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デスクトップ仮想化の特性とコンポーネント

2010年6月14日(月)
奈良 昌紀

ユーザビリティ向上のための周辺技術

仮想デスクトップを利用するための画面転送テクノロジは、ターミナル・サービス時代から利用されてきた比較的レガシーな技術であり、仮想デスクトップ環境の利用に際して制約が発生するのも事実です。多くの場合、利便性の低下という形で、利用者の不満につながります。

具体的には、USBデバイスのような物理デバイスの利用、マルチメディア・ファイルの再生、CAD(コンピュータを利用した設計)など画面描画が激しいアプリケーションの利用などが問題になることが多々あります。各ベンダーはこれらの制約を減らすための技術を提供しています。代表的なものを説明します。

マルチメディア・ファイルの再生
仮想デスクトップ上で動画再生を実行した場合、描画結果をその都度接続元端末に転送する方式では、帯域消費が激しく、転送された動画はスムーズに再生できないという問題が発生します。
この問題を解決するため、マルチメディア・ファイルを仮想デスクトップ上で再生するのではなく、マルチメディア・ファイルをクライアント端末に転送し、クライアント側でファイルを再生し、再生結果を仮想デスクトップに重ねることで、スムーズなマルチメディア再生を可能にする技術が利用されています。
一般的に、マルチメディア・リダイレクションと呼ばれます。再生前のデータ・ファイルは圧縮されているため、再生結果のビットマップ情報をリアルタイムに転送するのに比べて、帯域消費も少なくなります。

図5: マルチメディアのリダイレクション(クリックで拡大)
USBデバイスの利用
USBデバイスを利用する場合、クライアント端末に差したUSBデバイスは、クライアント・デバイス側で認識されます。これを、ネットワークを介して仮想デスクトップにリダイレクションし、あたかも仮想デスクトップに物理的に直接接続されたUSBデバイスであるかのように扱えるようにします。
この機能を利用すると、USBデバイスをこれまでのデスクトップ環境と同じように利用することが可能になります。また、USBリダイレクションはTCP/IPを利用して実現されるため、WANやインターネット越しでも利用することが可能です。
ただし、USBメモリーやUSBハード・ディスクなど大量のデータをUSBデバイスと仮想デスクトップとの間で移動・複製した場合、データはそのままWAN回線を流れるため、処理が終了するまでに時間がかかったり、帯域を大きく消費したりすることになります。
また、デスクトップ仮想化の導入によってセキュリティを高めたにも関わらず、USBデバイスを介して情報漏えいが発生するリスクが生じるため、USBデバイスの利用には十分な検討が必要です。

図6: USBデバイスのリダイレクション(クリックで拡大)

これらの周辺技術により、画面転送プロトコルを利用するデスクトップ仮想化の導入の障壁が低くなる一方で、米VMwareと米Citrix Systemsは、オフライン・デスクトップと呼ばれるデスクトップ仮想化方式を2010年中に正式にリリースすると見られています。

これまで説明してきたデスクトップ仮想化と異なり、オフライン・デスクトップは、クライアント端末上で仮想デスクトップを起動するというものです。画面転送方式ではなく、クライアント端末のCPU、メモリー、ビデオ・カードといったハードウエア・リソースを利用することが可能です。

クライアント端末上の仮想マシンは暗号化され、ネットワークを通じてデータセンターにバックアップされます。ローカルで実行されるため、ネットワークに接続していなくてもユーザーは自身のデスクトップを利用できるという大きなメリットがあります。このようにデスクトップの仮想化は、その適用範囲を広げながら、今後数年間で多くの企業が導入を進めていくことが予想されています。

ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進グループ 技術本部プラットフォームシステム技術部 PFチーム

通信会社にてデータセンター運用を経験した後、ネットワンシステムズに入社。帯域制御製品担当を経て、仮想化ソフトウエアの評価・検証業務に従事。特にデスクトップ仮想化技術を担当している。

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