ストレージの容量削減テクノロジ
ストレージの無駄も削減する時代
ここまでは、ユーザーが使うデータに着目して、データ容量を削減するテクノロジを解説してきた。以下では、ストレージ装置の容量を削減するテクノロジに目を向けてみよう。
一般的に、サーバーを新規に構築する際、ストレージ容量は、将来のデータ量の増加を見込んで多めに見積もられる。例えば、500Gバイトの容量を使用するアプリケーション・サーバーに対して1Tバイトの容量を割り当てておくという設計がそれに該当する。しかし、多めにストレージ容量を見積もることが、ストレージの使用率を下げる要因にもなっている。
ストレージの容量を効率的に利用するためには、「シン・プロビジョニング(Thin Provisioning)」と呼ぶテクノロジが適している。シン・プロビジョニングとは、ストレージに搭載しているディスクの物理容量を論理的なプール・ボリュームとして構成しておき、必要な容量だけプール・ボリュームからサーバーへ提供する仕組みを指す。
図7に、シン・プロビジョニングの概要を示した。例えば、500Gバイトのデータを使うシステムを考えてみよう。ここで、シン・プロビジョニングを適用すると、ストレージ側ではアプリケーションの使用容量と同じ約500Gバイトだけを消費させつつ、サーバー側では、あたかも1Tバイトのボリュームが存在しているように見せかけることが可能になる。
図7: シン・プロビジョニングの概要 |
シン・プロビジョニングは、データの増加に合わせて自動的に、ストレージの物理割り当て容量も増える仕組みとなっている。つまり、ストレージは常に、必要最低限の容量だけ消費され、無駄な空き容量が発生しない。ストレージを効率的に利用できる、理想的なテクノロジである。
なお、シン・プロビジョニングの利用中にプール・ボリュームの容量が枯渇した場合は、ディスクを物理的に増設して、プール・ボリュームへ追加すればよい。また、一度ユーザーに割り当て済みのボリュームを削除すると、その容量がプール・ボリュームに戻るため、再利用することもできる。
ちなみに、米EMCのユニファイド・ストレージは、データの圧縮や重複除外だけでなく、シン・プロビジョニング機能も備えている(図8)。SANストレージ(iSCSI、Fibre Channel)としての接続性とNAS(NFS、CIFS)としての接続性を兼ね備えるため、ファイル・サーバーの統合やサーバー仮想化向け共有ストレージなど、各種の用途で利用できる。
図8: ユニファイド・ストレージの概要 |
今回は、重複除外やシン・プロビジョニングなど、ストレージのデータ削減テクノロジを紹介した。これらのテクノロジを利用する企業は、現在急速に増えている。データ容量が爆発的に増加している状況にあっても、混乱することなく対処できるよう、このようなテクノロジをフルに活用していただきたい。
次回は、ストレージ内で自動的にデータを最適配置する階層化技術を解説し、そのメリットと仕組みを紹介する。