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連載 [第1回] :
  Red Hat Summit 2018レポート

Red Hat Summit 2018開催 ハイブリッドクラウドとVMwareからの移行をしっかり織り込んだキーノート

2018年6月7日(木)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
オープンソースソフトウェアのリーダーであるRed Hatのカンファレンス、Red Hat Summit 2018が、サンフランシスコで開催された。

オープンソースソフトウェア界のリーディングカンパニーRed Hatが開催する年次カンファレンスであるRed Hat Summit 2018が、5月にサンフランシスコで開催された。8000人近い参加者を集めたカンファレンスには日本からも多くの参加者が集い、非常に活気のあるカンファレンスとなった。今回は初日のキーノートの内容を紹介する。

登壇したRed HatのCEO、Jim Whitehurst氏

登壇したRed HatのCEO、Jim Whitehurst氏

5月8日の最初のキーノートに登壇したのは、CEOのJim Whitehurst氏だ。Whitehurst氏は毎年のRed Hat Summitでは大きなメッセージや方針を打ち出し、顧客を壇上に迎えて対話する役割を担うのが通例だ。今年もそれに倣い、Red Hat Certified Professional of the Yearとしてニュージーランドの企業に在籍する女性エンジニアを招き、表彰を行った。今年のテーマは「IDEAS WORTH EXPLORING」、日本語に訳せば「新しいアイデアを探求することに意味がある」といったところだろうか。昨年のサミットのテーマは「PLANNING IS DEAD」で、これは変化が激しいビジネスの世界ではじっくり計画を立ててからビジネスを推進するということがもはや不可能であるというメッセージであった。さらにそこから一歩進んで「新しい発想を組み立てよう」というのが、今年のメッセージだったようだ。

プロダクト担当のPaul Cormier氏

プロダクト担当のPaul Cormier氏

次いで登壇したのは、Executive Vice President and President, Product and TechnologiesであるPaul Cormier氏だ。Cormier氏は、キーノートでは主にテクノロジーを語る役割を担って登壇する。今回は過去を振り返る形で、オープンソース、x86、Linuxが全盛となる前の時代としてSun、Digital Equipment Corporation(DEC)、IBM、HPといったハードウェアベンダーが、それぞれの独自のOS、プロセッサーなどを用いてITインフラストラクチャーを構築していた時代を語った。そして現在は、オープンソースソフトウェアによって組織の枠を超えてイノベーションが起こる時代になったことを紹介した。ここでは、すでにオープンな開発スタイルがハードウェア、ソフトウェアともにメインストリームであるということを強調する形となった。

個別のハードウェアベンダーによるクローズドなITインフラストラクチャーを、IntelがCPUを製造し、Linus Torvalds(と無数のエンジニア)がLinuxをIntel向けにオープンなソフトウェアとして開発することで打開したというのがポイントだ。そこから、Red Hatの「オープンソースソフトウェアをエンタープライズに向けて提供する」という部分に繋げたという解説になる。そういう意味では、オープンソースソフトウェアがエンタープライズにおいて採用されるということにいち早く気付いてビジネスモデルを構築したのがRed Hatであり、今のところ、最大の成功を成し遂げていると言える。

Linusが出したLinuxに関する最初のメール

Linusが出したLinuxに関する最初のメール

また「オープンハイブリッドクラウド」というのが最近のRed Hatのキャッチコピーだが、これはエンタープライズにおいてオンプレミスの仮想化(Red Hat Enterprise LinuxとRed Hat Enterprise Virtualization)と、クラウドインフラストラクチャーであるOpenStackだけを推進する姿勢から、パブリッククラウドベンダーであるAWS、Azure、GCPなどと積極的に協業する姿勢に変わってきた証拠と言える。それはこのカンファレンスの中で強く感じたメッセージでもある。

Burr Sutter氏

Burr Sutter氏

テクノロジーを担当するCormier氏が次にステージに呼んだのは、Red HatのデモステージではおなじみのBurr Sutter氏だ。Sutter氏はDirector of Developer Experienceという肩書が示すように、開発者向けのエバンジェリストのトップということだろう。今回のデモでは壇上に置かれたIBM、DELL、HP、SuperMicroなどから提供された様々なサーバーとストレージ、スイッチなどで構成されたいわばミニデータセンターを対象に、まずはシステムを立ち上げるという部分から始まった。

まず、ラック内の電源が入っていないサーバーにOpenStackを入れるというのが最初の段階で、ここではRed Hat OpenStack Directorを使ってPXEブートからこのハードウェアを認識、AnsibleのPlaybookを活用してOpenStackを入れるデモを実行した。

Red Hatのデモチーム

Red Hatのデモチーム

ここまでで最初のデモは終了。この部分は完了までに時間がかかるためか、次はRed Hatの顧客であるAmadeusが登壇し、自社のインフラストラクチャーとアプリケーションについて紹介を行った。AmadeusはGCPとAWSを使ってハイブリッドなインフラストラクチャーになっていることを紹介。ここではAnsibleやOpenShiftが使われていることが強調され、OpenShiftがこのカンファレンスでの中心的なソフトウェアとして位置付けられていることを確認できた。

Amadeusのシステム概要。仮想化基盤はVMwareだ

Amadeusのシステム概要。仮想化基盤はVMwareだ

その後、再度登壇したCormier氏はパブリッククラウドによって多くのイノベーションが行われていると紹介。AWS、GCP、Azureだけではなく、IBMやAlibaba Cloudなどもその例として挙げられているところから、IBM、Alibabaという現状ではあまり目立たないパブリッククラウドベンダーに対しても気を使っていることが分かる。

再度、Cormier氏に壇上に呼ばれたBurr Sutter氏は、ハイブリッドクラウドのデモを行うことになった。今回はテキサスにあるAzureとオハイオにあるAWSのデータセンターを使い、ステージ上のプライベートクラウドクラスターからRed Hat AMQのメッセージングシステムでつなぐデモだ。それぞれにOpenShiftがインストールされ、壇上のクラスターにあるコンテナベースのアプリケーションが、AWSとAzureにメッセージを送信するというものだ。

ここでのシナリオは、オハイオのAWSに若干の遅延が発生するというもので、Red Hat Insightを使ってその原因を探すというのが次のステップである。Red Hat Insightは、Red Hatの顧客のシステムからサポートに使用できる情報をRed Hatが開発した機械学習ベースのアプリケーションに集約することで、既知の脆弱性が顧客システムに存在かどうかの確認や、システムの不具合や構成のベストプラクティスを共有するなど、サポートのためのSaaSシステムだ。

OpenShiftのデモをAWS、Azureを使って実行

OpenShiftのデモをAWS、Azureを使って実行

ここではAWS上のシステム構成に問題があったとして、AnsibleのPlaybookをそこからダウンロードして自動的に構成を変更することが可能だという辺りまでのデモを行った。

機械学習で支援を行うRed Hat Insightのデモ画面

機械学習で支援を行うRed Hat Insightのデモ画面

ここで2つ目のデモが完了し、再度Paul Cormier氏が登場する。ここからRed Hat Enterprise LinuxとKVMからOpenStackによるプライベートクラウド、そしてコンテナをエンタープライズが求めるアプリケーションの姿として紹介し、3つ目のデモを開始した。これはエンタープライズの中では多くのユースケースがあると思われる、VMwareベースの仮想化基盤と仮想マシンを、KVM上のコンテナに移行するというものだ。

最初の段階は、VMware上のWindowsの仮想マシン情報を読み取り、KVM上のWindows仮想マシンに移行するデモだ。ここまでは、仮想マシンから仮想マシンへの移行なので理解がしやすいだろう。その次に行ったデモはVMware上の仮想マシンが使うSQL Serverを、OpenShift上のコンテナで動くSQL Serverコンテナに切り替えるというものだ。すでにOpenShiftのサービスカタログに存在する「SQL Server」を立ち上げて、OpenShiftで稼働しているWindows仮想マシンのyamlファイルのIPアドレスを書き換えるだけで、Windows仮想マシンからコンテナ上のSQL Serverにアクセスできるというデモを実行。この機能はまだTech Previewということで、2018年の後半にユーザーが使える機能としてリリースが行われる予定だという。

ここまででハイブリッドクラウドや、既存のVMware環境からの移行という、エンタープライズ向けのメッセージングとしては強烈なポイントを短めのデモに凝縮した形になった。

そして古くからの顧客としてRoyal Bank of Canadaが登壇。ここでも伝統的な企業においても、デジタルトランスフォーメーションが進んでいることを顧客自らに語らせる形になった。

午前中最後のパートには再度Paul Cormier氏が登壇し、より未来に向けた話としてCoreOSの買収について語った。ここではOpenShiftの中のポートフォリオとして、Red Hat CoreOSという名前で製品化されることが発表となった。これまでOpenShiftで稼働するコンテナ向けのミニマムなサイズのLinuxとして、Red Hatが開発していたAtomic Hostを用いていたが、今後はそれをCoreOSに入れ替えるということになるようだ。

Red Hat CoreOSのロードマップ

Red Hat CoreOSのロードマップ

この写真は初日に行われたプレス向けブリーフィングで使われたものだが、Atomic HostとCoreOSのContainer Linuxが統合されて、Red Hat CoreOSになると説明されている。

ここまでで初日の午前中のキーノートが終わった。短い時間を割り振りながら顧客のトークとデモを交互に見せつつ、エンタープライズに求められるポイントを効率的に訴求したキーノートとなった。CEOのJim Whitehurstは最小限の露出にとどめ、デモ中心にAWSそしてAzureを使ったハイブリッドクラウドのソリューションと、エンタープライズ向けにはVMwareからの移行、そして最後に最新のトピックとしてCoreOSを持ってくるところなど、実に良く練られた構成だったと言えよう。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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