ストレージ仮想化装置によるフェデレーション

2010年7月27日(火)
山原 陽一

これまでの連載では、重複除外(第1回)、ストレージ自動階層化(第2回)、サーバー仮想化環境との統合(第3回)について解説した。最終回の今回は、クラウド向けのストレージ技術である「ストレージ・フェデレーション」について解説する。

第1回で解説した重複除外は、ストレージ・データ量を削減する技術である。第2回で解説したストレージ自動階層化は、高速なSSDと低額・大容量なSATAディスクを組み合わせ、リソース割り当てを自動化する技術。第3回で解説した技術は、サーバー仮想化ソフトからストレージを管理できるようにするものである。

今回解説するストレージ・フェデレーションは、各種の機能を組み合わせて、複数のストレージを協調動作させる機構(アーキテクチャ)を指す。クラウド内(またはクラウド間)に分散する複数のストレージを束ねて仮想化する。このうえで、負荷分散やストレージ移行などの目的に応じて、ストレージからストレージへとデータを移動する。システムを停止することなく遠隔サイトのストレージ間でデータを移動できる(図1)。

ストレージ・フェデレーション機構を搭載しているストレージ製品が、米EMC(以下、EMC)の「VPLEX」である。一方、同様の機能を実装しているサーバー仮想化製品もある。代表的な製品は、米VMwareのサーバー仮想化ソフト「vSphere 4」である。Enterpriseエディション以上で提供するStorage VMotion機能によって実現する。

図1: ストレージ・フェデレーションでは、データをクラウド間で移動できる

ストレージ・フェデレーションが登場した背景

ストレージ・フェデレーションが登場した背景には、管理すべきデータが増えることによって生じる、IT投資と需要のギャップがある(図2)。日々増え続けるデータや繁忙期に見られる一時的なデータやアクセス量の増大に対処する、という需要がある一方で、こうした需要を満たすために適したIT投資のやり方が分からない、という課題がある。

これまでのやり方でIT投資と需要のギャップを埋めようとすると、検討や準備に時間がかかり過ぎてしまい、結果としてビジネスの機会を損失する。例えば、複数のITシステムを1つに統合するケースでは、利用部門間の調整や、統合した場合の既存システムへの影響度の確認といった作業に時間をとられる。さらに、データの移動やシステムの切り替えによって、一時的にサービスが停止することもある。

図2: 従来型のIT投資は、需要と投資の間にギャップがある

こうした問題意識の下、IT投資を最適化する方法として登場したやり方が、IT基盤の設計/調達方針として、企業内に置いたインターナル・クラウドと、サービス事業者が提供するエクスターナル・クラウドを組み合わせる、という解決策である。この方法を可能にするためにキーとなる仕組みが、ストレージ・フェデレーションである。

ストレージ・フェデレーションによって、(1)普段はインターナル・クラウドにデータを置いておき、(2)事業の繁忙期にはエクスターナル・クラウドにデータを移行してシステム規模を一時的に拡張し、(3)アクセスが少なくなった時点でインターナル・クラウドに戻す、というシナリオの実現が可能になる。

2000年にEMCジャパンに入社。EMCストレージソフトウェア導入部隊の立ち上げなどに従事。その後、ストレージバックアップ/災害対策ソリューションの設計/構築担当SE、金融顧客のプリセールスSEを担当。現在はプロダクト・ソリューションズ統括部で、大規模SANストレージSymmetrix提案の技術支援などを行なうプリセールスSEを担当。
 

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