デスクトップ仮想化を支える技術

2010年6月8日(火)
平田 敦

Provisioning Servicesの概要

Provisioning Servicesでは、ターゲット・デバイスがvDiskイメージからブートする場合、ブート・サービス(起動用プログラムなどの取得に使う、一連のネットワーク・サービス)を使用し、次のようなプロセスを経てブートします。

  1. ターゲット・デバイスをネットワーク・ブート
  2. DHCPもしくはBOOTPにより、ターゲット・デバイスにIPアドレスを割り当て
  3. DHCPやProxy DHCPサーバーからブート・ストラップ・ファイルのロード先リストとブート・ストラップ・ファイル名を取得
  4. ターゲット・デバイスが、ネットワーク経由でブート・ストラップ・ファイルを取得
  5. ターゲット・デバイスが、Provisioning Servicesサーバー上で実行中のStream Serviceに接続
  6. Provisioning Servicesサーバーが、ターゲット・デバイスにvDiskイメージのストリーム配信を開始

Provisioning Servicesで使うブート・サービスには、次のものが含まれます。

BOOTP(Bootstrap Protocol)サービス
IPアドレスなどのネットワーク情報、起動用プログラムのロード先、起動用プログラム名などをBOOTPサーバーから取得するためのサービス。現在ではあまり利用しない。DHCPが環境の要件を満たしていない場合などに使う。
DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サービス
IPアドレスやサブネットマスクなどのネットワーク情報の動的割り当てを可能にする、BOOTPをベースとする上位互換サービス。DHCPオプション66、67の設定により、起動用プログラムのロード先と起動用プログラム名をターゲット・デバイスへ配信可能。
PXE(Preboot Execution Environment)サービス
ターゲット・デバイスをネットワーク・インターフェース・カード(NIC)からブートすることができるBIOS拡張。PXEプロトコルは、すべてのデバイスに共通の汎用コンポーネントとベンダー固有のコンポーネントで構成する。BOOTPまたはDHCPのいずれかとTFTPを組み合わせ、IPアドレス情報を検索し、ブート・ストラップ・ファイルをダウンロードする。
TFTP(Trivial File Transfer Protocol)サービス
UDPを利用した簡易ファイル転送サービス。TFTPを利用して起動用プログラムをターゲット・デバイスへ配信。
DHCPリレー・エージェント
ブロードキャストされたDHCP要求を、異なるネットワーク・セグメント上のDHCPクライアントとDHCPサーバー間で中継するためのサービス。

図2: PXEブート動作概要

Provisioning Servicesは、一般的にはブート・サービスを使ってネットワーク経由のブートを行います。一方で、ブート・サービスの代わりにBDM(Boot Device Manager、ブート・デバイス管理)ユーティリティを使ったブートも可能です。

ターゲット・デバイスは、ターゲット・デバイスのIPアドレスやブートに関する情報をBDMから取得し、適切なProvisioning Servicesサーバーを見つけ、通信を行い、ブートします。

BDMを使うと、USB接続ストレージやCD-ROMのISOファイル、ハード・ディスクの任意のパーティションからブート情報を取得できます。

vDiskイメージのモード

Provisioning Servicesでは、仮想ディスク・イメージのモードとして、標準イメージ・モード、プライベート・イメージ・モード、差分イメージ・モードの3種類を用意しています。これにより、自分専用のデスクトップ環境を必要とするエンドユーザーなどに対しても、用途に応じて柔軟に、それぞれの要求を満たすvDiskイメージを運用できます。

標準イメージ・モード
標準イメージ・モードでは、単一のvDiskイメージを複数のターゲット・デバイスで同時に使用することができ、vDiskを管理する手間とストレージ要件を大幅に軽減することが可能です。
標準イメージモードを使用するためには、vDiskイメージを読み取り専用モードに設定して、各ターゲット・デバイスに対して書き込みキャッシュを作成します。
OSの起動時に必要な書き込みは、このキャッシュに格納されます。ターゲット・デバイスを起動/再起動する際にキャッシュはクリアされ、「クリーン」なvDiskイメージから起動します。
標準イメージ・モードによって、ネットワーク内で保守すべきvDiskイメージの数を大幅に削減することができ、また、必要な変更ポイントの量も削減できます。
プライベート・イメージ・モード
プライベート・イメージ・モードでは、vDiskイメージに対する読み取りと書き込みを可能としています。アプリケーションに対する操作の柔軟性が保証されるほか、ユーザーは自分に必要なアプリケーションを個別にインストールできます。
プライベート・イメージ・モードでは、1つのターゲット・デバイスに対して1つのvDiskイメージを利用するため、より多くのストレージ領域が必要となります。
差分ディスク・イメージ・モード
標準イメージ・モードでは、ターゲット・デバイスの再起動により、保存されたキャッシュ情報がクリアされます。一方、差分ディスク・イメージ・モードでは、このキャッシュ・ファイルを一定期間保存することが可能となります。これにより、標準イメージ・モードの利点のほとんどを活用しながら、ターゲット・デバイス特有の変更を一定期間保持することが可能です。

図3: vDiskイメージ・モード(クリックで拡大)
シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社
外資系サーバーベンダーのシステムエンジニアを経て、2004年にシトリックスに入社。テクニカルサポート部にて、社内、社外のエンジニアに対する新製品の技術支援や技術トレーニングを行うプロダクトサポートスペシャリストとして従事した後、現在は、マーケティング本部で、プロダクトマネージメント、テクニカルマーケティング、新製品のレディネス業務などを担当。

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