ファイルサーバーを横ぐしカイゼン

2009年1月16日(金)
羽鳥 正明

ファイルサーバー運用ルールを作ろう

 ファイルサーバーは立ち上げるのは簡単だが、長期間、大人数できちんと運用するのは意外に難しい。ファイルサーバー運用のコツの1つが利用者の協力による運用のルールを明確化することだ。

 ルール化は、必ず運用開始前に行う。ルールは、部署でのファイル共有を円滑にすることを目的とし、決して規則を厳しくするのではなく、ファイルサーバーにあるデータをいかに効率よく見つけることができるかを重点に考えてほしい。

 ここに、ファイルサーバー運用のルール例を挙げてみる。もちろん、組織によって保存するコンテンツが異なるため、ルール化の参考としてとらえていただきたい。

 まず、ファイルサーバーはファイル共有が目的なので、個人のファイルは保存しないことをルールとして考えよう。個人ファイルを置く要求が高くなったら、それはファイルサーバーとしての別の活用方法となるので、異なる運用管理(例:フォルダごとにアクセス権を設定し、その個人のみ変更ができる領域を提供する)が必要となる。

 続いて第1階層のフォルダ作成/管理の運用ルールを作り、ルールの番人にあたるコンテンツ管理者を任命することだ。

 ここで、共有フォルダの第1階層は勝手に作ってはいけないルールにする。第1階層と同レベルに台帳を置き、第1階層フォルダ作成の管理を行う。これはファイルサーバーのインデックスとしても使うことができる。台帳は、Excelなどのスプレッドシートで十分で、作成日付、作成依頼者、コンテンツ内容、コンテンツ管理者などを細かく記載し、スプレッドシート内でも検索にヒットしやすいようにする。もちろん、作成のルールを目安として作っておく。例えば営業部門であれば、業種名を第1階層にするとか、開発部門であれば製品名にするなどである。

 第1階層フォルダが作成されたら、その先のルールはコンテンツ管理者に任せる。フォルダ構造が無秩序になっていたら、コンテンツ管理者が整理する。ただ、ルールは任せるとしても、サブフォルダの階層数だけは共通ルールがあったほうがよい。目安として4階層より深くなると、ファイルを見つけるのが手間になってくるので、そのあたりでとどめてほしい。最終階層には例えば「old」フォルダを作り、世代の古いファイルを仮に置いておくと、見た目がすっきりする。oldフォルダはコンテンツ管理者が定期的に確認して、古くなって必要ないファイルは思い切って削除することが重要である。

 2つ目は、ファイル名の付与のルール化だ。ファイル名をタグ付けのように命名することで、検索でヒットしやすくする。

 ファイル名はコンテンツの表題(タイトル)名と一致させると、後日見つけやすくなる。さらに日付、バージョンをファイル名の冒頭、もしくは語尾につける。日付をファイル名の冒頭につけると、エクスプローラーで並び替えをする際に便利であり、最近共有したファイルから探すことができると共に、古いファイルを削除しやすくなる。一方、日付を語尾につけると世代管理がしやすくなるが、コンテンツ単位での世代になるため、細かいファイルレベルでの管理となることを注意しよう。

 3つ目は定期的な大掃除だ。サーバー管理者は、容量をクオータ機能で確認し、定期的に不要なファイルを大々的に削除することをルールとして定義しよう。その際には、ユーザーへの理解と、コンテンツ管理者(責任者)の承認が必要である。削除してしまった後で問題になってもコンテンツ管理者の責任となる。この場合、コンテンツ管理者の上長が最終承認するのがよい。

 4つ目は暫定保管場所の作成だ。例えば「Temp」などのフォルダを第1階層に作成し、その下には一時的にファイル共有したいファイルを保存するというルールにする。このフォルダにあるコンテンツは定期的な大掃除の際にはすべて削除対象とする。

 5つ目は、保存、アーカイブのルールだ。保存されて一定期間が立ったファイルは削除する、もしくはテープなどのアーカイブ媒体に移動させて、長期保存に回す。それにより、ファイルサーバー保存領域の節約を図る。ただ、古いファイルをピックアップするには目視ではなくツールを使うと便利である。ツールによっては、自動的に古いファイルをアーカイブしてくれるものもあるので、検討してほしい。

既存のファイルサーバーを使いこなす

 ここで複数台ある既存のファイルサーバーを生かしつつ、それらを横ぐしで運用管理するソリューションを紹介する。第1回(http://thinkit.co.jp/article/761/1/)で紹介した課題を例に取り、簡潔に説明していく。すべての課題に対してツールを導入するのは、企業内組織上、横断的に管理できるものは限られるかもしれない。また、課題解決の優先度や投資コストとの兼ね合いもあるので、徐々に改善していくことをお勧めする。

 前述したように、運用ルールを明確化することが重要だが、それでもルールの運用が徹底しなかったり、ファイルサーバーごとに管理が異なり混乱したりすることがある。そのようなニーズから登場したのがGoogle検索アプライアンスやGoogle Miniで一気にメジャーになった「エンタープライズサーチ」である。

 エンタープライズサーチとは、企業内のあらゆるサーバに保存されているデータを横ぐしに検索できるツールである。複数のファイルサーバーだけでなく、イントラネット、エクストラネットのようなWebページや電子メールの検索もまとめて可能だ。

 基本的な仕組みとしては、企業内の情報をあらかじめ巡回して、それぞれキーワードをインデックスとして格納しておく。利用者は欲しい情報の検索キーワードを入力することでインデックスから情報の場所を即座に表示させることができるというものだ。なお、エンタープライズサーチには、Google以外にもさまざまな選択肢があるので、それぞれ検討してみてほしい。

EMCジャパン株式会社
マーケティング本郡 プロダクト・マーケティング・マネージャ。外資系ITベンダにてPC、サーバーのプロダクト・マーケティングを8年間担当。その後Linux/OSSビジネス関連企業にてマーケティング全般をマネジメントした後、現在はEMCジャパンにてストレージならびにバックアップ製品のマーケティングを担当。http://japan.emc.com/

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