Azure AppFabricを用いたオンプレミスとAzureの連携
はじめに
2010年1月31日まで無料で利用可能なWindows Azure platform、皆さま活用していらっしゃるでしょうか。Windows Azure platformに限らずクラウド・サービスでシステムを構築する場合、従来のシステム構築とは考え方の異なる点が多く、戸惑う人も多いと思います。
また、Windows Azure platformの機能は膨大であり、バージョン・アップやサービス名の変更が行われていますので、全機能を把握することはなかなか難しいと思います。
本連載では、Windows Azure platform上のシステムとオンプレミス・システム(自社設置・システム)の連携を行う際に重要な機能を提供する、「Windows Azure platform AppFabric」について紹介したいと思います。
連載を通して「Windows Azure platform AppFabric」とは何か、どういった機能があるのか、を理解していただければ幸いです。また、Windows Azure platform上のシステムとオンプレミス・システムを連携させるシナリオを想定し、Windows Azure platform AppFabricの利用例を紹介します。
連載第1回となる今回は、Windows Azure platform AppFabricが提供する機能について解説し、同機能を利用した簡単なアプリケーションの動作確認を行います。
なお、お読みになる際に以下のスキルがあれば、より理解が深まります。ご参照ください。
- .NET Frameworkについての基礎スキル
- Windows Communication Foundation(WCF)についての基礎スキル
- Windows Azure platformにアプリケーションをデプロイして動作確認済み
※WCFなどの.NET Frameworkの基礎スキルを学習するには、「Code Recipe -.NET 開発サンプル コード集」がオススメです。
【本連載における開発環境】
- Windows 7 Ultimate 64bit版
- Visual Studio 2010 Beta2
- Windows Azure platform AppFabric SDK V1.0(以下、AppFabric SDK V1.0)
AppFablicには2種類ある
Windows Azure platform AppFabricは、オンプレミス・システムとWindows Azure platform上のシステムを連携させるための機能を提供します。一方で、「Windows Server AppFabric」は、Windows Server 2008 RC2向けに提供された機能です。
以下では、それぞれについて説明します。
(1)Windows Azure platform AppFabric
以前は「.NET Services」と呼ばれていた機能であり、オンプレミス・システムやWindows Azure platform上のシステムに接続するための機能を提供します。同機能を用いることで、エンタープライズ(企業の情報システム)をクラウドに適用するためのアーキテクチャーとして提唱されている「ソフトウェア+サービス」を容易に実現することができます。
具体的には、インターネット越しにサービスを利用する際に問題となる「ファイアウォール越しサービスの接続問題」、「シングル・サインオンの問題」、「非同期サービス連携実現の問題」を解決する機能です。
(2)Windows Server AppFabric
本記事では深く取り扱いませんが、Windows Server AppFabricについても簡単に紹介します。
Windows Server AppFabricは、IIS(Internet Information Services)上で動作するアプリケーションを容易に「構築」、「運用」し、さらに「スケール」させる機能を統合しています。
コードネーム「Dublin」と呼ばれるWCFやWF(Windows Workflow Foundation)を拡張する機能と、コードネーム「Velocity」と呼ばれる分散メモリー・キャッシュ機能を統合し、Windows Server 2008 RC2向けに提供されています。
Windows Server AppFabricの詳細な機能を知りたい場合は、MSDN(Microsoft Developer Network)に公開されている情報を別途参照してください。
次ページからは、Windows Azure platform AppFabricの機能について解説していきます。