はじめに
Web 2.0という言葉で近年活発に議論されている次世代Webビジネスの世界。その中のキーワードの1つであるAjax(注1)を使用した事例がここ最近増え てきている。Ajaxをうまく活用すれば、従来のシステムをより使いやすく、動的で楽しいものにかえることができる。しかし、すべてのシステムがかえられ るわけではなく、費用対効果についても検討する必要がある。
Asynchronous JavaScript + XML の略。Webブラウザに実装されているJavaScriptのHTTP通信機能を使って、非同期(Webページのリロードを伴わない)でサーバとデータのやり取りを行なう手法。
今回は、ヤマトホールディングス株式会社のグループ企業「ヤマトリース株式会社」が、自社の顧客に向けて2006年4月に本稼動させた「中古物件紹 介サイト(ヤマトシステム開発株式会社と株式会社HOWSが共同開発)」を事例として、実際に開発に携わった筆者が、Ajaxを適用した理由とその効果に ついて紹介する。
サービス概要
ヤマトリースが顧客であるグループ関連の運送会社にリースしているトラックの中には、使用されていないものがある。運送会社にとっては、それらのト ラックを引き取って売却したほうがリース料を払い続けるよりも負担が少なくなる。しかしこれまでは、買い手を捜すのに手間がかかりすぎるため、結局は安く 売ることがほとんどだった。
そこでヤマトリースは、全国の顧客(グループ関連運送会社)の中古トラック売買を仲介する仕組みを考案した。それが中古物件紹介サイトである。
システム自体はシンプルであり、いかに顧客に何度もアクセスしてもらうかがポイントとなる。このシステム(図1)は顧客(全国のグループ関連運送会 社)、営業担当者(ヤマトリースの各営業所)、管理者(ヤマトリース本社)の3つの権限によって機能が分けられている。

図1:出品から落札までの流れ
まず、トラックを売却したい運送会社が担当の営業所にトラックの出品を依頼し、営業所はトラックの情報や写真をシステムに登録する。この時点ではま だ非公開であり、ヤマトリース本社がこの登録されたトラックをチェックし、販売希望価格や入札時期などの情報を追加して全顧客に公開し、はじめて入札開始 となる。
中古トラックを購入したい顧客は、公開されている中古トラックの情報を閲覧し、購入したいものがあれば購入希望価格を決めて営業所に入札を依頼する。入札期間が終了すれば入札している顧客の中から落札者が決定される。
このように、機能的にはシンプルなシステムである。なお、トラックの売買に直接関わる処理では顧客の希望に応じて、営業担当者がシステムの利用を代行する形をとっている。