Unreal Engine 4ってどんなソフト?

2015年8月6日(木)
出村 成和
Unreal Engine 4の歩き方
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この記事は、書籍『Unreal Engine 4の歩き方』の内容を、Think IT向けに特別にオンラインで公開しているものです。詳しくは記事末尾の書籍紹介欄をご覧ください。

Unreal Engineは元々はUnreal(一人称視点シューティングゲーム)向けのゲームエンジンとして開発されました。それが数回のバージョンアップを重ね、他のゲームデベロッパー向けにも外販されるようになり、今に至ります。では、UE4がどのようなソフトウェアであるか見ていきましょう。

Unreal Engine 4ってどんなソフト?

UE4は、一般的にはゲームエンジンと呼ばれています。もう少し正確に言うと、ゲームの基礎となるライブラリ(つまりゲームエンジン)と、ゲーム制作に必要な統合開発環境(Windows・Macアプリケーション)から構成されています(その他、Maya*1のプラグインも提供されています)。そのため、実際に使ってみると、ゲームエンジンというよりはゲーム開発環境という印象を強く受けるかもしれません。

[*1] Autodesk社製の3DCG用ソフトウェア

Unreal Engine 4の編集画面
図1: Unreal Engine 4の編集画面

また、この統合開発環境のみ(コンパイラなどを追加でインストールすることなく)でWindowsやMac向けの実行ファイルが作成できます。つまり、各種アセット*2を用意したあとは、UE4のみでゲームを作ることができるのです。

UE4で開発可能な対象プラットフォームは、PC(Windows、Mac、Linux)、Web(HTML5/WebGL)、モバイル(Android、iOS)、コンシューマゲーム機(PS4、Xbox One)となっています。

UE4には、ゲーム制作などに利用できる3Dモデル、マテリアル、サウンドといったアセットが豊富に用意されています。他のゲームエンジンやライブラリでは「ゲーム制作に必要なライブラリは提供するけど、ゲームで使うアセットは自前で用意してね」と言わんばかりのものも珍しくありません。しかし、UE4は標準で豊富なアセットが用意されているうえ、ベンダー各社がアセットを販売するマーケットプレイスも提供されているため、グラフィックスなどのデータが用意できずに困る事例は少なく、ゲーム開発に着手しやすくなっています。

[*2] 3Dモデル、サウンド、ライブラリなどを指す。元の意味は資源。

得意なジャンル、不得意なジャンル

UE4はゲームエンジンである、という話を聞くと「どんなジャンルのゲーム開発にも利用できる!」と思ってしまうかもしれません。しかし、残念ながら世の中にはそんな万能なゲームエンジンはありません。これはUE4も例外ではなく、開発が得意・不得意のゲームジャンルがあります。

ではUE4が得意なゲームのジャンルとは、どのようなものでしょうか? これはプロジェクトを新規作成する際のテンプレートを見ると分かります(図2)。

  • 一人称視点*3
  • 三人称視点*4
  • レースゲーム
  • 2Dスクロールゲーム

などが挙げられます。

[*3] 主人公自身の視点のこと

[*4] 主人公や敵でない、第三者的視点のこと。神視点とも言う。

豊富なゲームテンプレート
図2: 豊富なゲームテンプレート

このような三次元のアクションゲームなどであれば、UE4が適しています。また三次元に限らず、二次元(スプライト)のゲームも制作できます。これは、UE4がPaper2Dといった2Dゲーム制作を支援するプラグインもサポートしているためです。

ここで挙げたジャンル以外のゲーム、例えばテキスト重視のアドベンチャーゲームでは、あえてUE4で開発するメリットはないでしょう。

契約について

以前はUE4を利用する際に、エピック・ゲームズとサブスクリプションライセンス契約(月額19ドル)を結ぶ必要がありましたが、2015年3月のGDC(Game Developers Conference)において、UE4の無料化が発表されました。Webサイトhttps://www.unrealengine.comでユーザー登録を行った後に、ソフトウェアをダウンロードすることで、すぐに使い始めることができます。

ただし、完全に無料で利用できるわけではなく、ライセンス料が発生する場合もあります。具体的には、UE4を利用したゲーム(PCやコンシューマ)を有償で販売し、四半期で$3000以上の売り上げがあった際には、売上金額の5%をUE4の開発元であるエピック・ゲームズに支払わなければなりません。また事前にエピック・ゲームズに対し、ゲームをリリースする旨を伝えておく必要があります。

また、ライセンス料の支払いが免除されるケース(例えば、アミューズメント施設向けのゲーム、ゲーム以外のソフトウェア、映像作品など)や、法人別にライセンス契約を結ぶカスタムライセンスもあります。詳細については、契約書で確認する、もしくはエピック・ゲームズ・ジャパンに問い合わせるとよいでしょう。

◇ ◇ ◇

Unreal Engine 4(以下、UE4)は、リアルな3Dグラフィックスの表現が得意なゲームエンジンです。UE4は本文中で紹介したように様々なゲームで採用されており、最近ではPS4版「ドラゴンクエストXI」がUE4で開発されていることが発表されたのは記憶に新しいところです。

UE4はプロも個人も同じく利用できます。誰もが無償でフルセット(機能の利用制約なし)が利用できる上に、一定の売り上げが無い限りライセンス料が発生しないため、開発リソースが限られている個人開発でも導入しやすいゲームエンジンと言えるでしょう。

この記事のもとになった書籍
Unreal Engine 4の歩き方

出村 成和 著
価格:1,500円+税
発売日:2015年4月17日発売
ISBN:978-4-8443-3810-9
発行:インプレス

Unreal Engine 4の歩き方

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フリーランスプログラマー。主にC、C++、アセンブラがメインでいろいろと活動中。PS1、PS2を中心にゲーム開発に携わっていた時期がある。Oculus RiftなどのVR環境を使ってソフトを作ろうかと画策中。

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