アプライアンスの動向とWebサイトの最適化
多様化するアプライアンス製品
企業ネットワークやデータセンターにおいて各種のネットワーク・サービスを提供しているのがアプライアンス製品です。このアプライアンス製品の世界では、日々革新が続いています。 本連載では4回にわたり、各種アプライアンス製品の最新動向を紹介します。
ネットワークにおけるアプライアンスの考え方は、おそらくルーターのソフトウエアをUNIX系のサーバーから取り出し、専用の機器として開発したことが始まりでしょう。その後インターネットの普及に伴ってファイアウォールがアプライアンス化されるなど、機能が多様化し、続々と新しい製品が開発されています。
アプライアンス化の基本的な流れは、サーバー上で実行していた機能をネットワーク上に移動し、専用機器として実装する、というものです。これにより、処理の高速化やサーバー上の処理負荷の軽減、ネットワーク環境の拡大に応じたスケーラビリティ、アプリケーションと運用/管理/セキュリティ機能の分離、インストールや設定/運用の負荷軽減、といったメリットが生まれます。
このため、ルーターやファイアウォールといったネットワーク固有の機能だけでなく、本来であればアプリケーションやサーバーの機能だったものまでがアプライアンスとして開発されるようになったのです。
アプライアンスの製品形態としても、標準的なサーバー・プラットフォームにアプリケーションとして機能を搭載したものから、専用OSに機能を統合したもの、独自開発した専用のハードウエアを備えるものまで、多様化しています。
アプライアンス製品の全体動向 - 仮想化とクラウド化による進化
アプライアンスの全体的な動向としては、1990年代後半から始まったアプライアンスの多様化が継続しており、今後も続いていくでしょう。多様化の背景には、主に4種類の要因があるようです。
(1)ソフトウエアとして提供されていた機能を専用機器化
例えば最近では、DNSやDHCPなどのネットワーク基盤サービスがアプライアンス化されています。
(2)複数のアプライアンス機能の統合
異なる種類の製品で提供されていた機能を1台で提供するケースです。ファイアウォールにウイルス検知などを統合したUTM(統合脅威管理)が良い例です。
(3)ネットワークの進化に対応
通信の高速化などに伴い、新しいサービスをネットワークで提供します。データ・バックアップなどが挙げられます。
(4)アプリケーション機能の取り込み
もともとアプリケーションに実装されていた機能をネットワークで提供します。負荷分散やアプリケーションの高速化などが行われています。
より最近の動向としては、もちろん仮想化とクラウド化による影響を無視するわけにはいきません。これらの要因によって、アプライアンスには以下のような動きが起こっています。
(a)仮想化に必要なネットワーク機能を搭載
仮想サーバー上のアプリケーションが要求するネットワーク・サービスに対応するため、仮想化に特有の機能を搭載したり、仮想化ソフトウエア(ハイパーバイザ)との連携機能を提供するようになってきています。
(b)仮想ネットワークへの対応
サーバー上に作られた仮想ネットワークも、運用管理やセキュリティ管理の対象です。このため、ネットワーク・サービスを提供するアプライアンスも、こうした仮想ネットワークを管理できるよう、対応を始めています。
(c)アプライアンスの仮想化
仮想化環境では、ネットワーク・サービスもサーバー機と同様、より柔軟な対応が求められるケースがあります。このため、仮想アプライアンスの形でサーバーに搭載できるアプライアンス製品が出始めています。
それでは、以上のような動向を踏まえて、アプライアンスの動向を紹介していきましょう。この連載では、製品分野ごとにアプライアンス製品の動向と最新の製品技術を紹介します。
第1回の今回は、Webサイト・ネットワークでアプリケーションの最適化を行う「アプリケーション・デリバリー・コントローラ」(ADC)を紹介します。以降、第2回はネットワーク基盤サービス、第3回はストレージ、第4回はセキュリティと、アプライアンスが重要な役割を果たしている分野を順に紹介していきます。