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  VMwareの現在

VMware ViewでOS/アプリの運用負荷を軽減

2010年6月30日(水)
ヴイエムウェア株式会社

OSの運用管理が楽に

VMware Viewによって仮想化されたデスクトップならではの機能の1つとして、「リンク・クローン」がある。リンク・クローンは、マスター・イメージとなる1つの仮想マシンを、読み取り専用で共有利用することにより、複数の仮想デスクトップを素早く展開するための技術であるが、メリットはこれにとどまらない。

例えば、OSとユーザー個々のデータや各種設定情報を論理的に切り離すことも可能となるし、OSのシステム領域など、共有できる読み取り専用領域に懸かるディスク消費量を減らすことも可能となる。この技術によって、OSの運用管理、例えばサービス・パックの適用作業が飛躍的に楽になる。この理由は単純だ。システム管理者は、OSの運用管理作業を、1つのマスター・イメージに対してのみ実施すればよいからである。

例えば、営業本部の社員500人が使う、Windows Vista Service Pack 1(SP1)がインストールされた500台の仮想デスクトップ・グループがあり、これらにService Pack 2(SP2)を適用しなければならない場面を思い浮かべてほしい。物理的な環境であれば、全マシンを更新するための仕組みを検討しなければならないが、仮想デスクトップ環境においては、非常にシンプルだ。

まず、500台の仮想デスクトップの「親」となる1つのマスター・イメージにSP2をインストールする。次に、そのマスター・イメージの電源を落とし、状況保存のためにスナップショットを取る。最後に、そのSP2適用後のマスター・イメージを営業本部用の仮想デスクトップ・グループに割り当てるための、簡素な操作を行う。500台分の環境更改に必要な作業は、これですべてである。この作業のみで、仮想デスクトップを使っているユーザーがログオフするタイミングなどをトリガーに、個々の仮想デスクトップのOSが、SP2適用済みのものに、次から次へと自動的に入れ替えられていく。

さらに、マスター・イメージが単一であっても、スナップショットによって複数の状況を同時に保存しておくことが可能である。例えば、OSインストール直後、SP1適用後、SP2適用後、など、それぞれのポイント・インタイム・イメージを保持しておくことが可能である。

これゆえ、SP2適用済みのマスター・イメージから、以前のSP1適用済みのマスター・イメージに戻すのも簡単だ。つまり、万が一、SP2適用済みのマスター・イメージに入れ替えたことによって重要な業務アプリケーションの動作に支障があることが分かった場合でも、元のSP1の状態に戻す操作を容易に実施できる。

イメージを元に戻すためには、SP1がインストールされた時点のスナップショットを「親」として、再度、営業本部用の仮想デスクトップ・グループに割り当てるだけでよい。この割り当てにより、システム管理者が設定したタイミングで、仮想デスクトップのOSがSP1適用済みのものに、次から次へと自動的に戻されていく。

無論、ユーザーにとって最も大切な、各自のデータや各種設定情報は、入れ替えられるOSと切り離されて管理されているため、影響を受けない。また、OS入替作業の有無にかかわらず、Active Directoryのグループ・ポリシーを使ったシステム運用は、物理パソコンと同様に行うことができる。システム管理者にとって、これまで培ったグループ・ポリシーに代表される標準的なシステム運用のノウハウをそのまま生かしつつ、最も面倒な運用作業部分で楽ができる仕組みといえよう。

ストレージ費用も削減できる

前述のとおり、リンク・クローンを使うと、多数の仮想デスクトップが、マスター・イメージとなる1つの仮想マシンを、読み取り専用で共有利用する。具体的には、OSのCドライブに該当する部分のほとんどを共有する。ゆえに、たとえ仮想デスクトップが500台あったとしても、共有されている部分の容量に関しては、1台ぶんで済むことになる。それゆえ、リンク・クローンは、OSの運用管理を楽にするだけではなく、仮想デスクトップで使うストレージの容量、ひいてはストレージ費用を抑えることができる。

図3: リンク・クローンの仕組み

ところで、個々の仮想デスクトップでは、それぞれの個性を保つために、Cドライブにまつわるマスター・イメージとの「差分」を保持することになる。この差分ディスクには、TEMPフォルダーへの入出力や、「レプリカ」作成後に公開されたセキュリティ・パッチなどが差分として透過的に記録される(図3)。

「差分」と聞くと、時がたつにつれて増え続ける印象をもつかもしれないが、これに対する解も用意している。例えば、月々のメンテナンス時に、「レプリカ」の内容を、最新のセキュリティ・パッチを適用したマスター・イメージへと入れ替える作業を行えば、その時点で差分ディスクはゼロ・クリアされる。

そもそも、もともとCドライブ用に必要だった容量と比べれば、差分ディスクは十分に少ない容量で収まる。ゆえに、差分ディスク分の容量を加味したとしても、ストレージ容量を大幅に抑えることができる。一般的には、リンク・クローンを使用することにより、およそ70%程度のストレージ容量削減が見込める。

著者
ヴイエムウェア株式会社

ヴイエムウェアは、デスクトップからデータセンターにわたる仮想化ソリューションにおけるグローバルリーダーです。ヴイエムウェアソリューションは、設備投資や運営経費の削減、ビジネス継続性の確保、およびセキュリティーの強化を、環境に配慮した運営と共に実現します。http://www.vmware.com/jp/

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