写真で見るRed Hat Summit 2019:コミュニティゾーンと多様な展示ブース
Red Hat Summit 2019には多くのベンダーが自社のソリューションをブースで展示しており、Linuxエコシステムの拡がりを感じることができる。今回は会場内で耳目を集めていたブースなどを紹介していこう。
Red Hat Summitにはコミュニティが主体となった展示コーナーがある。これは、他のITベンダーのカンファレンスではあまり見られない特徴と言える。これについてはRed Hatの製品戦略とも深く関係していることだ。Red Hatの製品は100%オープンソースであるが、常に最新の技術・修正を取り込むUpstream/Community版と、安定的に稼働を保証するLTS(Long Term Support)版が存在する。具体的なRed Hatの製品で言うとFedoraとRHEL、okdとOpenShiftの関係である。
展示会場の一角に、コミュニティゾーンとしてそれらのソフトウェアプロジェクトがひとまとめになっており、そこではRed Hatのエンジニアだけではなく、コミュニティのコントリビューターたちが各々のプロジェクトについて質問に答えていた。
このパネルはコミュニティゾーンに掲げられており、CNCF配下の多くのプロジェクトがコンテナ関連のソフトウェアとして共通していることを示している。そしてこのパネルで気付くのは、Dockerのロゴがないことだ。Kubernetesやログ収集のFluentd、ランタイムのcri-oなどが掲載されていても、Dockerは存在していない。Dockerのデーモンを不要とするPodman、コンテナイメージをビルドするBuildahなど、Dockerを置き換える新しいツール(これらはRed Hatのサポートが行われている)は入っていてDockerが排除されているのは、Dockerが持つセキュリティ面での不安を払拭するために、Red Hatが注意深くコミュニティを運用していることを示している。
コミュニティゾーンということで、まだ新しいプロジェクト、OpenShiftの配下でマルチクラウドのコスト分析(どのクラウドでどのくらいコストを消費しているかを分析)を行うkokuなども、ひっそりと紹介されていた。
RHELのコミュニティ版、FedoraとCentOSもブースを構えており、存在感を示していた。
またRed HatがリードするJavaの高速化のための新しいプロジェクト、Quarkusも地味に紹介されていた。QuarkusはジェネラルセッションのデモにおいてもJavaのコードを高速に実行するためのツールとして紹介されており、この辺りの目配りはさすがRed Hatだと思わせるものがあった。
Red Hatの他のブースも常に人があふれており、多くの参加者の注目を集めていることが分かる。
またミニシアターでも切れ目なくプレゼンテーションが行われており、多くの参加者が詰めかけていた。
ハンズオンコーナーでは、スタンプラリーを完了すると貰えるTシャツやフーディなどを目的に多くの参加者がデモを体験しており、人気を集めていた。
他社のブースではIBM、Microsoft、DellEMC、アプリケーションパフォーマンスマネージメント(Application Performance Management:APM)を手がけるDynatraceなどが大きめのブースを展開していた。
展示会場で興味深かったのは、ドリンクだけではなく簡単な軽食を手にすることができる場所が数ヶ所設置されていたことだろう。こちらは参加者向けというよりも、展示ブースのスタッフ向けという気もしなくはない。
他にもgRPC Confでも大人気だった仔犬に触れるコーナーも設置されており、人気を博していた。テクニカルな情報の洪水に翻弄されるカンファレンスで、ひとときの安らぎをという配慮なのかもしれない。
参考:gRPCに関する初のカンファレンス、gRPC ConfがGoogle本社で開催
最後に、3日目の午前中の行われたジェネラルセッションの中のデモについて紹介したい。これはRed Hat Summitといえばデモ、デモといえばこの人ということで、Developer ExperienceのディレクターであるBurr Sutter氏によるデモで、工場内のデバイスから振動情報を元にメンテナンス要員が修理を行うというシナリオを実行したものだ。
ここでの演出が巧妙なのは、工場のデバイスの役を参加者のスマートフォンに割り当てて、参加者がスマートフォンを指示に従って振ることで振動をシミュレートし、そのデータを集積するという参加型のデモになっているところだろう。
Node.js、Kafka、DataGrid、OpenShift、Knativeなどのコンポーネントだけではなく、Salesforceとの連携から高速化JavaであるQuarkusまで、いかにもエンタープライズが使いそうなコンポーネントを組み合わせている辺りに、顧客の求めるものを良く分かっているということを感じる。
また故障の発生したデバイスの修繕に向かうメンテナンス要員のスケジューリングにも、人工知能を応用したスケジューラーが使われており、地味な部分ながら人工知能が巧妙に使われているのが分かる。いわゆる「巡回セールスマン問題」を、ここで応用している形だ。
最後にデモを行ったエンジニアが、それぞれのスマートフォンを持ってダンスをしながら会場を盛り上げた。
最終的に、1000人以上がデモに参加したことが分かる。
スマートフォンをセンサーに見立てて参加者をデータソースとして使ったIoTのデモとして、人工知能の応用やサーバーレス、さらにはSalesforceとの連携まで上手く組み合わせた内容は、毎年Red Hat Summitのステージを担当しているSutter氏の見事な手腕と言ったところだろう。来年のRed Hat Summitも楽しみである。
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