VMware ViewでOS/アプリの運用負荷を軽減
アプリケーションの運用管理負荷軽減
「アプリケーション間の相性問題」、「OSにサービスパックを適用したらアプリケーションに不具合が発生」、「同じような環境であるはずなのに、同じアプリケーションが動くPCと動かないPCがある」など、アプリケーションの運用管理はシステム管理者にとって悩みがつきない事項だ。現に、ヘルプ・デスクへの問い合わせの30%程度は、アプリケーションの動作に関連するものと言われている。
その悩みを大幅に軽減できるのが、ThinAppである。ThinAppは、「OS」と「アプリケーション」を論理的に切り離す“アプリケーション仮想化”を体現する製品である。この技術によって、インストール作業を経ずに、アプリケーションをOS上で実行することが可能となる。今までOS上で普通にアプリケーションを扱ってきた諸氏には理解しにくい現象と思われるが、例えば、Excel 2007を、インストールすることなくOS上で実行することができるのだ。
仕組みの概要はこうだ。アプリケーション自体や関連するDLL(ライブラリ)、そしてThinApp VOSと呼ばれる極めて小さなOSをカプセル化し、EXE(実行形式)ファイルを形成する(図4)。ThinApp VOSはOSとのインタフェースとして機能し、内包されたアプリケーションに対してWin32APIのエミュレーションを提供する。
図4: カプセル化されたアプリケーション |
まず、カプセル化によって、“OSのバージョンの違い”への依存が劇的に減少する。つまり、図5に示すように、一度カプセル化してしまえば、以降、実行環境となるOSの種類を意識する必要がなくなる。Windows XP上でしか動かなかったアプリケーションも、カプセル化すれば、Windows VistaやWindows 7上で実行できるようになる。極端な話、本来Windows 7上では動かないはずのIE6をWindows 7上で動かすことができる。「Windows XPからWindows 7に移行したいが、社内にはIE6でしか使えないWebアプリケーションがたくさんある」という場合にも有効である。
図5: OSの移行が容易になる |
加えて、カプセル化によって、ほかのアプリケーションとの干渉も最小限に抑えることができる。例えば、既にExcel 2007がインストールされているOS上で、Excel 2000、Excel 2003を含む、異なる3つのバージョンを同時に実行することができる。「自社の標準はExcel 2007だが、取引先とは、Excel 2003でしか動かないマクロ付きのファイルでやりとりしなければならない」という場合などに活用できる。
また、アプリケーションを運用するにあたっては、バージョン・アップがつきものだ。仮に、社内で数十にのぼる業務用のカスタム・アプリケーションを使っているのであれば、ほかのアプリケーションとの干渉を気にする必要がなくなるカプセル化は、救世主となりうる。システム管理者にしてみれば、「アプリケーションのバージョン・アップに伴うほかへの干渉」に対する「転ばぬ先のつえ」として役立つはずだ。
無論、個々のアプリケーションに対する設定や、作成されたデータなどは、各仮想デスクトップ上に個別に保存することができる。このことは、ThinAppでカプセル化された一つのEXEファイルをネットワーク上のファイル・サーバーに格納しておき、複数ユーザーで共用する場合でも同様だ。例えば、AさんがそのEXEファイルを実行すれば、Aさんが使っている仮想デスクトップ上(もしくは移動プロファイル上など)に、各種設定やデータが保存される。
このように、VMware Viewは、デスクトップ環境を最適化するためのさまざまな機能を実装している。導入の決め手となるキー・ドライバは顧客環境によってさまざまだが、ユーザーの利便性を担保しつつセキュリティ・レベルを向上させるという観点においては、非常に有益なソリューションである。
初回から今回まで全5回にわたり、VMwareが注力しているクラウドの全体像について紹介してきた。これらの解説がクラウドへの理解を深めることへの一助となれば幸いである。