システム運用における、5つの大間違いとは(2)

2014年2月27日(木)
株式会社アールワークス

間違い2:仮想化すれば運用コストが下がる

あるネット通販のシステムを稼働させているA社では、システムの運用・管理にかかるコスト削減と、システムへの大きな設備投資なく拡張できる利点をねらい、2009年にこれまで物理的なサーバー数十台で構成していたシステムをクラウドへ移行した。この例に限らず、最近では仮想化やクラウドの利用が、システムのコストダウンという流れになっているように見受けられる。上記はまさにその典型的な例である。

しかし、果たして本当にそうだろうか。まずは、システムの維持・管理にかかるコストとは何かを考えてみる。

仮想化とシステム管理コスト

システムの維持・管理にかかるコストは、一般にネットワークやサーバー、OS・ミドルウェア、アプリケーションの維持・保守コストからなる(表1)。

表1 システムの維持・管理にかかるコストの構成
構成要素 コスト詳細
ネットワーク・サーバー ハードウェア保守費用 (もしくはレンタル費用) データセンターラック利用料
インターネット回線費用
OS・ミドルウェア 有償ソフトウェアライセンス・保守費用 環境維持コスト
・バージョンアップ対応コスト
・セキュリティホール対応コスト
アプリケーション 環境維持コスト 機能追加改修コスト
不具合修正対応コスト
全体 障害監視・障害対応コスト 運用改善コスト
・システム利用者の動向変化に応じた システム増強などの計画および実施の見直し
・効率の悪い障害対応手順の見直し
上記各対応の管理コスト

この表の中で、仮想化によってコストダウンできるのはどれだろうか。

明らかに変わるのは「、ネットワーク・サーバー」に分類されるものだ。パブリッククラウドを利用すれば、「OS・ミドルウェア」の一部や「全体」のシステム増強が対象に入ってくる場合もあるが、仮想化に限れば、コストダウンの余地は必ずしも大きいとは言えない。なぜならば、アプリケーションの環境維持コストや監視・障害対応コストは、システムが物理環境であろうとクラウドや仮想環境であろうと、ほとんど変わる部分がないからだ。仮想化は物理的なコストを下げることには貢献するが、本当の意味の「運用」コストを下げるわけではないのだ。

特にプライベートクラウドと呼ばれる、自社システム内に仮想環境を構築するケースでは、「ネットワーク・サーバー」に分類されるコストを削減できても、仮想環境を維持するためのコストは新たに発生する。こうしたクラウドや仮想化によって、逆にコスト増になる要素を考慮していないケースは意外に多いと言えよう。

企業においては、しばしば、20世紀型の運用設計で作られたシステムをそのまま仮想化するアプローチが見られる。これは、古いシステムを延命させるためにサーバーを仮想化する目的では有用なアプローチだが、それによって運用コストを削減できるわけではない。

著者
株式会社アールワークス
1985年に株式会社アステックとして創業。2000年10月の株式会社アールワークス設立を経て、2005年6月より現在の1社体制に移行。同時に、社名を(株)アールワークス(Rworks, Inc.)に変更。
設立以来、IDC事業やITマネージドサービスを行い、そこで培ったネットワークインフラの運用ノウハウや、さまざまなソフトウェアを開発した技術力を結集し、現在、ITシステムのリモート運用サービスをはじめとして、インフラ構築、ハウジングやホスティングサービス、SaaS/ASP型のシステム監視基盤の提供を行う。単純なオペレーターではない技術提供をベースにした24時間365日の統合的なフルマネージドサービスを提供している。

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