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  インタビュー

Mirantisのレンスキー氏「来年初頭には日本での拡大戦略を発表」と語る

2015年11月10日(火)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita

OpenStack Summit Tokyoに伴い、今年3度目の来日を果たしたOpenStack専業のOpenStackインテグレーター、Mirantisの共同創立者で最高経営責任者であるボリス・レンスキー氏にインタビューを行い、日本での戦略、そしてRed Hatとの激しい競争などについて話を聞いた。

ーーーまずは日本でのビジネス展開についてきかせてください。2015年の1月に日本法人が出来ていますが、今後の目標は?

まずは日本と言う市場をよく理解することから始めています。今は代表である下平1名(編注:ミランティス・ジャパン合同会社 リージョナルディレクターの下平 中氏、写真左)ですが、今後、ジョイントベンチャーを作るのか、社員を増員するのかなどについて検討を行っています。お客様からはよくご意見を頂いていまして、最低でも20名から25名くらいの人員が必要だろうとは思っています。直近のゴールとしては日本での存在をもっと強くアピールしていくことになります。来年の頭ぐらいには日本での戦略を発表できると思います。

ボリス・レンスキー氏
ボリス・レンスキー氏

ーーー実際にMirantisが法人として登記されているのはアメリカですが、ボリスさん自身はロシア人でMirantisもロシアに開発拠点があると聞きました。その辺りの概況を教えてください。

現在は全部で社員は800名程度になりました。我々の開発拠点はロシアとウクライナ、それにポーランドが主体です。アーキテクトのようなスタッフはアメリカにもいます。他にもフランスやドイツ、オランダのアムステルダムにもオフィスを持っています。中国にもジョイントベンチャーの形で進出しました。これは独立系としては最大のパブリッククラウドプロバイダーであるUCloudとの50%づつの出資のジョイントベンチャーとなっています。

ーーー実際にロシア人の社員も多いと思いますが、会社としてのユニークな文化やモットーがあれば教えてください。

他の会社の違いは実はあまりよくは分かりません。なにせこの会社でしか働いたことが無いのですから(笑)。我々はアメリカの会社でロシアやウクライナなどにオフショアの開発拠点を持っていると言うだけで他のIT企業、VMwareやMicrosoftなどと大きな違いがあるとも思いません。もちろん、ロシア人をアメリカに連れてきて仕事を進めているということは多いのですが。モットーとして掲げているのは「Getting Things Done」ですね。とにかく結果を出す、仕事を終わらせるということをモットーにしています。あとは既に800名を超える人員が働いていますが、なるべくフラットな組織にして階層化を避け、官僚化しないようにするということですね。何かを決める時も素早く判断ができるようにしています。あと我々は普段はスーツは着ません(笑)日本でパートナーやお客様に会うために今回はこんな恰好をしていますが(笑)

ーーーMirantisのOpenStackの競合力について教えてください。市場にはいろいろなOpenStackディストリビューションがありますが、主な競争相手はRed HatのOpenStackと思っていいですか?

そうです。SUSEはドイツの市場では少しは存在感がありますが、それだけです。Canonicalもそれほど競合にはなりません。また彼らはあまりコミュニティに対して貢献を行っていないと思います。新しいリリースが出てそれと同時に自社のディストリビューションを発表するだけで実際にテストやエンタープライズとして利用に耐えうるように製品の強化を行ってはいないと思います。その意味では真の競争相手はRed Hatだけと言って良いでしょう。Red Hatのやり方は、OpenStackとOSであるRHEL(Red Hat Enterprise Linux)、彼らがRHELに最適化したハイパーバイザーであるKVM、ストレージであるCephそしてその上で動くPaaSであるOpenShiftを全てセットにして売り込む方法をとっています。Red Hatを支持している顧客にとってはこの組み合わせが良いという人もいるでしょう。しかしMirantisのやり方はPure OpenStack、つまりOpenStackだけをソフトウェアアプライアンスにして提供すると言う方法です。より詳しく説明するとOpenStackの複雑さの根本はコントローラーノードの作り方に依存します。その部分をソフトウェアアプライアンスとして提供します。MirantisのOpenStackにとってハイパーバイザーもストレージも一つのエンドポイントとして管理します。その方法をとればVMwareのハイパーバイザーもKVMもホストOSとなるUbuntuもヘテロジニアスな環境として管理が可能になるのです。

ーーーOpenStack FoundationのCOOのMark Collierもプレスブリーフィングで話をしていましたが、OpenStackのネットワーク機能が今注目されています。既にサーバーの仮想化は当たり前、クラウドのプラットフォームとしてのOpenStackも疑問の余地が無いところですが、Mirantisとしてのネットワークスタックとしては何を推奨しているのでしょう?

我々の標準的な構成ではNeutronにOpen vSwitchの利用を進めています。特に物理サーバーが200台以下の構成ではそれで大丈夫です。それ以上の構成、例えば通信事業者の場合などはOpenContrailやMidokura、VMwareのNSXなどを提案することもあります。元々Neutronは単なるAPIでQuantumとしてNiciraの仮想化ネットワークスタックであるNSXにパケットを流すものでしたが、それがNeutronと名前を変えてそれ自体がSDNとして機能するように進化してきました。それはこの先も続くと思います。OpenStackのリサーチによると既にNeutronとOpen vSwitchが90%近い比率で利用されていることを示しています。ですので、このままNeutronが進化することを信じています。

ーーーOpenStackは導入するだけではなく、アップグレードすることがITマネージャーにとって頭痛の種となっています。それについての解決策はなんでしょう?

FuelはOpenStackのライフサイクルマネージメントのツールとして既に実績があります。ノードの追加や削除、クラウドの作成からオートディスカバリー、ログの収集まで既に実際に本番環境で使われているものです。我々の最大の顧客であるAT&Tは全世界で60以上のデータセンターでFuelを稼働させてOpenStackを運用しています。しかしそのFuelであってもパッチの適用やデイリーのオペレーションは可能でも、アップグレードそのものを簡単に行うことはできません。それを可能にするためにはOpenStackそのものが管理データベースのスキーマの互換性やAPIの互換性を保つことが必要です。ですので、Fuelだけでできるものではありません。

ーーーHPはHelion OpenStackの2.1でローリングアップグレードが可能になると先ほど説明を受けましたが?

それはHPの言っていることなので本当のことは分かりませんが、実際にローリングアップグレードそのものよりもダウンタイムを伴うアップグレードをちゃんと行うことがまずは必要で、それ自体がOpenStackにおいてはとても苦痛を伴うものであることを我々は知っています。ですので、本当にローリングアップグレードがOpenStackで可能になるかどうかは疑問視していますし、HPほどには楽天的にはなれませんね(笑)。近い将来といってもあと数年はかかるでしょうが、いつかは可能にはなると思います。

今回が今年で3回目の来日というレンスキー氏、Summitの会期中もフルに打ち合わせが詰め込まれて若干疲れ気味の表情ながら、製品の説明や日本でのビジネス展開を熱く語ってくれた。来年初めの戦略発表が楽しみである。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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