非コミュプログラマーが独立するのに必要なたった2つの勇気
株式会社クレイジーワークス 代表取締役 総裁
村上福之(@fukuyuki)
ケータイを中心としたソリューションとシステム開発会社を運営。歯に衣着せぬ物言いで、インターネットというバーチャル空間で注目を集める。時々、マジなのかネタなのかが紙一重な発言でネットの住民たちを驚かせてくれるプログラマーだ
クレイジーワークスで代表取締役総裁をしている村上福之(@fukuyuki)と申します。日々、いろんなソフトウエアの開発にかかわっています。 おかげさまで、それなりに売り上げも立ちました。
『エンジニアtype』の連載のために写真を撮り下ろしてきてくれた村上氏。これから、どんなネタを書いてくれるのかが楽しみだ
『Gumroad』のパクりサイトが設立五日後に売却されたり、『Androbook』を事業譲渡したり、『AndroMusic』がサイバードさんによって事業化されたり、開発にほんの少しかかわっていた『NOTTV』が(カオスながらも)何とかスタートしたりで、そこそこご飯くらいは食べれるようになりました。
今日は、僕のような非コミュなプログラマーが独立するのに必要なたった2つスキルについて書きたいと思います。それは、スキルというより勇気だと思ってます。たった2つだけです。
(1) nullなり適当な値をつっこんでコンパイルする勇気
(2) プライドを捨てて、人に聞いたり、頼ったりする勇気
これだけです。
最近、時期が時期なので、多くのエンジニアやプログラマーからの「そろそろフリーになりたい」、「独立してノマドな生活がしたい」という相談が異常に増えています。「独立するには、どういうスキルや知識が必要か?」「独立するのに必要なコネは何ですか?」という「必要なパラメータに関する質問」が多いです。
僕は、すさまじく人とコミュニケーションを取るのが苦手ですし、頭も良くありません。プログラムも上手くないです。友達を作るのも苦手です。コネも何もなかったです。口も悪いです。無駄にプライドだけ高かったりします。何とか独立して、いろんな人に助けれられて、ゴハンが食べれるようになりました。何も持っていませんでした。使ったのは先ほどの2つの勇気だけです。
「人生とりあえずコンパイル」で会社設立
別に個人事業主でも会社でも良いのだけど、僕が独立した時は「何か転職とか面倒くさいし、リクナビの担当者が好きじゃないし、カッコイイから会社設立」と理由だけで設立しました。ただ、多くのアスペルガー系プログラマーと同じように、僕は事務処理という事務処理が苦手でした。そして、今でもまともに書類一つ書けません。
よくある、『7日で株式会社をつくる本』という本を買ってはきたのですが、アスペルガー系プログラマーな僕は紙の書類を作る根気がそもそもないです。会社を登記する書類というものは、つまらないです(今なら行政書士を使うのですが)。
そんな本を読んで家でごろごろしていたら、オカンに見つかって、怒られました。
「あんたが、会社なんか作って上手いこといくわけあらへんやろ! ええか! アメリカンドリームなんかあらへんで!」
オカンに怒られて機嫌が悪くなりました。当時28歳です。母親が言うのも無理ないくらい僕はだらしがない人です。バツイチだし、出戻り(?)だし、朝起きないで昼まで寝てるし、無職だし、夜中に独り言を言いながらアホなコード書いてますし、オンラインゲームですら会話が続きません。「社会に対応できない系プログラマー」の典型のような人間です。
僕が持っていた勇気は一つだけです。すべてのプログラマーが持っている勇気です。そう、すべてのプログラマーが、新しいAPIを使うときに、必ず使う勇気です。
nullなり適当な値を突っ込んで実行する勇気
そう、それだけです。
クレイジーワークスの登記資料一式は、現在『ameroad』にて売り出し中だ
本に書いてある書類を作るのも面倒くさいので、法務省のWebページから会社登記のテンプレートをダウンロードして、面倒くさいところは空欄で法務局に出しました。
当然、作成例なので「事業開始年度○○」「決算期○月」「発行株式数○○株」となっているのですが、その「○○」のまんま出しました。やる気なさ過ぎです。事業年度とか、発行株式数とか、決算月とか当時の僕には分かりません。プログラマーにそんなもの分かるわけがありません。興味も無いのでググって調べることもしませんでした。nullつっこんで出せばいいや、人生とりあえずコンパイルだ、と思ってました。
当たり前ですが、後日、法務局に呼び出されました。法務局は大量のコンパイルエラーを返してくれました。僕がテンプレのまま出した登記書類には、付箋紙がびっしり貼ってありました。法務局の担当のおっちゃんは、僕を奥の部屋に連れて行き、一行一行、「ここにこれを書くんや」「発行株式数?100万の会社やったら100株でええやろ。」「ここに訂正印押すんや」「訂正文字数をここに書くんや」と1時間半くらいかけて、教えてくれました。
そんなわけで、僕がはじめて作った会社の定款や登記書類は訂正印だらけで、原型をとどめていません。登記簿は書き直すところが多すぎて、全部、おっちゃんの指導で書き直しました。非常にカッコ悪い船出です。何だか書類一つ作れない自分が情けなくなりました。
「あー、あの、すんません、僕、こういうのサッパリ分からないもんで」
法務局のおっちゃんは、割り印を押しながら、僕に言ってくれた。
「ええか、これからもな、分からんかったら、人に聞いたらええんや。誰でも何でも最初から、上手いこといくもんちゃうんや。人生、勉強やで」
法務局のおっちゃんの一言は、僕の心に残りました。
そんなわけで、僕は「プライドを捨てて、人に聞いたり、頼ったりする勇気」を手に入れたわけです。今までググった知識を聞きかじりして、知ったかぶりで、プライドだけが高かったプログラマーに一つのスキルが追加されました。
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