HTML5時代のRIA
RIAの歴史と技術
ご存じの通り、Webサイトは主にHTMLとCSSで記述されています。文章構造をHTMLでマークアップし、スタイルをCSSで整える手法は、Webページという言葉の通り、紙をWebに置き換えることに端を発しており、当初は、動画やアニメーション、インタラクションといった動的な表現、操作は考慮されていませんでした。そこで、Webブラウザに別の実行環境を追加することで、よりリッチでインタラクティブな表現を実現しようとする動きが現れました。その代表が当時のマクロメディアがリリースしたFlashです。
表現力をさらに高めたいという表現者の欲求、より効果的に自社の製品やサービスを伝えたいというクライアント企業の希望、もっと面白いコンテンツを見たいという視聴者の希望、そこに、インターネットの高速化によるインフラの整備という要因が加わって、Flash Playerは広く普及していきました。Flashの功績の一つはWebに「アプリケーション」の概念を持ち込んだことだと思いますが、実際に、FlashはこのあとFlexやAIRというアプリケーションのフレームワークへと拡張を遂げていきます。
視聴者が単にコンテンツを見るだけでなく、自らの操作によってコンテンツを楽しむ、何か別の成果物を生み出すといった、デスクトップアプリケーションと同じ能動的な動きがWeb上で可能になったことがRIAの黎明(れいめい)期と言えます。
一方でWebサーバーからクライアントのプログラムを動作させるためのCGI(Common Gateway Interface)が登場したことにより、クライアントから入力された情報に基づいて、サーバー側でHTMLを動的に生成、クライアントに差し戻すことが可能になり、ここからWebアプリケーションという概念が生まれました。ただし、この手法では、クライアントからサーバーにリクエストを送信、生成されたデータを受け取ってHTMLで表示するというワークフローになるため、クライアント側でページ遷移が発生します。この問題を解決したのがAjax(Asynchronous JavaScript + XML)で、GoogleがGoogle マップに採用したことから、一気に認知を得たのはご存じの通りです。
アニメーションのオーサリングツールと再生環境としてスタートしたFlashが、Flash 5でActionScriptを実装したことではじめて、アプリケーションの実行環境として認識されたのに対して、Silverlightは、デスクトップアプリケーションの開発基盤として幅広く普及している.NETをWebへ広げることをコンセプトに開発されました。そのため、Silverlightの開発において、.NETの開発スキルやツールをそのまま活かせることは大きなメリットになるはずです。
Silverlightはクラウド時代のフロントエンドを担うことを想定しているので、WindowsだけでなくWindows EmbeddedやMac OS、Internet Explorerだけでなく、Firefox、Safari、Chromeにも対応しています。欧米で販売が開始されたWindows Phone 7というスマートフォン向けのOSでも開発プラットフォームとしてSilverlightが採用されています。
図2:Silverlight.netのShowcaseカテゴリでは様々な分野の事例が紹介されている(クリックで拡大) |
HTML5はその名の通りHTMLの5回目の改訂版で、2011年5月には最終草案してまとまり、2014年に勧告される予定となっているので、仕様としては今年5月の最終草案でほぼ固まると考えていいでしょう。
HTML5では
HTML5.jpを主宰する羽田野太巳氏はHTML5=Mark Up+APIと説明していましたが、まさしくその通りで、HTML5と共に語られるWeb Workers、Web Storage、IndexedDB、Web Sockets、Geolocation、File APIなどはJavaScriptやその関連仕様なので、HTML5では新しいマークアップ要素以上にJavaScriptが重要になるはずです。
なお、Apple社がThoughts on Flashという記事の中でHTML5へのコミットメントを表明して以来、HTML5は、未来のWebを表すバズワードとして使われている感がありますが、バスワードとしてのHTML5と、仕様としてのHTML5は文脈によって分けた方がいいでしょう。例えば、先に挙げたAPIの多くはHTML5とは別に策定が進められているので、厳密にはHTML5ではないのです。