VMware vSphereの運用課題
サーバー仮想化に関する世の中の状況
VMware vSphereは、ハイパーバイザ型のサーバー仮想化ソフト「VMware ESX/ESXi 4」を中核とした、仮想サーバー環境の構築/運用ソフト群です。エディション構成によって、ライブ・マイグレーション機能やストレージのシン・プロビジョニング機能など、各種の運用管理機能を提供します。
本連載では、テーマとして「VMware vSphereの運用課題と解決策」について解説します。はじめに、サーバー仮想化に関する世の中の状況を整理します。次に、「サーバー仮想化」と「VMware社製品」が、市場でどう評価されているかを分析します。
CPUの高性能化と低稼働率という課題
現在販売されているサーバー・ハードウエアは、数年前の機種と比べて10倍以上の処理能力を持っています。また、伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)がユーザーのデータセンターに対してサーバー仮想化を目的としたアセスメントを実施すると、大多数のサーバー機でCPU稼働率が10%以下である事が分かります。具体的には、図1を参照してください。
ハードウエア処理能力が10倍になっているということは、単純化して考えると、稼働中のアプリケーションを変更せずにハードウエアをリプレースした場合、「10%(移行前の稼働率)÷10(新旧サーバーの性能比)」で、稼働率は1%以下になると予想できます。
結果として、この様な低い稼働率でのサーバー利用は、各ハードウエア/ソフトウエア・ベンダーに対して購入/保守費用を余分に支払う状態になっていることになります。こういった状態を回避し、購入/保守費用の最適化を実現するために、サーバー仮想化は必須な技術と言えます。
サーバー仮想化市場におけるVMware社の位置付け
サーバー仮想化製品では、2009年現在、米VMwareが開発したVMware vSphereが業界のデファクト・スタンダードと認知されているとCTCではとらえています。実際、CTCの2009年度上期の実績も、90%以上のサーバー仮想化案件でVMware社製品が採用されています。
今後に関しては、他社の製品を販売する機会も拡大すると想定しています。
サーバー仮想化≒コスト削減の有効手段
VMware社の製品は、この100年に一度の不況にもかかわらず、2008度上期との販売金額比較において、2009年度には2倍以上の実績で推移しています。この結果から、顧客からもコスト削減の処方せんとして、サーバー仮想化技術が評価されていると認識しています。
サーバー仮想化案件に関するトレンドの変化
次に、CTCにおける案件状況の遷移から、顧客の「サーバー仮想化」に関するスタンスの変化について説明します。また、「サーバー仮想化」の導入目的も同時に解説します。
トレンドの変化
2008年度までは、サーバー仮想化というとPOC(Proof of Concept: 概念実証)としての試験導入や開発/検証環境への導入が多く、また、比較的規模が小さい案件に多く採用されていました。一方、2009年度のCTCの感触としては、本番環境への採用が増加していて、また規模の大きい案件での採用も増えています。
さらに、サーバー仮想化を目的としたアセスメントを必要とする様な、既存システムに対するサーバー統合の案件だけではなく、新規のシステム調達やシステム更改にあわせた調達においても、サーバー仮想化が採用されています。つまり、CPUの高性能化や不況の影響により、新規調達に関してもサーバー仮想化によるコスト削減が求められる状況へと変化しています。
導入目的の変化と不安要因
サーバー仮想化は当初、ITインフラの柔軟性を生み出す技術として認識されていました。
しかし、現在では柔軟性を生み出す技術という見方ではなく、コスト削減、つまりハードウエアの導入費/保守費用およびデータセンターの不動産/電力コストを削減する手段としての見方だけが浸透しています。
ITインフラの柔軟性を生む手段としては、その効果に懐疑的な顧客も多く存在します。この理由としては、「サーバー仮想化製品を導入するだけで柔軟なITインフラが実現する」というベンダーのバラ色の宣伝文句や、数年前のサーバー仮想化製品が抱えていた課題への印象の悪さがあるでしょう。
次ページ以降では、こうしたサーバー仮想化に関する不安点を分析し、現時点では考慮しなくて良いことを切り分け、あらためて製品/技術評価を行った上で、「VMware vSphereの運用課題と解決策」に関する整理を進めます。