データ連携の現在・過去・未来

2011年8月3日(水)
宮本 哲治

データ連携第4世代(クラウド時代)

そして、いよいよクラウド時代の到来により、データ連携も第4世代へと移り変わっていきます。世代という表現を使ってきましたので、クラウドの時代はより先進的な連携の仕組みが用意されていればよかったのですが、実際はそのような理想的な環境は整っていないのが現状で、むしろ、データ連携はクラウドの登場により再び紀元前のような混乱状況に陥りそうな様相さえ見せています。

というのも、クラウドはSOAP、WSDL、UDDIというWebサービスのコアテクノロジーを搭載していますので、クラウドアプリケーション間でデータ連携を実現するのは、第1世代や第2世代のように難しいことではありません。

しかも、欧米のメジャーなクラウドには外部連携のためのオープンなAPIが提供されていますので、一部のクラウドアプリケーション間やパッケージソフトとクラウド間には、すでに連携するためのツールなどが組み込まれていたり、用意されていたりします。

連携の仕組みが用意されているということは便利なことなので、なぜ混乱状況に陥るのかというと、個別の連携が簡単であるが故に、それを積み重ねていくことでまたスパゲティ状態になってしまう可能性があるからです。

結局、またスパゲティの話かということで申し訳ないのですが、筆者の所属するブリスコラではこのような課題を解決するため「Concord(コンコード)」というクラウド連携サービスを提供しています。その詳細については、また別途ご紹介させていただければと思います。

図3:クラウド連携サービスの全体概要図

クラウドのデータ連携を阻む2つの要因

一方、クラウド時代のデータ連携に関しては、日本固有とも言える2つの課題があります。1つは、オンプレミスと呼ばれる企業内アプリケーション(カスタムアプリケーション)との連携です。

これはデータ連携の第3世代からそのまま引き継がれている課題で、さまざまな自前のシステムやアプリケーションをレガシーな資産として抱え込んでいる日本の企業にとっては、これらのシステムとクラウドをどう連携させればいいのかという議論が出始めています。別な言い方をすれば、データ連携を容易に実現できないという現実が、クラウド導入の足かせにもなりかねない状況となっているのです。

では、クラウドのデータ連携が急速に進んでいる欧米ではどのようにこの問題を解決しているかというと、残念ながら欧米ではこのような問題はあまり話題にはなっていないのが現状です。欧米の企業では、パッケージアプリケーションやWebアプリケーションの普及が進んでいるので、自社開発のオンプレミス型ソフトウエアとクラウドの連携が問題にあることはほとんどないというのです。

2つ目の問題はセキュリティです。基幹業務のデータを社外(クラウド)で管理する際のセキュリティに関する議論もまだまだ続いているようですが、クラウドとオンプレミスが連携をする場合は、さらに自社のシステムに外部からのアクセスを解放しなければならないという問題に直面することになります。

これらの課題をどう乗り越えていくかが、クラウド時代のデータ連携に求められるソリューションとなります。

おわりに

今回はデータ連携の歴史を振り返る勉強で終始してしまったので、少し退屈だと感じられた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、データ連携の歴史は懐かしい昔話ではなく、未だに企業の情報システムが課題として抱えている現実と重なる部分が数多くあります。

だからこそ、データ連携の歴史を知ることは、連携の「手段」を知ることと同じぐらい重要なことでもあると考え、あえてスペースを使って紹介をしました。

さて次回は、データ連携を構築するためには、どのような仕組みでデータをつなぐのか、どういった手順で連携作業を行うのか、具体的にどのようにデータ連携を行っていけばいいのか。XMLとRESTを用いたデータ連携について考えてみたいと思います。

株式会社ブリスコラ クラウドアーキテクト R&Dスペシャリスト

米国のミドルウェアベンダー、国内のSIer等で数多くのアプリケーション統合、データ連携プロジェクトを経験。その後、Javaアプリ開発、コンサル業務を担当し、技術部門を統括・指揮。
クラウド時代の理想的なデータ連携を目指して、2011年からブリスコラに参画。
専門分野:MOM、EAI、BPM、クラウドデータ連携

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