要件と機能を簡潔に伝えるテンプレート
基本設計で使用するドキュメント
「第1回:要件と機能の関連を保つテンプレート(http://www.thinkit.co.jp/article/140/1/)」では、上流工程のうち要件定義フェーズで使用するドキュメントとして、「DUNGEON」テンプレートの中から「要件一覧」と「機能一覧」を紹介しました。今回は基本設計フェーズでのドキュメントについて、ダウンロード可能なテンプレートファイルを元に紹介していきたいと思います。
なお、基本設計で作成する全成果物とその作成手順については、連載「即活用!業務システムの開発ドキュメント標準化(http://www.thinkit.co.jp/free/project/4/1/1.html)」の第3回(http://www.thinkit.co.jp/free/project/4/3/)に詳しいのでそちらを参照してください。
ここで、注意するポイントが1つあります。それは成果物によっては作成するタイミングが異なり、要件定義フェーズの場合もあれば、基本設計フェーズの場合もあるということです。
例えば「業務フロー図」は、要件定義時に旧業務フローだけでなく、新業務フローも作成し、新業務フローに沿って運用が流れることを確認する場合もあります。また、多くのユーザーが使用する入力画面や帳票は、早期の段階からイメージをつかんでもらう必要があるため、先に「画面レイアウト」を作成したり、動かないモック(動作イベントを実装していないHTML画面など)のみを作成したりすることもあります。「システム構成図」や第1回(http://www.thinkit.co.jp/article/140/1/)で解説した「機能一覧」もこの類で、両方のフェーズで登場します。
図1に要件定義と基本設計で作成するドキュメントをまとめました。両方のフェーズに丸印が付いているものは、どちらの成果物にもなりえるものです。今回は図1の中から「DUNGEON」テンプレートで改善した「概要説明」について解説します。なぜこの概要説明を改善したか?それを話す前に、まずは基本設計フェーズの性質について考えてみましょう。
「当たり前品質」と「魅力的品質」
品質を顧客満足度の切り口で捕らえた場合、よく言われるのが「当たり前品質」と「魅力的品質」の比較です。「当たり前品質」とはその製品として最低限備えていなければいけないもので、ないと顧客からがっかりされるものです。「魅力的品質」とはその製品として期待していなかったニーズであり、あると顧客をよい意味で驚かせるものです。
例えば、洗濯乾燥機では衣類を洗って乾かすことができるのは「当たり前品質」ですが、乾燥時にマイナスイオンを噴出することにより衣類がふんわりするのは、もともとそれ程期待していないため、効果があれば「魅力的品質」になります。
では、システムの場合はどうでしょうか?筆者は「当たり前品質」を満たすことも大変難しいと感じています。なぜなら毎回異なる顧客からの要件をすべて満たして初めて「当たり前品質」となるからです。
つまり洗濯乾燥機の場合は最低限備えておくべき機能は、一般的に暗黙知として共有されていますが、システムの場合は顧客ごとに、当然備えてしかるべき機能についての共通認識を1から作る必要があるのです。
そのためにわれわれがしなければならないことは、顧客に入念にヒアリングを行い、ドキュメントを作成し、こちらの認識を顧客に説明することです。このサイクルを何度も何度も経ながら濃厚なコミュニケーションをとることではじめて、「当たり前品質」の前提が形成されるのです。そのコミュニケーションをとるフェーズが、まさに上流工程である要件定義と基本設計のフェーズと言えます。
ここまでで基本設計とは、濃厚なコミュニケーションによって品質を確保する上流工程の1フェーズということはわかりました。では、そのコミュニケーションは誰と行うのでしょうか?答えは2つあります。