコーソリューションズがSmartCSを開発するに至った背景は何ですか?
弊社は元々時計を作っていた精工舎の一部だったんですが、1980年代に時計だけではなく事業の多角化ということで要素技術を使って何か製品化できないかということをはじめました。それで時計の技術を使ってコンピュータの時間を正確に制御するタイムサーバーを開発したんですね。それで国内の通信事業者の皆さんには多数購入していただいたわけですが、その時にさまざまなデバイスを接続してコンソールを束ねる機器が必要になり、開発を行ったわけです。まさにそれがターミナルサーバーというわけですね。
これが9年ほど前のことになります。通信事業者さんだけではなくデータセンターにも多数導入していただいていますが、これからは自動化が必要だということで2018年ぐらいからAnsibleに対応して開発を行いました。Ansibleとの連携を発表したのは2019年ですね。
コンソールサーバーとして接続されるデバイスは何が多いんですか?
主にスイッチやルーターが多いですね。設定や管理のためにコンソールポートからコマンドを叩くという作業をこのサーバーで集約することができます。
私は30年くらい昔に日本DECで働いていた時にVT200の端末が繋がっていたのがターミナルサーバーだったので、コンソールサーバーと言われるよりもターミナルサーバーと言われたほうが話が速かったです(笑)。
そうですか(笑)でも使われ方としてはコンソールサーバーという方が合っているかなと思います。
今回の展示はAnsibleからSmartCS配下のデバイスの自動化という話でしたが、これが出てきた背景は?
スイッチやルーターの設定のためにはコンソールからコマンドを叩く必要があって、それが運用担当の大きな負担になっていることには気付いておりました。自動化のためのツールとしてAnsibleが出てきたので、Ansible経由でTCP/IPで繋がらないデバイスも自動化できたら欲しがっている人は多いだろうということで、エンジニアが開発を始めたという感じですね。その後に日本のレッドハットの人が弊社のソリューションを発見してくれて、その時は「これはAnsibleの自動化について最後の残されたピースになる」と評価していただきました。それ以降は一緒にセミナーを実施するなどしながらビジネスを進めています。
非常に地味な分野だと思いますが、今後の展開について何か計画がありますか?
コンソールサーバーだけだとデバイスの管理と自動化なんですが、ソフトウェアとして提供しているSmartJumperという製品があります。これはデバイスへの認証ログや操作ログの自動保存が可能です。それとSmartCSを連係して、より利便性を高めるということを訴求していきたいですね。
課題は何ですか?
そうですねぇ。一杯あり過ぎて一つにまとめるのがツライんですが(笑)、一番の課題は先ほど言われたように地味でニッチな製品なので理解してもらって、それからその効果を実感してもらうというのが難しいという点ですかね。国内ではAnsibleとの連係やREST APIを使えるという部分は、レッドハットさんのお陰でかなり認知が拡がっているとは思いますが、まだ海外ではそこまで訴求できていないないと考えています。
そのために今回もデンバーのこの会場にいるんですね。
そうです(笑)。
地味な製品ながらもAnsibleが届かない領域だった部分をカバーするコンソールサーバーを使った自動化ソリューションだが、すべてのデバイスが必ずしもIP接続されることもないだろうし、初期設定をコンソール経由で行うという方法も当分はなくならないだろう。コンソールサーバーに集約されGUIで管理ができることなどの効果については、実際にIIJやサイバーエージェントなどの導入事例から読み取ることができる。ネットワークオペレータが苦労している問題点を着実に解決していると言えるだろう。
●導入事例:導入事例 ネットワーク運用管理機器
またSmartJumperはDockerコンテナで提供されるなどクラウドネイティブを取り込む姿勢が見えるのは、ハードウェアを基礎としていた企業としては先進的と言える。しかし地味でニッチな領域であることは変わらないし、海外には競合となる企業も存在する。来年のRed Hat Summitで再会してアップデートしてくれることを期待しよう。
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