連載 :
  インタビュー

EMCがハイパーコンバージドで先行するNutanixを追撃する切り札「VxRail」を発表

2016年3月22日(火)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
米国EMCがハイパーコンバージドアプライアンスの新製品「VxRai」lを発表。

2016年3月15日、EMCは記者発表会を開催し、ハイパーコンバージドインフラストラクチャーのアプライアンス「VxRail」を発表。

記者会見に際して米国のEMC本社からVxRailのVP&General ManagerであるGil Shneorson(ギル・シュナーソン氏)が来日し、Think ITの単独インタビューに応えた。

シュナーソン氏は2015年6月にも来日しており、当時のハイパーコンバージドアプライアンス「VSPEX BLUE」を発表している。このときもThink ITが単独インタビューを行っているが、その記録を読み返すと、VSPEX BLUEはVMwareのハイパーコンバージドを実現するソフトウェアスタック「EVO:RAIL」とVCEのエンタープライズ向け製品ラインを補完する製品として位置付けられていたようだ(下記記事を参照)。

EMC、ハイパーコンバージドインフラの切り札、VSPEX BLUEについて語る
https://thinkit.co.jp/story/2015/06/08/6109

今回のインタビューでは、VxRailについてVSPEX BLUEとの違い、また今後のビジネス展開を中心に聞いた。

――今回の記者発表会にはVCEの日本法人代表の西村氏、VMwareチーフエヴァンジェリストの桂島氏などが同席し、「本気でEMCフェデレーションとしてハイパーコンバージドを作り上げた」ことを感じさせました。今回は何が違うのですか?

シュナーソン:我々はEMCの製品をエンタープライズ向けに開発・販売してきましたが、ここ数年はエコノミカルな理由でハイパーコンバージドアプライアンスを選ぶお客様が増えてきました。これは最初にサイジングしなくても小さく始めてスケールアウトできる製品、という意味です。つまり後から必要な分だけ追加して欲しい性能を手に入れられる製品、それがハイパーコンバージドです。しかし、そういうお客様にも「これまでに使い慣れたVMwareの管理ツールや豊富な機能などの仮想化基盤をそのまま使いたい」という要望がありました。EMCはそのようなお客様に向けてVxRailを開発しました。

――去年発表したVSPEX BLUEとは何が違うのでしょうか?

シュナーソン:VSPEX BLUEはEMCとVMwareが共同開発した最初のハイパーコンバージドアプライアンスでしたが、端的に言えば我々は良い仕事ができていなかったということです。その反省とそこで学んだことを活かしてVxRailは開発されたのです。具体的にいえば、VSPEX BLUEはSKUが1つしかなくメモリーだけ追加したい、コンピュートノードを強化したいという場合に対応できませんでした。VxRailはその点、全ての構成をカスタマイズすることができます。また、当時はVirtual SANの機能も足りませんでした*1。

*1:VxRailに含まれるストレージはVMwareのソフトウェアデファインドストレージであるVSANの最新版6.2で、2016年2月に発表された(http://blogs.vmware.com/jp-cim/2016/02/vsan-62.html)。

グローバルに言えば、VCEという会社はEMCの1事業部になりました*2。私の名刺を見てもらえばわかりますが、「EMCのコンバージドプラットフォーム」がVCEで、もう1つのロゴはこれまでと同じEMCなのです。同じ会社としてビジネスをしています。また今回、VMwareのエバンジェリストと一緒に発表を行いましたが、これまで以上にVMwareとの協業は推進していくことになると思います。「EMCとVCEそしてVMwareは全て同じ方向を向いてビジネスを行っている」ということになりますね。

*2:日本ではまだ法人としてVCEテクノロジー・ソリューションズ株式会社は存在する。

桂島:実際に今回のVxRailに含まれるvSphereとVSANは1つのソフトウェアとしてタイトに統合されていますので、慣れているシステム管理者にとってはすごく使い勝手が良いのではと思いますね。例えばVSANに「ストレッチクラスタ」という機能がありますが、これを使うとサイト間をまたがったレプリケーションが可能で、可用性を高めることができます。また、これは意外と知られていないと思いますが、VSANは既に3000社以上で使われているソフトウェアなのです。VMwareのハイパーコンバージドソフトウェアとしては最も利用されていると言っても過言ではないと思います。vSphereとVSANはライセンス的には別物ですが、ソフトウェアとしては1つにまとまっていて使いやすくなっています。

シュナーソン:ハイパーコンバージドというジャンルでシェアの話をするといつもハードウェア単位で計算したりしますが、実際に最も利用されている仮想化基盤はvSphereですし、VSANも多くの企業で利用されています。ですので、そういったお客様にとって最適なハイパーコンバージドアプライアンスがVxRailということになると思います。

――最後になりますが、VxRailとしての今後のビジネス目標を教えてください。

シュナーソン:2017年に市場のトップシェアをとることです。マーケットリーダーになると言ってもいいと思います。

VxRailはVSPEX BLUEに導入されていたEMC独自の管理ツール(VSPEX BLUE Manager)ではなく、VMware純正のツールを使ったことで、VMwareに慣れ親しんだ顧客にとって最適のハイパーコンバージドインフラストラクチャー製品になったと言っていいだろう。「EMCはポートフォリオカンパニーである」と言い切るシュナーソン氏にとってVMwareの製品もフェデレーションの一員として顧客が求めるような品揃えにするのは正しい選択だ。

これで目標に掲げた市場シェアNo.1の座をNutanixから奪えるのか、日本での導入事例を見守りたい。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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